鎧と言う名の服を着て
先日友達と飲んでいた時に
「よっちゃんは仕事をしているから『ちゃんと』しようとしているけど、中身の『ちゃんと』していない方が良いよ」
と言われた。
確かに僕は今の仕事を始めた頃から、人からちゃんとした人だと思われようと「ちゃんと」した自分を演じてきている。
仕事柄、お客様からの信頼を得る為には「ちゃんと」していないといけない。
ちゃんと、、、。
仕事を始めた頃、同じ理由でプライベートでも「ちゃんと」した方が人から信頼されて好かれるのでは良いのでは無いか?と思い、「ちゃんと」するようにした。
「ちゃんと」してる風に振舞っている。
しかし、実のところ「ちゃんと」は出来ていない。
部屋は汚いし、お金の管理も下手。
貯蓄用と積み立てNISA用、遊び用にお金を分けてはいるが、最近飲みに行く頻度が多くなり、遊び用のお金では足りなくなり、貯蓄用のお金を少しずつ飲み代に使ったりしている。
ダメである。
もちろんそれは分かってはいるが、飲みに行くのは楽しいし、飲みに行かないと一週間誰とも話さないで終わってしまい、自分がなんで生きているのかが分からなくってしまうので、飲み続けている。
またもしかしたら、ある程度付き合いのある友達は「こいつはダメな奴だな」と思われているかもしれない。
いくら外見や身振り手振りを取り繕っても内面は取り繕えないので、話をしている内に、長い時間をかけて付き合って行くうちに僕の「ちゃんと」するメッキは剝がれて行っていると思う。
そういうメッキが取れた僕の方が良いと先日言われ、軽くショックを受けると同時に、どうやってこのメッキを取れば良いのだろうかと悩む様になってしまった。
確かに仕事をする前の僕はダメな人間だったかも知れない。
辛いことや嫌なことがあると友達や親にすぐに相談して話を聞いてもらったりしていた。
他にもメンタルがすぐ病みやすかったり、寝れなかったり、すぐに不安になる性格だった。
それもあってか、人からはよく心配された。仕事は大丈夫なのか、生きて行けるのか、何か手伝ってあげようか。
色々な事を色んな人達から心配されるようになっていた。
だが、今の仕事を始めてからは人から心配されることが無くなった。
人に愚痴を言わず、相談なんかもあまりしなくなった。
仕事上の守秘義務があるのはもちろんだが、弱い自分を見せることによって人から心配されてしまうと、仕事に重要な信頼を得ることが出来なくなるのでは無いかと思い、弱い自分を人に見せなくなった。
嘘でも強い自分を、「ちゃんと」している自分を演じるようになった。
「ちゃんと」した自分を演じる内に、確かに強くなった部分もある。
仕事の知識や段取りの組み方、お金の稼ぎ方や人付き合いも、多少は以前より上手く行っている気がする。
でも、「ちゃんと」していない僕の方が魅力的だと言われてしまった。
それも何となく分かる気がする。
人は人を信頼する時に強い箇所を見せるより、弱い箇所を見せた方が共感されて信頼される。自己開示と言うものだろう。
自分の恥ずかしい部分を見せることによって、相手も同じように自分の恥ずかしい部分を見せ合い、信頼を築いていく。
原理はよく分かっているが、それをどうやっていいのかが分からない。
「ちゃんと」しないってどうすればいいのだろうか。
最近は人と話していても、僕が自慢話ばかりしているのか、あまり人から共感されないなと思うことが増えてきた気がする。
例えば、
最近僕は夜10時間近く寝るようにしているが、その話をしている時も、あまり人から共感されることは無く、むしろ僕が自慢話をしている時のリアクションをされているようにも感じる。
最初は自慢話でも無いと思っていたが、人からしたら寝る時間が多いことは幸せ者が出来ること、の様に思われているのかも知れない。
もちろん、僕も寝る時間が過分にあるわけじゃない。
仕事終わりの数少ない余暇を睡眠に充てて、体調管理をしているだけだ。
その分余暇の時間は少なくなった。決して努力しないで得た睡眠時間では無く、自分がやりたい事もある程度捨てて今の睡眠時間を確保しているので、個人的には自慢話では無いのだが、そこの話をしないで、ただ10時間近く寝るようにしているんです~だけだと人は「こいつは10時間も寝れる幸せ者だな」と思うのかも知れない。
書きながら思ったが、睡眠時間の話をするには、睡眠時間を確保するための努力も併せて話した方が人から共感されるかも、とも思ったが、10時間寝ている人なんてソウソウ居ないから、自己開示うんぬんの話では無く、単に共感できない話をする変な奴と思われるのではないだろうか。
まあ、睡眠の話は置いておいて、自己開示をする為の「ちゃんと」しないというのが自分にはどうやるべきか明確な言語化が出来ていない。
仕事ならもちろん「ちゃんと」していないといけないのは分かる。
ちゃんとしていない店員は僕も嫌だし。
でもプライベートまで「ちゃんと」する必要はあるのだろうか。
では「ちゃんと」しないとは?服装がだらしなくてもいいの?清潔感が無いとか?すぐに弱音を吐いて人に相談する?
どれも一種正解かも知れない。
忙しくてどうしようもない時は、人と会うときもだらしの無い恰好になってしまっても、友達なら何で今日こういう格好になってしまったのかを説明すればある程度理解してくれるだろう。
弱音を吐いて人に相談するのも良いかも知れない。
日頃人に相談しない自分が友達に相談したら、友達も信頼されていると思って親身になって話を聞いてくれるかも知れない。
もしかしたら、僕が人から信頼される為に始めた事と言うのはすべて要らない鎧だったのかもしれない。
「ちゃんと」して信頼されるために棘の着いた鎧を着飾っていたのかもしれない。
友達の前でぐらい、この鎧を脱げる日が来ればいいのにな。
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