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【恋愛私小説】恋する青の鎖鋸1章⑦「好意破れてなお続く」

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はじめから↓





 二〇二二年二月二八日。

 今日は吹奏楽団の定期演奏会だ。コンクールに参加しない我々にとって、この演奏会は一年の集大成を示す場でもある。
 先程、最終確認を終えたため、後は三〇分後に迫る本番を残すのみだ。始めはホールの控室で待機していたが、緊張ゆえに逆に開き直ってしゃべり倒す面々についていけず、一人舞台袖で楽器と時間を過ごしている。


 奏者も観客もいないステージは、輝きつつも静寂に支配されている。その舞台袖は対象的で必要最低限の間接照明を残して、そのほとんどが闇に包まれていた。
 この落ち着いた本番前の緊張混じりな空気感は嫌いじゃない。

 照明を反射してこちらを照らすバリトンサックスを眺めて時間を潰していると、銀色に光り輝く楽器を抱えて誰かがこちらにやってきた。

 コノミだ。

 白シャツと黒スキニーという指定の正装が、彼女の華奢な体格を分かりやすく表していた。

「なんで一人でいるの?」
「控室うるさくて飛び出してきたわ。意外とこの場所居心地いいし」
「わかる〜 舞台袖のこの空間、私も好き」

 告白の前と変わらない笑顔がそこにはあった。


 十二月に振られた後、クリスマスやお正月で沸き立つ世の中に背くように、再びゲームに没頭していた。辛さや寂しさを何かで紛らわせたかったからだ。そんな日々の中で、告白の前にとあるアニメ映画を見に行こうと約束していたことを思い出した。

 振られた後、彼女が自分に対してどのように振る舞うのかが気になったから、改めて誘ったところ『いつ行く?』とあっけなく了承の返事が来た。そのまま何事もなかったかのように二人で映画を見て、その感想を喫茶店で語り合った後に解散した。

 雨降って地固まるとはよく言ったものだが、あまりにも以前と変わらない二人のあり方が拍子抜けで可笑しかった。

 つまるところ、コノミとは良き「友人」同士という関係に落ち着いたのだった。

「ひょっとして、緊張してる?」

 いつも通りの悪戯っぽい笑みを浮かべて、彼女が煽り半分に話しかけてきた。

「んな訳あるか。そっちこそ緊張で音外すなよ?」
「言ってくれるじゃん」


 彼女との関係性に、恋人という名前がつくことは叶わなかった。それでも、こうしてコノミと他愛もない会話をしている今この瞬間は、かけがえのないものだ。


 好意破れてなお続く名もなき尊いこの関係性を、これからも大切にしていきたい。





これにて1章は完結です。

ものすごく物語の締め感がある終わり方でしたが、このお話すら始まりに過ぎず…笑

コノミに恋して、振られて。

それだけで終わっていたなら、自分の恋愛を小説にしようなんて思いもしなかった。


次回より始まる2章から、個性豊かで魅力的(?)な様々な女性が登場していきます。

そんな人たちを前に、ばりとんくりそふぉんはいかに恋してゆくのか。

この恋路がチェンソーたる所以をお見せできるよう執筆頑張ります!!

(就活も佳境を迎えてきましたので、今後は更新ペースが遅れることが予想されます…🙇 その分丁寧に描いていきたいと思いますので応援よろしくお願いします!)


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