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恋もスーツも着こなせなかった。【就活恋愛論】

就活も後半戦の5月某日、上手くいかなかった面接帰りの電車内。
気持ちもスーツも沈み、崩れゆく中で、ふと気づく。

「就活って恋愛じゃね?」


週1投稿を心がけていた自分はどこへやら、前回投稿から2ヶ月程更新が遅れてしまった今日この頃。

そんな私は現在、単位が足りているので、週1でしか大学に通っていません。(オンデマンドの授業などはあるが)

にも関わらず、記事更新も小説執筆もままならなかったのは何故か。

就活のせい!!!



いや、就活しながら創作してる人なんていくらでもいるだろって?

申し訳ないことに、私は恋にも創作にも「一途」でして、一度始めた恋(創作)が終わるまで、他の何かに全く手がつかない性分。(おい)

とにかく記事を執筆するだけの時間と心に余裕を持てなかった。


早期化が叫ばれる現代の就活において、やるべきことは多岐に渡る。

私が受けている民間企業の場合、

・説明会
・インターンシップ(数時間で終わるものもあれば、数日〜1ヶ月以上にわたる長期のものも)
・複数回の面接(自分が見た会社の中では1〜3次面接+最終面接のところも)
・筆記試験(主にSPIと呼ばれる能力・性格検査を受験させられる)

に参加しなければならない。

そのためには

・ES(エントリーシート)・履歴書の作成
・ポートフォリオの作成
(デザイン関係の職種の場合)
・筆記試験の勉強
・面接対策

など準備することが盛りだくさんで…
(当然選考を受ける各会社ごとにやらなければという…)


中でも私はポートフォリオの作成に苦労した。

デザイン未経験で、分からないながらも積み重ねた作品たち。

デザイン系の就活サイトで公開されている素晴らしき先達のポートフォリオを参考に、見様見真似で作り始めてみたはいいものの、その作業は正直言って「地獄」と言わざるを得なかった。

その作品を何のために、誰のために、どのように作り上げたのか。
振り返るほど、どれだけ自分が授業を受け身で受けてきて、真剣に課題に向き合ってこなかったのかを思い知る。

故に、はじめの方は楽しかったデザイン作業が次第に憂鬱になり、自分が紡ぐ説明文の薄っぺらさや単調なレイアウトに嫌気がさして、何度も作業を放り投げてしまい…

気づけば提出期限を過ぎてしまった会社は数知れず。

選考を受けていたS社もそんな会社のうちの1つになるはずだった。

印刷会社であるS社には様々な職種があり、直接紙面デザインがしたいと考えた私は、「企画制作職」という企画、撮影、デザインと一貫して印刷物や広告の制作に携わることができる職種を志望していた。

当然ポートフォリオの提出が必須であり、面接に間に合うように直前まで作業していたものの、明らかに間に合わない進捗だった。

当日になってようやく面接辞退の決心をし、メールを送信した。

採用担当者からすればあまりにもタチが悪い学生だし、そもそも当日辞退の癖に電話で直接詫びることもしない奴など失礼極まりない。

でも当時の私にはそれで精一杯だった。

終わらすはずだったポートフォリオが全く仕上がらず、面接の対策も全くできなかった挙句、諦めることもできずに当日の朝を迎えてしまったのだから。

自己否定と罪悪感に押しつぶされそうで、電話で採用担当者の声を聞くことすら耐えられないと思った。

ついに面接からも逃げてしまったなと自嘲しながら、もはや開き直った気分でメールチェックをしていると、まさかのS社から返信があった。

「今回のご辞退の理由がポートフォリオの仕上がりの件だけであれば
面接日程を変更いたしますので是非、選考にご参加ください。
担当部署にも確認して問題ないということでした。

ポートフォリオも学生時代に作ったものをファイリングして
お持ちいただくだけでも構いません。
学業もありますのであまり無理なさらないようにお願いいたします。

引き続き選考をご希望でしたらご遠慮なくご連絡ください。
その際はいくつかご希望の日程をいただけると助かります。

では、(本名)さんからのご連絡をお待ちいたしております。」

は?

提出期限も守れずに、面接数時間前にメール1本で面接辞退を済ませようとした不躾な学生など、使えないやつに決まっていないか?

なのにどうして、こんなにも優しく私に手を差し伸べるのだろう。
驚き、疑問、そして次なる感情は…

御社、好きぃ、、、


心が「トゥンク」と響く音が、恋に落ちる鼓動が聞こえた気がした。
恋を自覚するかの如く、心が高揚した。

こんな自分に「それでも」とチャンスを与えてくれたのだから、俄然やる気が湧く。

もしこの会社に内定を頂けたのなら、この時の感謝も込めて迷いなく入社するだろう。

勢いでそう思ってしまうくらいには嬉しい出来事だった。

GW中にウイルス性の胃腸炎にかかり、1週間ほど身動きが取れなかったというアクシデントはあったものの、なんとかポートフォリオは完成。

それでも新たに設けられた面接日の直前になってしまったため、入稿する余裕はなく、データで送付した。加えて自作した吹奏楽団のパンフレットや恋愛私小説「鎖鋸」を持参し、面接に臨んだ。

「(本名)さんですか? ようやく会えましたね」

笑顔で迎えてくれたのは、40代後半か50代前半くらいの女性社員。
どうやら、メールのやりとりをしていたのはこの女性だったらしい。

「吹奏楽やられてるんですね。私の娘も部活でホルンをやっていますよ〜」
「このパンフレット作るの大変だったでしょ?」

吹奏楽という共通の話題もさることながら、ゆっくりと微笑みながら話す人で、今までのメールの印象通り、その振る舞いに優しさが滲み出ていた。

この人になら素直に受け答えができそうだ。
そう安心したのも束の間、

「それでは、面接担当の者をお呼びして来ますので、少々お待ちください」

え?
あなたが面接するんじゃないんだ…

よくよく考えればメールで「担当部署にも確認したところ」と言っていた。
その時点でやり取りしている人と面接官は別だと気づくべきだった。

遅れて入ってきた面接官は2人で一見優しそうな中年の男性と(以下中年)、白髪・ツーブロ・オレンジグラサンとイカつすぎる見た目の5、60代くらいの男性(以下グラサン)。

ゲーム「APEX」のキャラ・バリスティック。グラサンの方の面接官にめちゃくちゃ似てる。
出典:https://www.ea.com/ja-jp/games/apex-legends/about/characters/ballistic


面接官2人が席についた瞬間、中年が無表情で述べた。

「志望動機は何ですか?」

緊張を差し引いたとしても、とてつもなく重苦しい空気のまま突然始まった。
先ほどまでの女性との間にあった優しい雰囲気とのギャップもあって、もはや「怖い」と口走りそうになりながらも彼らの質問に答え始めた。

ポートフォリオやデザイン経験についての質問の後、グラサンが尋ねてきた。

「趣味でやっていく分には楽しそうですけどね」
「どうしてあえて『仕事』としてやっていきたいの?」

用意していた言葉はあったはずなのに、それらは全て吹き飛び、面接の真っ最中にも関わらず、私はその場で改めて考えてしまった。

『あんなポートフォリオ1つ作るのにあれだけ苦労して逃げ出そうとした奴が、仕事としてまともにやっていける訳なくない?』

自分が出した答えはあまりにも消極的で、情けなくて。

即座にその質問を否定できなかった時点で終わりを悟った。
真にデザインを仕事にしたい人ならば、即答できるのだろうと。

どのように答えたのか忘れてしまったが、その声が露骨に震えていたのは鮮明に覚えている。

笑顔1つ見せない面接官たちを前に、ギリギリのところで踏みとどまっていたのが、そこからすべてペースを崩されていった。

気づけば面接は終わっていて、グラサンと中年は早々に応接室を立ち去った。

「面接どうでした? やっぱり緊張しましたか?」

彼らと入れ替わりで応接室に入ってきた最初の女性社員が、最後に優しく声をかけてくれた。

「そうですね」と貼り付けた笑顔で返すのが限界で。

あなたの期待に応えられなくて、あれだけ時間と手間をかけてもらったのに申し訳ないと、身勝手に謝りたい気持ちで一杯になった。

脱力感と無力感に襲われながら、会社を出た。
尾を引く憂いと喪失感。
この感情に覚えがある。

なんか、

「フラれたみたいだな」

数日後、もちろん不採用を示すお祈りメールが届いた。

やはり恋は一方通行で、またしても私はその思いを遂げることができなかった。

※※


この経験から、私は就活と恋愛って実は似ていないかと思い、2つの項目に分けて書き出すに至った。


「肩書と最低限」

自分を飾って偽って。
会社を口説くための理論武装をして。

「素直に答えてください」とは言うけれど、全てを曝け出せばいいわけじゃない。ビジネスメールの文言だとか、自己紹介で大学を名乗るだとか。

最低限守らなければならないことが暗黙の了解としていくつも存在していて、その上で名乗る肩書も自分の何を見せるべきかも選ばなければならない。

皆が恋愛対象に据える人間だってそうだ。   

年上年下、社会人、学生だとか、皆それぞれ「肩書」というものさしを持ってして恋愛対象にする相手を選ぶ。

もっと踏み込んで言うのなら、私の場合、性自認は男で、恋愛対象は女性だから、はじめから男性を「恋愛対象外」というフィルターにかけて接している。

「恋人は最低限女性」という前提のもと恋をしては失恋しているのだから、「肩書」が書かれた書類を見てはお祈りメールを送りつける面接官と同じなのかもしれない。


「盲目」

私の場合、どうせなら学科で学んだことを活かせる仕事に就きたい!と思考停止したまま、「どうして?」と自分に問いかけることをいつの間にかやめてしまっていた。

いや、むしろ途中から問いかけるのが怖くなっていた。
説明会や面接を経るごとにその業界や自分に対する解像度が上がっていき、いくつもの不安や疑問が生まれる。

「志望していたはずなのに、全く会社説明に興味持てなかったな」
「この業界しか見ていないけど、本当に自分に合っているのは違う業界かも」
「自分が仕事する上で大切にすべきは、職種じゃないのでは?」

それらは本来、素直に噛み砕いて、改めて行動するきっかけにすべきだったのかもしれない。

しかし、私にその勇気はなかった。無知でまっすぐにデザインを仕事にしたかった頃の自分にしがみついて離れることができず、押し寄せる疑問符に蓋をした。

「仕事としてやるのには向いていない」と、自分の可能性を決めつけて、憧れに背を向けるのが何よりも怖かったのだろう。

その結果、S社での面接中に自分を見失ってしまった。

皆さんは好きな人や恋人に対して「どうしてこの人が好きなんだっけ?」と我に帰ることはないだろうか。

私にはある。

想っている時間や過ごしている時間が長ければ長いほど、相手のことを良くも悪くも知ってしまう。その相手の悪い面に触れた時、自分の好意にふと疑問を覚える時があるのだ。

それでもその悪い面を、私は見なかったことにすることが多い。
相手への好意や楽しかった時間を悪い面と天秤にかけては、「でも好きだなぁ」と目を瞑る。

本当にそれでいいのだろうか。

天秤を自分の都合のいい方へ傾けては、見ないふりをする。その行為を繰り返すうちに自分の中で作り上げる「理想の彼女」を作り上げてしまい、現実の彼女とは乖離していくのではないか。作り上げた「彼女」に恋し続けるのは現実逃避で、もはや執着とも言えるかもしれない。そんな歪な状態で、健全な恋を楽しむことはできないだろう。

恋も就活も盲目になれば、いずれ足元から崩れ出す。

___________________________________________

自分が内定に溢れかえるような、いわゆる「就職勝ち組」であったなら、恋愛の楽しい面と照らし合わせながら語ることができたのかもしれない。

いや、むしろ恋にも就活にも敗れたからこそ得られた考えなのか。


所詮は縁であり相性である就活。

数多の駆け引き(面接)を乗り越え、やっとの思いで最終面接。見事通れば、内々定。

しかし、その後も駆け引きは続いていく。
内定者懇親会で逃すまいと「デート」を持ちかけられ、この会社(人)でいいかなと「婚姻届」よろしく内定承諾書を提出し、晴れて内定となる。


大学の就活講座に参加した際、講師の方が何度も学生たちに投げかけていた言葉が
あった。

「内定はゴールじゃないよ」


対して「結婚は人生の墓場」とも言われる。

そこで人生が終わるわけでも、転職や再婚などいくらでも可能性はあるのに
あの漠然とした不安や恐怖は何なのだろう。


ここで恋も就活も黒星だらけの私があえて言おう。


そんな未来考えてる余裕あったら苦労しねえよ、ばーーーーーーーーーーーーーーーか!!!!!


今に必死で、付き合えてすらいないのに(入社してすらいないのに)、描ける未来などたかが知れている。

それでも言葉を無理やりにでも紡ぎ出す努力をするのが就活ならば、結局のところ、私は就活にやる気など見出せなかったのだろう。

恋愛も同じなのだろうか。

相手の好みを調べて、外見も言葉も選ぶべきか。
定期的に連絡をとりあい、相手が喜びそうな場所に誘うべきか。
脈ありだと察した上で、適切なタイミングで告白するべきか。

好きになって欲しいなら、振り向いて欲しいのなら
これくらいの努力は当然なのだろうか。

いや、そこまでして恋人いる…?


そんなマインドだから恋人ができないんだよと言われればそれまでなのだが….


どちらにせよ私は
恋もスーツも着こなせなかった。




【ご報告】


この度Instagramの方でも創作活動を描ければと思い、アカウントを開設しました!


歌と言葉と写真を気軽に融合できるのインスタじゃん!と今更気づいた次第です🐢🐌

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