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<土木屋目線で東京の建築をめぐる>①ル・コルビュジエと芸術の町・上野へ

ゴールデンウィークの長いお休みの中で、少しやりたいことがあり、都心へ。そのやりたいことは、「建築家関係の美術館の企画展に行くこと」でした。美術館めぐりは、これまでの自分自身の辞書の中にはあまり無く、正直なところ、小中学生の遠足で美術館に足を運んだ以外は、ほとんど絵画鑑賞に興味は皆無で、美術館に行こうという気持ちは全くと言ってもいいほどありませんでした。今回はたまたま、行きたい企画展が重なったため、その世界にそろりと一歩を踏み入れたいと思います。とはいえ、街歩きが好きな人なので、なんだかんだと街歩きも楽しんだので、その模様をお伝えします(笑)。

■芸術の町・上野へ

上野駅の広小路口。ターミナル駅の風格漂う駅です。
ハートのタペストリーが素敵。
右側のアーチを歩いていくと、かつての正面口です。
開放感あふれる鉄骨屋根と改札のところの大きな絵が特徴です。
大好きな駅の風景です。

まずは久しぶりに上野に来たのであれば、ここに来なくちゃ、ということで、中央改札の前にやって来ました。今は始発列車も激減しましたが、ターミナル駅らしい風格漂う場所、大好きです。
ここは、昭和7年に建てられた、鉄道建築の有名作品です。施工は、鹿島建設。

山手線・京浜東北線・上野東京ラインの高架下。
古そうな高架橋が良い雰囲気です。


京浜東北線の走る駅の屋根鉄骨も何だか美しい。
右は上野公園です。
いわゆる「パンダ橋」を下から眺めたところ。
結構無理矢理線路上空間を作った感じに見えます。
【2000年 東京都台東区建造 施工:鹿島建設】

この橋は台東区道としての橋のようです。

上野公園の弱電マンホール。花見で有名だからか、桜の模様でしょうか。
上野公園の玄関口・JR公園口改札。

JR上野駅の公園口改札。上野公園の玄関口にあります。昔は駅前にいつも渋滞する道路の横断歩道があった気がしましたが、道路が無くなり、スッキリした感じに生まれ変わりました。2020年にリニューアルしました。

■JR上野駅公園口改札移設時のHP
https://www.jreast.co.jp/press/2019/tokyo/20200220_to01.pdf

東京文化会館。この日は「上野の森バレエホリディ」を開催していました。
西洋美術館側から見た、東京文化会館。
バレエホリデイ、何だかみんな楽しそう。
バレエを習う子供たちのお祭りという感じの華やかな会場。

上野駅のすぐ隣にある、東京文化会館。華やかなエントランスが、観劇に向かう人々の高揚感を誘います。この建物も、前川國男さんという、日本を代表する建築家の作品です。前川國男さんは、お隣の今日の目的地、国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエの弟子だった方です。施工もお隣の美術館と同じ、清水建設が行い、1961年に出来上がった建物です。

■いよいよ、国立西洋美術館へ

そして、国立西洋美術館に到着。この美術館、東京23区内に唯一の、世界文化遺産の構成資産です。

ル・コルビュジエが設計した、美術館建築の傑作。
この美術館に、何と500円(ワンコイン)で入れちゃうんです。

この建物は、1959年に完成した美術館です。戦前に川崎重工業の初代社長に就任した松方幸次郎が、欧州で収集した美術品。第二次世界大戦にフランスにあった美術品は、フランス政府に没収されましたが、戦後に日仏友好のために返還され、「松方コレクション」として日本政府がこれらを公開するために建てられたのが、この国立西洋美術館です。入館料が500円であるのは、破格の安さです。

館内にある、2016年に世界遺産に認定された時の認定証。
【公共建築百選】に選ばれた記念のプレート。

国立西洋美術館は、松方幸次郎氏(1865-1950)が日本に西洋美術を紹介する目的で、巨額の私費を投じ、ヨーロッパ各地で収集された絵画彫刻等をもととして、1959年に設置されました。これらの収集品は、第二次大戦当時、フランスに残置してあったため、サンフランシスコ講和条約によって、フランス政府の所有となりましたが、そののち、両国政府の特別な好意で、日本政府に寄贈・返還されたものであります。
                 1968年 開館10周年を記念して

地下には、免震レトロフィット工法が紹介された窓もあります。
免震レトロフィット工法を紹介する展示。

世界遺産に登録された、世界的建築家、ル・コルビュジエが設計した日本国内唯一の作品。その弟子である前川國男、坂倉準三、吉坂隆正という日本人の有名建築家3名が手伝ったことでも知られる建物です。施工は清水建設です。美術館めぐりのはずが、建物めぐりになっています(笑)。

美術館の建物の模型。これも美術館の展示のひとつ。
大スパンの展示室にコンクリートの柱と階段。
美術を鑑賞するのが楽しくなる空間。
エントランス前の空間も、本当に見事なものです。

美術も素晴らしいですが、やはりこの建物の存在が、美しい芸術作品を引き立ててくれます。世界遺産に登録されたことも納得できる建築です。

クロード・モネの「チャーリング・クロス橋、ロンドン」
土木屋目線で見る絵画としては、とても良い作品(笑)。

モネの1902年頃のの絵画。開館初期の、松方コレクションの一部として収蔵されている作品です。テムズ川に架かる橋の霧の風景が、モネはお気に入りだったようで、何枚か作品を残しているようです。

ルノワールの「帽子の女」。1891年の作品。これも松方コレクションです。

モネやルノワールなどの作品と、世界遺産の建物が、わずかワンコインで見られるこの場所。もっと早く知っておけばよかったと思える素晴らしい場所です。

この作品は、真ん中の円筒状の鏡越しに見るのが正しい見え方のようです。
どうやって絵を描いたのかがとても気になる作品。
ロダンの「化粧するヴィーナス」

■そして、今日の目的の企画展へ

ここまでで、本当におなか一杯くらい芸術作品を眺めましたが(笑)、ここからが目的の企画展。

「調和に向かって」ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ
大成建設コレクションより

この企画展は、国立西洋美術館が世界遺産登録をきっかけに、開館当時の姿に戻す改修工事のためにしばらく閉鎖されていたのを、再び再開したことを記念する展覧会です。

水着を着た三人の女。

コルビュジエは、モデュロールと呼ばれる、黄金比を意識したデザインで有名です。この作品も、人間のプロポーションの黄金比を意識して書いているのでしょうか。

奇妙な鳥と雄牛のタペストリー。

このタペストリー、新宿にあった頃のギャルリー・タイセイで見たことがあります。かなり久しぶりの再会です(笑)。その昔は、コルビュジエって、発音しにくい名前の人というイメージしかなかったのですが、ようやくすごい人なのだと再実感しました。

コルビュジエの建物の中に並ぶ、彼の絵画作品。

素晴らしい建物の中に素晴らしい芸術作品があると、ほとんど絵心の無く、絵画鑑賞は初心者である私のような人にも、その素晴らしさが何となく伝わってくる感じがするものです。

外には、有名な「考える人」。
絵になる建物の前の彫刻も素敵です。

国立西洋美術館、とても美しい空間でした。ル・コルビュジエの建築を満喫し、美術にも触れられる、とても贅沢な空間でした。ワンコインは本当にお値打ちです。

■地下鉄上野駅へ

銀座線の上野駅へ。京成線への連絡通路も何だか風格漂う雰囲気。
日本最初の地下鉄の駅の一つ。銀座線上野駅。
昭和2年に開業した、鉄構框構造が貴重な土木遺産。

最後に訪れた、銀座線上野駅は、日本で最初に開業した地下鉄の一部として昭和2年に開業した駅です。鉄構框構造で作られた地下駅は、2008年に土木学会の選奨土木遺産に認定されています。

■終わりに

街歩き好きの土木屋が、思い立って出かけた上野の美術館に建築家を訪ねてのお出かけ。名建築に土木遺産を鑑賞しながら、ル・コルビュジエとその弟子たちが残した芸術的な建築作品と、その中に広がるアートな空間を堪能することができました。おそらく絵画を鑑賞している人とはちょっと違う視点で美術館を眺めていたかもしれませんが、そういう楽しみ方もできるのが、この場所の楽しさなのではないかと思いました。

この日の美術館めぐりはおしまい・・・ではなく、実はさらに「本題」というべきもう一つの美術館にハシゴしています(笑)。その模様は、次回に続きます。

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