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【南大沢土木構造物めぐり(番外編)】No.98 「やとのいえ」のもうひとつの舞台

今回は、地元・南大沢や多摩ニュータウン周辺の街歩きではありません。が、前回の探索に関係があるので、「番外編」としたいと思います。

探索した場所は、多摩ニュータウンから離れた、京都の嵐山から愛宕山の麓に向かう坂の途中にある、愛宕念仏寺。実は、前回紹介した「やとのいえ」という絵本のモチーフとなった羅漢像があると知り、このタイミングで京都で学会が開催されたので、この機会に訪れてみることにしました。

絵本「やとのいえ」。八尾慶次さんの作品。
多摩ニュータウンの谷戸の家が舞台に時代の流れを丁寧に描写されています。
「やとのいえ」のモデルとなった多摩センターの今の風景。

この絵本のもう一つの主役である、16体の羅漢像。今回の探索するお寺にそのモデルとなる羅漢像がこのお寺に鎮座しているということで、拝みに行ってきました。

■ 愛宕念仏寺に向かう

愛宕(おたぎ)念仏寺は、京都・嵐山から北西に進み、愛宕山の麓にある鳥居本を過ぎ、登山口のある清滝に向かう試峠(こころみとうげ)の手前にあるお寺です。戦前には、愛宕山鉄道が清滝まで通じ、試峠には「清滝トンネル」ができていましたが、今は鉄道は廃止され、トンネルは車道となっています。愛宕念仏寺は、丁度そのトンネルのすぐ手前にあります。

嵐山~清滝付近の新旧地図。愛宕念仏寺は、清滝トンネルのすぐ南側にあります。

では、愛宕念仏寺を目指しましょう。

プチ旅の起点は、地下鉄東西線 太秦天神川駅。
京都の西側の新たな拠点になる駅です。
この駅と嵐電天神川駅が繋がっています。
嵐山に到着。観光客や修学旅行生で賑わっていました。

嵐山駅からは、バスがありますが、1時間に1本しか走っていなく、あいにく出発してしまった直後だったようなので、ここはタクシーを利用することにしました。

■ 愛宕念仏寺に参拝する

愛宕念仏寺に到着。本堂は重要文化財に指定されています。

愛宕念仏寺は、昔からこの地にあったわけではないようです。昔は、京都の中心部の鴨川の畔にあり、大正時代に嵯峨野に移築されたもののようです。戦後に住職さんがいなくなり、昭和25年の水害で被災し、荒廃しましたが、彫刻家でもある西村公朗さんが住職となり、再興されたお寺です。その際、寺門興隆をめざし、境内を羅漢像で埋めることになり、賛同した一般の方が自ら彫った羅漢像が並ぶ、癒しの寺となっています。

これが、羅漢様。様々な表情をした石仏が、苔むした状態で出迎えてくれます。
境内の至るところに鎮座しています。
様々な姿の石仏。裏には、彫った方の名前が記されています。
実に沢山の石仏に見守られている感じがしました。
こちらは、ふれ愛観音堂。目の不自由な方にも仏様に親しんでもらえるよう、
触れられるようになっています。
彫刻家でもある住職さんの手作りだとか。

「やとのいえ」に出てくる十六羅漢像は、このお寺の羅漢像をモチーフにされているとか。境内で優しく見守られている感じが、多摩ニュータウンの谷戸の歴史的変遷を優しく見守るという、絵本の作品と合致していて、その世界観がよくわかった気がします。

■嵯峨野を歩く

嵯峨野を歩くとはいえ、時間が無い中での散策なので、普通の観光はしていません。土木街歩き的弾丸ツアーです(笑)。

試峠を貫く清滝トンネル。鉄道の単線断面のため、交互通行です。
青信号の時だけ前進できます。
清滝トンネル。先の見えない長いトンネルです。
こんなトンネルなので、ここは心霊スポットのように言われています。
試峠を越えるルートも現存しますが、車では通行できないようです。
左の石積みの上はバスが走る道路、昔の愛宕山鉄道の軌道敷跡です。
こちらは古くからの道です。
鳥居本の鳥居が見えてきました。
愛宕山と書かれた鳥居。清滝方面と水尾方面に道が分かれる場所でもあります。
嵯峨鳥居本の街並みは、「伝統的建造物群保存地区」に選ばれています。
伝統的建造物群保存地区であることを説明する看板。
街並み資料館があり、町の模型がありました。
今は無き愛宕山鉄道が再現されています。
街並みも素敵ですが、結構この模型に見入ってしまいました。
愛宕山鉄道跡を通る、バス道路。今はただの観光道路のように見えます。
これは、化野念仏寺の入口。こちらは無数の小さな石仏を供養するお寺。
二尊院の門前。この辺りから観光客が増えてきます。
竹林の中を歩きます。この辺りは着物を来た女性グループがインスタ映えをする
写真を撮る、というようなシーンがとても多かったです。
土木街歩きの人は忘れてはいけない、JR嵯峨野線の踏切。野々宮神社のすぐ隣です。
踏切の名前は、「野乃宮」なのですね。
渡月橋にやって来ました。
「琴きき橋跡」と書かれた石碑があります。

琴きき橋については、こちらのサイトに解説されていますが、昔の謡曲の舞台のようです。

渡月橋の上流側をみたところ。やはり絵になります。
帰りは阪急電車で京都市内へ。阪急嵐山駅も味わい深い駅です。

■終わりに

多摩ニュータウンのことを書いた「やとのいえ」の原画展を見ていて、行ってみたくなった愛宕念仏寺。たくさんの羅漢様が穏やかに境内や我々を見守っている、そのそれぞれの石像が、一人一人が手作りで彫ったものである、ということに、何だか温かいものを感じました。嵯峨野を訪れる際は、是非足を伸ばしてみてください。

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