44 私にくれた最期の言葉
何が正しい処置なのかわからない。
ただ、怖かった。
苦しむ母を目の前にして何をすればいいかも分からず、
看護師さんの指示通りにやっても、苦しみ続ける。
今の状況が、死の直前なのか、死へ向かう過程なのか。わからない。お医者さんでもわからないのかもしれないけど。
とにかく苦しむ母をなんとかしたくて、
何が緩和ケアなんだと悔しくて、
友達が話してくれたことを看護師さんではなく、(看護師さんは酸素マスク導入について決められないらしい)お医者さんに電話相談した。
このときは既に深夜1時。
やっと、お医者さんが来てくれる。
ーーーーーー
母となんとか会話してきた日々も、
この日が最後だった。
辛そうな母を前に立ち尽くしていると
母は急に私の手を取り、はっきりと喋った。
「ちゃぴお、ありがとうね」
あまりにも不意打ちすぎる。
でもそれが、
母が私にくれた最後の言葉になった。
「なんでそんなこというの……」
私は涙を見せないよう、つぶやきながらそっぽを向いた。
そんなこと言ったら、もう、、終わりみたいじゃない…
胸が苦しくて涙が止まらなくて、返事なんてできなかった。
すると母は続けて、
「大丈夫だよ、伝わってるから。」
私はもう、溢れる寸前。
「お風呂いってくるね。」
か細い声で返した。
私にはちょっと苦しすぎた。
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