「コーヒー屋さんにて。。。」


 雨の日は憂鬱になる。何故か?
 それは私が雨が嫌いだからだ。

 「今日も雨降ってるなぁ……」

 仕事帰り、空を見上げながらそんな事を思っていた。時計を見ると18:40。
 
 今日は帰るの遅くなりそう。
 
 「あっ…そうだ、この前の資料の確認しなきゃ」
  
 スマホを開き、先日、取引先から貰った資料を確認した。

 「うーん……ここらへんは予算的にきついかな……明日部長に相談しよ」

 そんな事を考えていると、雨は小雨になった。

「あっ、ラッキー早く家帰ろ」

 私は駆け足で駅に向かった。
 だけど……また雨は強くなってきた。


「濡れた。最悪」そう言いながら雨宿りする私。スーツに付いた水を払ってると、後ろからコーヒーの匂いがしてきた。

「あっ、いい匂い」

 後ろを振り返ると、そこはコーヒー屋さんだった。

 (コーヒー屋さん……入ったことないかも。)

 外を確認すると、雨はまぁまぁ強い。

 (せっかくだし、美味しいコーヒー買って帰ろうかな)

 そう思いながら中に入った。

「すごい。コーヒーってこんなに種類があるんだ」目の前には20種類以上のコーヒーが並べられている。この中で一番美味しい奴ってどれ何だろう。

 夢中になって選んでる私。
「────いらっしゃいませ。ゆっくり見ていってください」少しびっくりして、振り返るとそこには優しそうな若いお兄さんがいた。

 ……社員さんかな?そんな事を考えてると、
お兄さんも、私の事を見てくる。

 えっ………なに……。私何かした……?
 すごくじっと見てくる。

「な……何か……ありました?」
やばい。ちょっと日本語変になっちゃった。

すると「ちょっとまってて下さい」そう言って、走ってお店の奥に行った。 

 ──────?

 1分もしない内に、また走ってこっちに来た。
「お姉さん……よかったらこれ……どうぞ」そう言いながら濡れてる私を見て、お兄さんはタオルを持ってきてくれた。 

 お兄さん、すごく息切れてる。

 私は「ありがとうございます……」と言ってタオルを受け取った。

「気にしなくて大丈夫ですよ。濡れたままだと風邪ひいちゃいますし───あ、そうだ!」

 また走ってお店の奥行っちゃった。
 でも、疲れてるからかな、さっきよりちょっとだけ遅いかも。笑

 ─────────3分後。 

 あ、戻ってきた。ん?何か持ってる?
 
「あの…よかったらこれどうぞ。僕のおすすめです」そう言ってお兄さんがくれたのは、小さめの紙コップに入ったコーヒー。

「…………いいんですか?」

「はい、身体温まりますよ」

 すごく良い香り。そして温かい……。
 どれどれ…お味はどうかな……。

「これっ……凄く美味しい……」
 こんな美味しいコーヒー初めてかも。

「喜んでくれて良かったです。これ僕の一番おすすめのコーヒーなんです」

 そうなのか。どうりで美味しいわけだ。

「これ……買おうかな」

「本当ですか!?」
「うん、コーヒー美味しかったから」
「ありがとうございます!」

 お兄さん何だか嬉しそう。
 あ、そうだ。財布出さなきゃ。
 いくらかな。
 
「お姉さん……持って来ました……1480円です」

 息切れしてる。お兄さんまた走ったな。
 そんな毎回走らなくていいのに。
 
「多分、ちょうどあります」そう言ってお金を渡した。
  
 家帰ってコーヒー飲むの楽しみ。
 さて、そろそろ帰ろうかな。
 そう思い外を見る。

「雨……止んでない」

 するとお兄さんが「これ、使いますか?」と傘を差し出してきた。

「え……」
「お店の傘なんで、よかったら使ってください」
「………本当にいいんですか?」
「はい!」

 このお兄さん良い人過ぎる。

「……ありがとうございます」そう言って傘を受け取り、お店を出た。

 今度傘返しに来る時、コーヒー買おう。
 お兄さんまた居るかな。
 居たらちょっと嬉しいな。

「さて…帰ろ……」


───────────────────

 雨の日は憂鬱になる。何故か?
 それは私が雨が嫌いだからだ。

 でも………。

「雨の日も悪くないかも……」
 ちょっとだけそう思った。


 
 ───ふぅ…。
 やっぱりこのコーヒー美味しい。

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