デパコス級豆大福
ー 遅刻遅刻〜!と言いながら私は老舗の和菓子屋さんに駆け込んだ ー
今日の授業は午後からだった。
私はギリギリまで家にいたいタイプなので、この日もいつも通りギリギリを攻めていた。
ギリギリを攻めていた結果、まずお昼ご飯を食べる時間がなくなった。
(優先的に削った)
家から学校までのどこかでコンビニににでも行こうかと考えていた。
そこで目に飛び込んできたのが和菓子屋さんだった。
それも老舗の、おばあちゃんとおじいちゃんがやっているお店。
その辺りでは人気らしく、いつも開店前から行列ができている。
そのお店の名物は豆大福
人々は皆この豆大福をめがけてやってくるのだ。
お店の前には「本日の豆大福は終了しました」という看板がよく置かれているほど
しかもそれが結構早い時間から置かれている。
(2時とか3時とか)
私も何回か訪れたことがあるが、毎回豆大福を買ってしまう。
出会えたらラッキーだし、ショーケースに並ぶ豆大福は恍惚としていて、目が釘付けになっちゃうから。
ここの豆大福はデパートに並ぶコスメと同じ扱いなのだ。
プチプラ豆大福はコンビニにでもたくさん売っているけれど、ここのようなデパコス級豆大福はなかなか無い。
この日も外から見て豆大福がまだあることを確認すると、私は吸い寄せられるようにお店に入っていった。
おばあちゃんが椅子に座りながら店番をしていた。
(「店番」って響きがぴったりすぎる!!って自分で言ってて納得してる。その光景私にしかわからないんだけど。)
「豆大福ひとつください」
「200円です」
200円ぴったり渡し、紙袋に包まれた豆大福を受け取る。
(レジ袋いりますか?なんて聞かれない。レシートなんて出てこない。それがまたいい。)
かばんの上の方にそっと置いて、また学校にいそいそと向かう。
校門から教室までの間にある空き教室で食べよう、と決めて学校に入った。
のだが、
ちょうどいい空き教室がない、、、
ということで、他学部のよくわからない建物の1階のエントランスソファーみたいなところで食べることにした。
幸い今のコロナの時期は学校に人がいないため、人目につかずに食べることができる。
わ〜開封!
まだほのかにあったかい。
そんなに時間に余裕があるわけでもないからすぐに一口食べる。
ごほっっ
1人虚しく豆大福を食べながら突如むせる女子大学生。
いや、しょうがないんです。これ。
だって、写真見てもらったらわかるんですけど、この豆大福、片栗粉?がめっちゃついてるんですよ!
(お願いなので写真を見て私の気持ちをわかってください。)
食べた瞬間唇が真っ白になる。
あーこれ、1人で食べて正解だったな。
と1人で笑みを浮かべる。
粉が雪のように洋服に舞い落ちる
粉は粉だから、雪とは違う
時間とともに消えてってくれたりはしない。
私は手で粉を払おうとする
粉がのびてもっと汚くなる
なぜか突然、小中学校の校庭によく引かれている石灰のラインを思い出した。
(なぜ?)
今日の私の洋服の色、黒
しまったと思った時にはもう遅かった。
だけどこの豆大福には黒い服を犠牲にしてまでも食べる価値がある。
(下げて上げるタイプ)
これでもかというほど大粒の豆
甘すぎないあんこ
そしてちょっとしょっぱくてもっちもちの大福
そう
とんでもなくもっちもちなの!
これまでの短い人生で何回も「もちもちファンクラブ」を立ち上げたほど、無類のもちもち好きの私、大歓喜
(もちもちファンクラブ・・・非公式。会員にはだいたいお母さんか友だちが引っ張り込まれる。会員はいつも1人か2人。活動したことはまだ無い。)
デパコス級豆大福というだけあって(勝手に名付けたんだけど、)この豆大福は食べていてとても幸せな気分になれる。
身につけているだけでときめくデパコスと一緒だ。
食べているだけで心が華やぐ。
この豆大福にはそんな価値が詰まっている。
そしてさっきから人通りが多い。
ガタガタ音がすると思ったらトイレの清掃のおじさんだし、学生の行き来もやけに激しい。
なんだか恥ずかしくなってきたから、そそくさと食べ終えて、颯爽と立ち上がり、涼しい顔で豆大福のゴミをゴミ箱に投げ入れて、教室へと向かった。
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