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本でも読もっか。

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書評です。
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短編集「一人称単数」感想

短編集「一人称単数」感想

「品川猿の告白」すごく良かった。

猿が喋るとんでもないファンタジーなんだけど、納得感がある。ああ、そういうこともあるのかもしれないな。猿の悩みにも一つ一つ共感できる。

露天風呂での猿の振る舞い、客室での告白、最高に面白い。

ファンタジーを描いても、リアリティをもって受け止められるのが、この作家の凄いところ。

「ウィズ・ザ・ビートルズ」も良かった。

人生の一瞬とも言えるような交錯が人を救う

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小説「チエちゃんと私」感想

小説「チエちゃんと私」感想

よしもとばななの小説が好きだ。

現実離れのフワフワした物語のようで、しっかりと地に足をつけて生きていこうという気持ちにさせてくれる。

押し付けがましくないのも好ましい。

与えられた持ち札で人生を切り拓き、胸を張って生きていく。

人と比べたりしない。自分にとって確かな幸せをゆっくりとじっくりと味わいながら生きていく。

そんな登場人物たちの生き方は、ほのかだけどたしかな光となって、こちらの生

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与沢翼「お金の真理」

与沢翼「お金の真理」

非常に面白く読めます。
良い情報過ぎてあまり人様に紹介したくないです。

著者がビジネスに2回失敗していることから得た教訓を余すことなく公開してくれています。「しくじり先生」のように、失敗から学んだ人の意見には説得力があります。

お金儲けの考え方について、具体的事例を交えて論理的に、メリットとデメリットを整理して解説してくれるから、一つ一つに膝を打てる。

ハイリスクな株や仮想通貨でバリバリ儲け

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村上春樹「猫を棄てる」感想

村上春樹「猫を棄てる」感想

もったいないと思いつつ夢中になり、小一時間で読み終えてしまった。

本書を例えるなら、世界的に名声を誇るシェフがこれまで作り出してきた数々の素晴らしい料理の隠し味を紹介したような本、とでも言えばよいか。

もしかして、あの作品のあの場面には、この時の思い出や考えが反映されているのかも!という発見や気づきが、次から次へと現れて、ページを読む手を止められなかった。

どちらかというと、村上作品をほとん

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「線は、僕を描く」の感想

「線は、僕を描く」の感想

すごく売れてるということで、「線は、僕を描く」読みました。

始めの部分で、居心地悪くてもぞもぞしてしまうライトノベル感。

業界の第一人者に才能を見出される平凡な大学生。両親が事故死ってまんま「3月のライオン」だ。

そしてヒロインは、気が強くて超絶美人で業界第一人者の孫娘。

もうこの設定だけで、何か、萎える。こういうのが好きな層はいるんだろうけど、なんかごめんなさい。

小説は50ページ読ま

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海のふた 感想

海のふた 感想

全文面白い。そんな本にたまに出会える。

よしもとばななの「海のふた」はそんな本だ。

ひと夏を一緒に過ごした2人の女の子の短い物語。

大袈裟に言えば、人生のほとんどすべてについて書かれている。

あまりにサラッと人生とは何かが書かれていて、僕は恐ろしくなってしまったけれど、登場人物は息遣いが聞こえるほどリアルで切実なので、10代の女の子が語る「人生とは何か」についてのセリフがすとんと腹落ちする

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