短編集「一人称単数」感想
「品川猿の告白」すごく良かった。
猿が喋るとんでもないファンタジーなんだけど、納得感がある。ああ、そういうこともあるのかもしれないな。猿の悩みにも一つ一つ共感できる。
露天風呂での猿の振る舞い、客室での告白、最高に面白い。
ファンタジーを描いても、リアリティをもって受け止められるのが、この作家の凄いところ。
「ウィズ・ザ・ビートルズ」も良かった。
人生の一瞬とも言えるような交錯が人を救うことある。
引きこもりの兄にとっては、主人公がそうだったのかもしれない。
恋人の兄に初対面で芥川の歯車を朗読する場面はシュールすぎて笑った。
「謝肉祭」も印象的。
美男醜女の夫婦。ギャップの沼に人は引き込まれる。分かる気がする。
醜女が主人公を美男の夫に会わせなかったのは、その沼に主人公を引きこませたくなかったからではないのかな。
純粋な音楽仲間として大切にしたかったのかもしれない。
それにしても、今年は村上さんの作品、チョコチョコ出るね。