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毎日が「PERFECT DAYS」

今日、珍しく日本の映画を観に行った。
役所広次さん主演の『PERFECT DAYS』という映画を観てきた。

洋画や日本のアニメはよく観に行くのたけど邦画は、またいつかNetflixやAmazon primeで観ればいいかなぁって思って観に行くことが少ない。

日本の映画と言っても監督は、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督。日本の映画なんだけど挿入歌の影響もあってか〝和〟という感じとはちょっと違う。

レビューにセリフが殆どなくて役所広次さんの顔とトイレ掃除をひたすら観ると書いてあった。それなのに作品に引き込まれたと書かれていた。

映画を観る前に監督の奥様と役所広次さんの奥様のインタビュー動画を拝見した。
それぞれの奥様が、さすがご夫婦!と言いたくなるインタビューだった。ご主人の特性や習性や大切にしているものや信念についてよーくご存じでそのお二人のご主人がどんなふうに丁寧に作り上げてきた作品なのかが奥様たちのインタビューで伝わってきた。

役所さんの役作りなどについても語られていた。この映画を撮っている間は、狭い空間でずっと(主人公の)平山でいようとしていたと思うので違う神経の使い方だったと思うと言われていた。初日終わって帰ってきたときには、目があっちにもこっちにもついている感じだったと。凝縮した時間を過ごしていたのでいろんなところに目がいっていたんだと思うと話されていた。
仕事がトイレの清掃員の役柄なので家でもよくツナギを着て過ごされていたと。役が終わると一晩で顔が変わると言われていた。すごいねぇ、役者さんって。

監督の奥様も「ヴィムは写真家であると同時に画家でもあります。彼の映画の各フレームは絵なのです。それは、色を扱う彼の能力と関係があります。構成をあっという間に把握できるのです。つまり映画全体を見るとまるで絵の具の層を塗り重ねるかのようにシーンが重なり合っていくのがわかります」と。日本という場で彼の思うように仕事ができたことを感謝されていた。

こんなに奥様から理解され応援されてお仕事をしているお二人は幸せだなぁと思った。そんな人たちがチームになって作り上げた作品・・・観てみたい!と思った。

・・・・・・・・・・・・・・*



映画館に入ると想像通り50overの男女が殆ど。
確かにそれくらいの年齢に差し掛かっていたほうがはまり込めるかもしれない。

以降、ネタバレだらけ。
観にいく予定のかたはスルーしてくださいね🎶

渋谷で清掃員をしている“平山”の繰り返す毎日をひたすら撮り続けている映画。
ドキュメンタリータッチ。
ご近所さんが道路を竹箒で掃く音で始まる朝のシーンも何回もあった。
とにかく私たちもそうであるように同じような毎日が何日も繰り返されている。
世界の中でも街の中が綺麗と言われている日本。
そんな日本のトイレ掃除を世界中の人が映画を通して観ていくというのもカルチャーショックかもしれない。きっとあんなに丁寧に掃除するなんて衝撃だと思う。

ちなみに職業柄なのか便器を洗う手袋と蛇口を洗う手袋が同じだったのが気になった。そしてツナギを休みの日にしか洗わないというのが気になった。菌が。。。。と思ってそこだけは気になってしまった(笑)

渋谷のトイレが舞台なのだけど「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトがあり、世界的な名だたるクリエイター達が作ったトイレが映画の中にたくさん出てくる。
ガラス張りで丸見えのドアが、中に入ると外からは見えない仕組みになったり。
ここは美術館?みたいな入り口のトイレとか。
このプロジェクションを立ち上げた方が、監督に映画を!って言って出来上がった映画らしい。
トイレがメインで出てくる映画って凄いなーって思うけど、トイレは、色んなモノの象徴であるような気がする。
因みに風水の考え方でトイレは、お金や財運の意味もあるって言うのもなんか考えさせられる。

話は戻って…

“平山”が繰り返す朝のルーティンもどこか心地よい。
道を箒で掃く音で目覚め、布団を丁寧に畳み、読みかけの本を本棚にしまう。
歯磨きをして口髭を小さなハサミでカットしたり、ツナギをスルスルっと履く。
玄関を出る前に順番に綺麗に置いてある鍵などを次々にポケットに入れ込むシーン。
順番に置いてあって何故かいつも腕時計は置いたまま。
次の休日のシーンをみて、そっか、休日だけは、時計をするのか〜と〝平山〟のルーティンを覗き見た気分になる。
トイレ掃除をあんなに丁寧にやっている仕事のできる彼だからこそ丁寧な日常を送っているのだろう。3K(きつい・汚い・危険)と言われる仕事の一つかもしれないトイレ掃除。それをかわいい若い姪と一緒にトイレ掃除をする場面でちょっとイメージも変化させようとしているのかもしれない。

玄関の扉を開ける時は、どんな日も朝の景色を見て微笑んでいる。
そして、カセットテープで音楽を聴くこだわり。
昼休憩は、神社でサンドイッチを食べ、ベンチから大きな樹と一緒に木漏れ日をカメラで撮る。
本は、古本屋で100円で購入。
お風呂は、銭湯。顔馴染みはいそうだけど特に会話もない。
休みの日には、コインランドリーに行き、石川さゆりさん扮するママのいるスナックへ行く。石川さゆりさんが、歌うシーンがあり、あの歌はなんか沁みるー。

この映画、思い返すと音がとても印象的だったなぁと。髭を小さなハサミでカットする音や歯を磨く音、箒で掃く音、自動販売機から出てくる音、コインランドリーの洗濯機の回る音…こういうのが全て思い出せる映画ってあまりなかったなーと。

セリフが殆どない描写だったのでこちら側も五感が研ぎ澄まされた世界に誘われていたのかもしれない。

きっと裕福な家庭で育ったであろう“平山”の過去を最後まで深掘りすることもなく物語は進んでいく。洋楽や本や写真が好きな“平山“から私たちが想像するしかない。

ちょっとしか出てこない登場人物も何人かいる。
それでもそれぞれの人がそれぞれの人生を個性的に淡々と歩んでいる。
私たちもその一人なのだろうなぁと思える。

ある男(さらっと三浦友和さん出てくる豪華さ!)と影踏みごっこをするシーンもあったけど、光と影というのもテーマ。昼休憩の神社のベンチで大樹の木漏れ日からいつも光と影を見ていた。

・・・・・・・*

訪問看護をしていると実にたくさんのお客様のお宅にお邪魔する。
そして約1時間お客様の空間に居させて頂く。
その人にとっては毎日の繰り返しなのだけど私にはそれが何だかとても素敵に映ったりすることがよくある。

例えば、
とびきり履き心地のいいスリッパが並べられていたり。
アンティークの掘り出し物の丸いテーブルがリビングの真ん中にすごくちょうどいい感じで置いてあったり。
お揃いのタッパーにお菓子が賞味期限をメモで貼ってたくさん置いてあったり。
髪の毛一つ落ちていないお風呂場に美しく並べられたおしゃれな掃除用具が並んでいたり。
ご自分で描かれた優しい絵が部屋のあちこちに優しく飾ってあったり。
作り置きのおかずがタッパーに入って綺麗に冷蔵庫に並べてあったり。
犬や猫がいてそこらじゅう元気に走り回ってカーペットが毛だらけだったり。
縁側に差し込んだ光の中でマッサージチェアにのんびり座られていたり。
テーブルに何気なく英字新聞が置いてあったり。
紙おむつや尿取りパットや介護用品がわかりやすく整理されていたり。
介護用品を自分で工夫して作られていたり。
見えなくなるまでお見送りをしてくれたり。
私が着てきたびしょ濡れカッパを干してくれたり。

こんな一つ一つが私にとってはその人の素敵なところの一部として映っている。
きっとご本人たちにとったら普通の毎日なのだと思う。
ソファーがいつも座っているところだけいい感じで傷んでいるのさえ、いいなぁと思う。
その人の人となりや歴史や全部含めて一緒に景色も入ってくる。

誰かと比べたり、否定したりするものなんて何もないんじゃないかと思ったりもする。

朝起きた時に“平山“のように清々しい笑顔で朝を始められたらいいなぁ。
なんだか丁寧な生活がしたくなった(笑)
怒るシーンもあったけど翌朝には引きずらず、アパートの玄関ドアを開けた瞬間〝平山〟は、いつも新しい朝に出会うのを歓喜するかのように一瞬微笑む。

この先の命の長さなんて誰の長さもわからない。
でも“今“という時間は、みんな平等に在る。
この今を大切にって最近強く感じている。
過去と未来はちょっと置いとこうって。
じゃないと“今”がもったいない気がして。

幸せって、豊かさって…自分が今、幸せ!今、最高に豊か!と思ったらもう目の前の世界は自分がどうにでも作り出せるのだと思う。自分の感じ方1つで。

何かを追い求めがちなのだけど
もしかしたら既にPERFECT なのかもしれない。
人生ってそれに気付くことなのかも…。





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