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『部屋とYシャツじゃなくてサルマタと彼』

その彼は、トトロの庭の主人。

彼は、トトロの庭を潜り抜けたところに住んでいると聞いていた。
噂通り、庭は、トトロな感じだった。そこそこ都会の住宅街にこんな空間があるなんて。

季節ごとの果実をつけてた樹々が生い茂っているトトロの庭をくぐり抜けたらメイちゃんたちが住んでいる家があるはず。
・・・出てくると思わせといてぇ・・・

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バーン、出てきたのはモノに溢れたお屋敷だった。勝手に気分を盛り上げといて騙された感あり。

そこには80半ばの彼・・・「とと助」さんとしよう(仮名が雑?)とそのご家族が住んでいた。

あばらの形が重ね着でも見えてきそうな細い体でトイレに行くのが精一杯。
モノに躓いて転んだらポキッと簡単にいきそう。
とと助さんの体力を電池でいうと33%くらいと推定。

当然、転倒のリスクを最小限にしたい私たちは、モノを片付けることは、何度も挑戦している。
しかーし、ご家族に言わせるとモノを1mmでも動かしたら大変なことになるらしい。
100年呪われるとまでは言われなかったけど、ご家族はそれくらいのレベルで片付けに関わることを避けに避けまくっていた。
私なら少々呪われてもお祓いとかしてもらいながらでも片付けていると思うけど。
色んなものが積み重なっていて到底どこに何があるかは探せる状態ではない。
薄っぺらいモノを探すには難易度が高すぎる積み重なり方となっている。

最初に言っておこうかな。
私たちは、このとと助さんのことをこよなく愛している。

こよなく愛しているポイントとしては色々あると思うけど、彼の“彼にしかわからないこだわり”を好きなのだと思う。こだわりマンなのにフフッて可愛らしく笑うところとか。

私が一番気に入っている拘りは・・・
シミだらけで破れかぶれのアンダーウェアをこよなく愛していること

アンダーウェア……かっこよく言う必要もないのでわかりやすく言うと、ラクダのシャツラクダ色のサルマタ
1つ1つのシミにも愛着があるらしく痒くて掻いた時に血が付いたのが取れないシミが肩に付いていたり、胸に付いていたりするわけなんだけど。
シミが付いてる場所を確認して、嬉しそうに「そうそう、このシミはね、あの時のシミでね」と〝あの時”の話を説明してくれる。
シミフェチなのか?

サルマタやステテコもまぁまぁビリビリな感じのクラッシュに仕上がっているのが揃ってる。
デニムならこれくらいのクラッシュもお洒落かもしれない。
が、下着のクラッシュはどうなん・・・?
クラッシュフェチでもあるのか?「そうそう、ここがやぶれているんだよねぇ」とやぶれている部分をじっと見て目を細めて愛おしそうに言う。
こちらまでこのクラッシュが味わいのあるものに見えてくる。もしかしてクラッシュしていないのは面白みに欠けるのか?

種類で言うと、普通のパンツではなく〝サルマタ”が最高らしい。サルマタ知らない人は、サルマタで画像検索でもして知識を一つ増やす。
最近ではあまり売っていないと嘆いていた。
同僚が新しいサルマタをプレゼントしたけどそれもまだ一度も履いていない。ラクダ色じゃなく白だったからよくなかったのか?
サルマタ全般が好きと言うより今の愛着のあるサルマタが気に入っているようだ。多分だけど、もう皮膚になりかけているのかもしれない。

誤解のないように言っておくととと助さんは、お金に困ってるわけでもなんでもない。特にアウター好きで沢山のジャンパーを持っていらっしゃる。
お洒落さんだと思う。
いつだったか、私が帰り際に着たワークマンのアウター(お洒落な抹茶色!)を見て食いついてきたことがあった。

「それ、いい色だねぇ。ちょっとよく見せて」
と言いながら実際に触って目利きの職人のように指を擦り合わせながら生地を確かめている。

しかもポケットにまで手を入れて確認してきた(笑)
「イイねぇ」を連発している。
「内側にもポケットがあるじゃない・・・これはイイ!」
とと助さんのお眼鏡に叶ったことはなんだか嬉しかった。
「これ欲しいなぁ」


とと助さんとまさかのお揃いか?


そのくせ新しいアウター達は、殆ど着ずに50歳代の息子さまが中学生の時に着ていた40年前くらいのジャージを好んで着ている。な、なんでそのジャージを・・・!と思いながらもそのこだわりが彼らしくてイイなぁと思う。

以前、お誕生日にとと助さんのお名前にちなんだタオルをプレゼントしたことがあった。名前に因んでいたからなのかとても喜んで頂いた。
普通なら新しいものはあまり使わないのにそのタオルは、いつも使ってくれている。
いつか、彼のクラッシュサルマタのように殿堂入りを果たすかもしれない勢いだ。(あのサルマタと肩を並べるなんて光栄!)

世の中は、断捨離、断捨離の時代になってきている。
きっとスッキリした部屋を体験したらまた違った感動はあるとは思っている。
生活も格段にしやすくなるはず。


数ヶ月前にこの部屋の中に福祉ベッドを入れることになった。
過去にも何度かベッドのことは提案してたけどモノの位置は絶対に変えたらダメ!と言われるため実現しなかった。
今回、ベッドが入ったのは、ベッドをねじ込んだ形になる。
ベッドってねじ込めるんだぁと新しい発見だった。


実際にやってみたらベッドは、お気に入りになっているようだ。
あれだけ拒否していたベッドなのに・・・
前からそのベッドに寝ていたかのように馴染んでそこにちょこんと寝ているとと助さんを見ると微笑ましかった。

断捨離からは、遠いところにいるとと助さんだけど、ほんのちょっとずつ私たちのことも受け入れてくれながら、それでも譲らないところは譲らない。
きっと最後までこうなんだろう。
それはそれでカッコいい。

私たちは、とと助さんのそんなところも全部好きだぁ。
部屋とサルマタと彼・・・。

人のこだわりに出会えることは、自分の世界の枠を柔軟に変えてくれたり、取っ払ってくれることになるのかもしれない。

とと助さんは、ただの頑固者ではなく、そのこだわりを慈しんでいるところが魅力なのだと思う。
シミややぶれを慈しむ人にはなかなかこの先も出会えないはずだ。
こだわりにも色々あると思う。


それがエゴから来るものなのかから来るものなのか・・・。
きっと愛からくるこだわりを私はいいなぁと思っているのだと思う。
私は、多くの事柄をこの2つのどちらかで瞬時に判断していると思っている。

誰かのこだわりを知ることは、誰かが愛しているものを知ることでもある。

訪問看護とnoteは、それを覗きに行きやすい場所だから2つとも居心地がいいのかもしれないなぁと思った土曜日。

あなたのこだわりも覗きに行かせてください💕


あ、このタイトルをつけてみたもののそもそも若い人達は『部屋とTシャツと私』♪と言う曲すら知らないのか、と今頃気が付きました(笑)

そういう曲があったんですよ。中々いい曲ですよ。


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