ダイバーシティの光と影

組織が大きくなればなるほど、働く人も多様になるので、仕事の裏にあるそれぞれの想いは本当にまちまちであって価値観の共有は難しくなる。

- 何よりプライベートを重視で割り当てられた必要最低限の自分の仕事のみだけしたい人
- だらだら仕事をして残業代をひたすら多く稼ぎたい人
- 周囲を蹴落としてでも、他の誰よりも早く出世したい人
- 自分単独でひたすら黙々と仕事したい人
- 自分が動くのではなくて、たくさんの人を自分の下に従えて業務を動かしたい人
- よりよいアウトプットをただ提供したい人(そのためには仕事にかける時間は惜しまない人)
- 意見主張は何もなく周囲と温和に和気藹々と仲良く過ごしたいだけの人

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挙げれば、きりがない。

 組織が大きくなり、多様性に富んだ人を入れようとすればするほど、色々な事情で多種多様な人が集まり、みんなが同じ方向を向くことがほぼ不可能になる。ダイバーシティ/インクルージョンでは、婚姻ステータス、国籍、人種、性別、性的指向、障がいの有無、年齢、職歴、学歴、様々な人を受け入れることを是としているが当然ながらそれらは"属性"であって、その"属性"の裏には、それぞれ異なる事情と思想があるため、仕事への向き合い方も大きく変わる。

 様々な事情を互いに認め合うことが当然とされ、ダイバーシティ/インクルージョンによって、表面的な相互の寛容性はもたらされる一方で、企業という営利団体における、サービス・プロダクトセントリックやクライアントセントリックな思想を誰しもが統一的に必ず持ち合わせるということはほぼ不可能になった。
 「よりよいものを作ろう、よりよいものを提供しよう!」という当然でしょ?と思うことについても、「それは時間はかかるから、それよりも効率性重視しよう!」という人が必ず一定層存在する。
 当然、業務上、手を抜く箇所(効率重視部分)や品質を重視する箇所(時間をかける部分)のバランスが重要であり、仕事内容とその時の状況によって変化するのは当然であるが、皆が同じ方向を向けていない中での意思決定は、些末なことであっても常に時間がかかる。

 よく大企業は意思決定プロセスが遅いと言われ、その原因は企業体質が古い、電子化が進んでいない、縦割り組織、部署間の非連携が顕著等言われるが、それだけではないと思う。
 大企業だからこそコンプライアンス意識、対外的アピール、企業ブランド向上、人材採用の観点からダイバーシティを謳わないといけない状況や外圧は強く、それにより多様な人材・多様な働き方を推進せざるを得ない状況もある。ただ、それによって得た民主性と寛容性を引き換えに、半ば強制的な統一思想に基づくことで実現していた効率性、合理性、推進力は失ってしまった気もする。

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