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「Tenor」 音楽と生活の隔たりをなくすとは…


酷暑極まりないですね。
みなさんこんな暑さの中、毎日のご出勤、ご勉励本当にご苦労様です。
ぜひ健康にお気をつけてこの夏をお過ごしください。
今回は邦題「テノール! 人生はハーモニー」原題「Tenor」を見てきたのでその話をばしたいと思います。


あらすじ

パリ郊外。昼はスシデリバリーや会計の勉強などに精を出し、夜は地元でラップバトルに興じる青年、アントワーヌ(MB14)。そんな彼がひょんなことから、オペラ座・ガルニエ宮へとデリバリーを運ぶ最中、ラップとはかけ離れた世界…オペラの歌声を目の当たりにする。
オペラ生徒にバカにされ、思わず歌マネをすると、とんでもない美声&高音でその場の全員を驚かせてしまう。その場に居合わせたベテラン歌手のマリーはその才能に惚れ込み、彼をオペラの世界に導こうとするがー。

滅多に買わないパンフまで買ってしまった(ミーガンのファイルも発見!)

音楽と生活環境について

まずはこの映画の背景というか設定について考えてみたいと思う。
みなさんはHipHopやオペラについて、どんな人がそのカルチャーに触れ合っているか一度振り返ってみましょう。
うん、振り返りましたね?
HipHopの方はどうでしょう。
なんかダボッとしたパーカー着て?ナイキのでかいスニーカー履いて?バスケのツバのでかいキャップかぶって?首から金メッキのネックレスかけて?
んでDJがタンテ擦ってスクラッチして?ラッパーが書き溜めたリリック解放して?
アナタ、相当古い時代のHipHopをイメージしましたね…
はい、かく言う私もそうです。
普段HipHop聴かないので…
もう今スクラッチする人少ないらしいっすよ…知らんけど
映画のDJだってPCとTRAKTORコントロールすよ。
これわかんないおじさんは自分で調べてね。

で、オペラはというと、どでかいコンサートホールに、ジャケットやタキシードとかドレスとか着たいかにも上流階級ぽい人がお客として来てて、ゴツい舞台設備に本場モンの生オーケストラ、高尚な舞台演目で観客を魅了する…
そんなイメージではないですか?

うん、確かにそうかもしれない。
音楽と生活レベルや環境には多少なりとも関わりが出てくる。
給料?生活地域?仲間?
HipHopはアングラでクラブでヤクが回ってる?映画の見過ぎですよw

確かにこの映画では、主人公アントワーヌが住むのは郊外のいかにも団地というエリア。「最強のふたり」でもドリスはそんな所に住んでいた。
犯罪の匂いもするかもしれない。実際、アントワーヌの兄貴は闇ボクシングでカネを稼いでいる。
そこでアントワーヌは地元(オーギュスト?地区)の代表としてラップバトルでピカソ地区の人間と抗争を繰り広げている。

ちょっと待てラップでシマ争いてなんだ!!?
あれか?不良のシマ争いみたいなもんなんか?
世界おそるべし…

変わってオペラ愛好家というか、クラシック音楽に関わりがある人はどんな生活をしているかというと、実際極端に低階層な人は少ないのかもしれない。
筆者も身の程をわきまえず音楽専攻の大学に入学した当初は周りとのギャップに最初はカルチャーショックを受けたものである。
まあクラシック音楽好きの中にもHipHop好きな人も必ずいると思うし、私もHipHopとまではいかないがHOUSE愛好家であるし、学生時代や職歴の経験から声楽やクラシック音楽にも一定の造詣がある。

何が言いたかったのかというと、この映画の世界観では、HipHopとオペラの間には、生活環境などの要因で、大きな隔たりがあるということである。
実際アントワーヌは、オペラの練習をしたいということを周りの人間には「ほぼ誰にも」言い出せずにいた。

女声教師と男子諸君について

ちゃんと漢字見てね。女性じゃないよ。
この映画のシチュエーションは完全に筆者とかぶっている。
音楽に無学な若者♂、そしてベテラン声楽家の女性。
筆者のことを話そう。
筆者は合唱をやりたくて高校へ進学し、歌を歌ってみたいから音楽の専攻のある大学を受験しようと決意した。
しかし高校一年生のこの時点で、
ピアノ経験なし
楽譜が読めない

という大谷選手も驚きのルーキーっぷりであった。
そして迎えた高二の春。
挑戦するチャンスをくれた両親に感謝しつつ、紹介された声楽の先生に会いに行った。
一目でわかるバリバリのキャリア音楽家といった出立ちでまず圧倒された。何百回と弾いているであろうコンコーネ50番を軽々と弾きこなし、オレが楽譜が読めないことがすぐにバレ、それでも気長に私の成長を見守ってくれている先生には頭が下がるばかりだった。
楽譜の読み方も一から教えてくれた。
同時にヤマハで習い始めたピアノの面倒も見てくれた。

家からレッスン場へは自転車で40分ぐらいだった。
若いからね。楽勝だった。
何人もいるレッスン生の中でも特に音楽経験が浅く、手がかかる生徒だったとマジで思っていたが、厳しい中にも期待感や優しさを実感していた。
先生のおかげでなんとかものになり、楽譜も読めるようになった。
自分はバリトンなので、移調楽譜も何枚も書いた(このおかげで12調を全てマスターできた)。
奇跡の大学一発合格もできた(センターはマジでやばかった)。
筆者はその後教員として就職し、子どもたちと音楽を通して遊んで…ときちんと子どもたちが楽しんでくれていたら本望だが。
やばいこんなことを振り返っていたら泣きそう。
やはりあまり自分語りをするのはよくない。

映画の話に戻そう。
教師のマリーはアントワーヌに可能性を見出し、オペラ歌手育成の特別コースに無理矢理ねじ込むという荒技までやってのけた。
日本で言ったら…高二のオレを東京芸大の声楽科にいきなり入れるみたいな感じかな。
それだけの期待をもっていたのである。
実際アントワーヌはメキメキ才能を開花し始めるのだが。

おっさん声楽家と若い女の子の組み合わせはいやらしくて見てられないし、男ー男もあまり想像ができない(高校の先生嘘ですごめんなさい)。
ベテラン女性と若い男というペアはいろんな意味で理にかなっているのかもしれない。
教員時代もずいぶんベテラン先生にはお世話になった。
男は基本的に甘えたい生き物なので、世の酸いも甘いも知り尽くしている女性からしたら、非常に扱いやすい存在なのだと今では実感する。

ラストで大号泣

今日はネタバレはしません。
ただ、本映画の題材である、生活と音楽の垣根。
そんなものを乗り越えようとするとき、大きな感動が生まれるのではなかろうか。
(とラストで両目から涙を流した筆者は語る)

MB14

この映画で俳優デビューを果たしたヒューマンビートボクサーのMB14。
実際筆者は月曜まで知らなかった。
でもこの映画を通して、彼が今までどう生きてきたのかが全部わかった気がする。
それぐらいのインパクトを残す映画だった。
もちろんビートボックスも世界大会で優勝するほどの実力で超うまい。
そしてあの突き抜ける高音での鳴り。
天は彼にいくつの才を与えたのかー
ずるいよ、MB。
またすぐにこの映画を見たいし、君の最新作も楽しみにしてる。

邦題と原題

映画がとても素晴らしかったので、邦題に文句言わせて。
なんだ「人生はハーモニー」て!?
ハーモニーだから何?音が重なるってこと?
人生経験いろいろ積めってこと?
オレの大好きな「最強のふたり」だって原題全然違うからね?
原題「Intouchables」
なんかねえ、邦題ってむちゃくちゃだなって思うことがよくある。

私を知っている人に読んでほしい

最後に。人生のこのタイミングでこんな自分の境遇と相重なった作品に出会えてよかったと思っています。
できれば私を知っている人に読んでほしい。
私のこれからというと、簡潔に言えば音楽を作っていきます。
ポップス、HOUSE、その辺りがまず中心です。
そのための準備を…ということで和声(コード)の基礎からさらっている所です。学生時代にサボったせいで本当にわからない。
ただ楽しいのでね。がんばってやっていきたいと思う。
あの「赤い屋根の家」がこんな複雑にコード進行するのか!
なんてね。いろいろな発見もあるので。
まずは久々に始めたDEEP HOUSEのmixを作っています。
自分の性格にとても合った音楽で今でも大好きです。
自分は声楽の後にクラブミュージックに出会ったので、アントワーヌとは反対かも。

それでは、またお会いしましょいう。

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