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hazi-sarashi【エッセイ】

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このエッセイ集は、僕がこの世界に確かに存在していたことを証明する。
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2021年3月の記事一覧

「少女」のように不確かな輪郭で

「少女」のように不確かな輪郭で

夜の街を歩いてみれば、過ぎゆく人たちの輪郭はぼやけている。

孤独を紛らわすかのように身体を寄せ合う。

そう。いつだって曖昧な輪郭を補い合うように。溶け合うように。

孤独や不安、焦燥感のなかで、僕らは自己存在の不確かさを感じずにはいられない。

複雑な因子が雑然と絡み合うこの世界で、もはや僕らは内と外の区別すらつかない。

芸術家イケムラレイコの言葉を借りるとするならば、「少女性」とでも言えよ

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恋ってやつは、どうやら合理性に欠けているらしい

恋ってやつは、どうやら合理性に欠けているらしい

離れているのに彼のことを考えたり、

彼女への贈り物を何時間も迷ったり、

恋ってやつは、どうやら合理性に欠けているらしい

その類の感情に見舞われると、損得勘定なしに僕らは走り出してしまう。

なんて愛らしい生き物なんだ

いっときの感情で、合理性とは無縁の行動を取る。

けれど、これこそが人間を人間たらしめている所以ではなかろうか。

殺伐として資本主義社会に燦然と輝く、

瑞々しいヒューマニ

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優しさは地球を循環するエネルギーのように

優しさは地球を循環するエネルギーのように

君の思いつきでホットケーキの素を買いにスーパーへ行ったのは、夕方の3時ごろだった。

2人は下北沢に借りたアパート戻ってくるとすぐに、レジ袋を開けて調理に取り掛かった。

普段から料理をあまりしない僕たちは、あまり上手に焼けなかったが、2枚目に作った方は意外と綺麗に膨らんだ。

1枚目は割とぺたんこで少し焦げてしまったのに比べて、2枚目は綺麗な狐色に焼き上がっていたんだ。

君は何も言わずにそちら

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野性のすすめ

野性のすすめ

仰々しく歴史に名を馳せる文豪たちは、射精時にも高尚なことに頭を悩ませていたのだろうか。

おそらく、答えは否だろう。

僕らがどんなにご立派な理論をこねくり回したところで、所詮は自己保存の手段に過ぎないはず。

自己のカタルシスに過ぎないはずなんだ。

虚無がどうだとか、
実存主義がどうだとか、
愛がなんだ、
罪がなんだ、
至高の美しさとはなんだとか…(以下省略)

たとえ、どんなに世の高尚な悩み

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文字にすると失われる「崇高さ」

文字にすると失われる「崇高さ」

秋の終わり頃。夕暮れ時の下北沢で写真撮ってたら、

狭い路地で男女が肩を擦り合わせながらタバコを吸っていた。

「俺たちの人生も文字に起こせば美しくなるのかな」

みたいなことを言ってるのが聞こえた。

多分、文字は現実を美化するかもしれないけど、

文字にすることで失われる「崇高さ」みたいなものもあると思った。

全てのものは、きっと美し過ぎてはいけなくて、少し汚れていた方が長持ちし

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