【140字/空想】優雅なる月光の誘惑
積んでいた本がすべて
黒い蝶になって飛び去った後、
僕は一人テラスに出た。
満月を映して輝く湖。
置いていかれたな。
そう呟けばくすくすと笑い声が聞こえる。
小さな影たちなど必要ないでしょ?
途端、視界いっぱいに煌めく水面。
さあ。
蝶よりも軽やかなるは月の貴婦人。
その白き腕が優雅に差し出された。
起承転結。
長い文章では大事になってくるし、
それがあれば納得がいくけれど、
時々投げっぱなしの美しさに惹かれる。
意味などなくていい。
ぽつんとある情景の美しさ。
交わされてすぐ消えてしまう会話。
余韻みたいな感覚に支配される喜び。
ただそれだけ。
140字のファンタジーには
そんな夢を詰め込みたい。
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