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【詩】道について話そうか

一本道だから迷わない?
それはずいぶんな説明だったね。

ウサギは何度も首を横に振った。

それがどこを通っているか、
そこで何に出くわすか、
それこそが大事なことなのに。

私は小さく首を傾げた。

行くか戻るか、
それるか留まるか、
一本道なんていうのはね、
大いに迷って悩むばかりだよ。
これでもかの脇道だらけの方が
ずっと気軽で健全だ。
それで君はどうしたのさ。
迷わず来られたのかい?

私はこっくりうなずいた。
ウサギは大きな瞳をクリクリさせた。

これは驚いた。
迷わない人がいるなんて。

私は彼を見上げて微笑んだ。

欲しいものしか見えないんです。
ただ向かっていくだけなんです。
道がいくつあっても同じ、
ただ進むだけ。
果たして一本道をまっすぐ来たのか、
それとも知らずに他の道を通ってきたのか、
本当のところ私にもわかりません。

ようやくウサギが笑ってくれた。

そんな生き方もあるのだね。
そんなこと思いもしなかったよ。
だけど素敵な生き方だ。
幸せで喜びに満ちている。
生きているんだと感じさせてくれるね。

私たちは一緒に熱いお茶を飲んだ。
薔薇のアーチの向こうに広がる世界には
道など一つも見えなかった。

目の前の道がどんな道なのか。
それはその人が自分で作って
自分でそう名付けるのだ。

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