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47. ポジティブ心理学の基本

明けましておめでとうございます。
皆さまはどんな新年をお過ごしになったでしょうか。

皆さまにとって2023年が良い年になることをお祈りして、今年最初の投稿のテーマにポジティブ心理学を選んでみました。

〇ポジティブ心理学とは?
ポジティブ心理学という言葉が社会にも浸透してきたのは、ここ最近5年程のことでしょうか。学問的にもポジティブ心理学は比較的新しい学問領域で、1998年にセリグマンらによって提唱された概念です。

ポジティブ心理学とは、人間、グループ、あるいは組織の機能を最適化し高める条件と過程を科学する学問だと言われています。

かつての心理学は、どのようにして人間のメンタルをマイナスの状態から改善させることができるか、といった視点での研究が主流でした。例えば、臨床心理学などの研究においても、精神疾患の治療の観点から大きく発展を遂げています。

セリグマンは、「人生をより豊かにする心理学」を追及することの必要性を訴え、それまでの心理学のトレンドに一石を投じたのです。

従来の心理学では-8から0の状態へ促す視点だったのに対し、ポジティブ心理学では如何に0から+8の状態へ促すことができるか、という視点に立ちます。

前回の記事でもご紹介した「コーチング」がその役割として、クライアントのwell-beingを高める、学びの機会としての機能を持つことを鑑みると、コーチングとポジティブ心理学は深い関連があるものだと言えるでしょう。

〇なぜ今、ポジティブ心理学なのか?
そもそも、なぜ人間のポジティブな側面についての研究は遅れていたのでしょうか。これには大きく3つの背景があるという考察があります。

第一に、人間が持つ「同情」の気持ちです。私たちの多くは直感的に、いま元気な人よりも、いま困っている人を助けなければ、という感情を持ちます。このような人間の本来的な感情があるからこそ、精神疾患やメンタル不調で困っている人々をどう改善できるか、という視点での研究が心理学においても先行したと考えられます。

第二に、第二次世界大戦以降、政府など研究資金を提供する機関が軒並み、PTSDなどに悩む元兵士の救済に役立つ心理学の研究に積極的に資金を出したことが挙げられます。

第三に、人間はその心理メカニズムから、ポジティブな感情よりもネガティブな感情により強く反応するからです。ある研究によると、ネガティブな経験の方がポジティブな経験よりもより強いインパクトを残し、脳内でもより綿密に処理されることが分かっています。

〇ポジティブ心理学の研究対象とこれから
ポジティブ心理学の研究対象は大きく3つのレイヤーに分かれます。

1.主観的体験
人間が幸福を感じる経験と、それにより引き起こされる幸福感や充実感などの感情に関する研究。

2.個人の特性
強みや美徳など、人間が幸せな人生を送るために必要な特性の研究。

3.ポジティブ組織・社会
個人レベルを超えて、組織レベルで幸福な良い組織、会社、社会をつくるための研究。

ポジティブ心理学において、1と2のレイヤーについては比較的研究が進められているのですが、今後は3の領域での研究にも期待がされています。

本日はポジティブ心理学の概要と歴史のご紹介でしたが、ポジティブ心理学はキャリアコンサルタントの方にとっても興味深い分野の一つなのではと
思いますので、理論の詳細はまた別記事にまとめていきたいと思います。

参考文献:
Gable, S. L., & Haidt, J. (2005) What (and Why) is Positive Psychology? Review of General Psychology 9(2): 103–110. 

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