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人間にはあらゆる娯楽や作品を、その受容を愉しめるだけのリテラシーはもうないのかもしれない。

批評が苦手な人が多い。特に批判が苦手な人が多い。
私は会話やレビューや批評、批判が好きだ。
もちろん、作品以外に対する揶揄や誹謗中傷は死ねばいいと思っている。

ただ、ここ最近インターネットに軽く触れて感じるのは前者と後者の違いはおろか、批評に対するアレルギー反応の様なものが強すぎるあまり、娯楽を享受するだけのリテラシーを失っている人の多さに驚いてしまう。

正直驚きというより落胆に近いもう底抜けの絶望。作品の質はどんどん上がっているのに読み手がそれに追いつかないから表層的な部分でしか掬えていない。

あさましい”感想”が蔓延る。

勿論そうじゃないものも多いし、大衆が皆々バカだと見下すつもりはない、アタシの方がもっと愚かである。

愚かだからそうなるのではなく、一種の批評アレルギー的な反応が悪く出て、はたから見ると愚かしく見えてしまうという問題だと言える。

特に顕著なのが、オタクコミュニティだとおもう。
アタシが思うオタク像って80-90年代の人生の先輩オタクたちの背中を見て育ったので、

『作品に対する情熱を自分が批評だったり、2次創作活動などに精を燃やすアツいオタク」

だったんですけど、そういったオタク価値観がいつの日かおそらく2010年代震災以降くらいから顕著に変わっていったと思っています。

分かりやすい例えが2chでのオタク部屋晒しスレの流行などからも読み取れるとおり、
『その作品にかけた情熱=作品愛ではなく、掛けたお金=作品愛』
といった風に変わっていったような気がします。
「オタクはお金落とすから経済回してて偉い」みたいな言説も10年代以降に聞くようになったような気がします。

そのこと自体は作品にお金をかけることは当然だし、作品といえど資本主義の経済に乗せられた商品である以上間違っている変化だとは思いません。
ただし、このことが功罪として前述の批評に対する耐性のなさ、ひいては人々の(特にオタクという属性の)コミュニケーションの拙さが顕著に現れているように思います。

どういうことかといえばある時期を境にあるいは日本という国の持つ風習だったり風土がそうさせたのかもしれないけど、事なかれ主義が行き過ぎるあまり作品に対する評価をまともに下せなくなっているのではないかというのが私の見解です。
お金をかければ偉いので真っ当ではない誹謗中傷じみた批判でさえまかり通ってしまうし、反対にいい作品を褒め合う場で好きだからこそここはこうが良かったみたいな真っ当な批判が好きなもの同士で集まってるのにしらける事を言うなという雰囲気によって言えない状況がわりと最近のオタクにはあると思っています。

現に私はもう、だるいんで名前は上げませんが、好きなアニソンタイアップをよくやる音楽グループの曲で概ね好きだけど、ある部分はありきたりなフレーズ(具体的に似ている曲をあげて)であるしそのうえでかっこよくないから嫌いと言うような批判をしたら、めっちゃ叩かれました(笑)信者だるいw

一昔前はそういう盲信的なオタクは信者と揶揄(おそらくオウムの時代と地続きになっていてそれが批判的な揶揄として機能していた)されていたけども、信者とはもっぱら最近ではその作品ないし作家を愛してる人というニュアンスの言葉ぐらいに揶揄レベルが下がってる。
多分オウム世代じゃないガキが大人になり、オタクになりつつあるというのもある。
俺だってそう、オウムの事件があった年に生まれたから、当時の事は対して覚えていない。
作品に対してたとえ建設的な批評であっても受け入れない盲信的な信者という言葉はもっぱら”推し”とかそういうフワッとした言葉にも置き換わっている。
勿論好きなものを好きだ、という気持ちを推し進めることは全く悪い子とだとは思わない。
しかしそういった批判ないし批評アレルギーによって大多数の人間は作品を享受するための感想を言語化する語彙であったり、
(※”語彙力喪失”とかいう絵への”褒め言葉”が流行ってしまう始末。人類編み出したありとあらゆる語彙や教養が知性の劣化に負けた歴史的瞬間ともいえる。)
批判的な感想やレビュー批評を受け入れたうえで、別の視点で改めて作品を楽しむ心の広さだったり遊び心みたいなものが一切なくなっているような気がする。

思いつきで文を書き始めたのでまとまらないんですけど、とにかくここ最近ねっとをたまに見る(なるべく見ないようにしている)んだけど、感じた事といえばマジでお客様は神様的な態度で作品に対して自分の知識や体力を使って咀嚼しようという姿勢ないしその姿勢を持つための体力でさえ”最近の人々”にはないように思えた。
それは批評に対する耐性のなさ、だったり他の作品生まれる速度がテクノロジーの進歩で飛躍してたり、広まる速度もネットで爆速になってたり、そういったアホの声も広まりやすくなって可視化されただけって見方もできるけど、あまりにも目に余るのでここでささやかながらまとまらない思いをつづってみました。

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