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しとしとの問診票に、どうか。

薄暗い背景の中にぼうとお墓が浮かび上がりました。それが消えなかったのです。そんなことより、僕が怖がらずそれに何も思わず、呆然とただただ眺めている姿が不気味でたまりませんでした。

忘れられた子供はいつ笑えばいいのですか?

だれに頭を撫でてもらえばいいのでしょうか。

どんな価値のある評価でもただの紙切れに変わってしまうのです。赤い丸の華が咲かせられるのは、涙がまるでないピアノの片割れでした。薬指の落ちた指、骨格の未熟児をあざ笑うのです。

ゲラゲラと洞窟の中で音が響きました。耳をふさいでも、腕に赤い糸が絡まって内耳の過不足が責めるのです。耐え方の味は生まれたときに、才能として授けられました。それを宿命と察して、叶わない夢を彩りながら鉛筆で僕にぼくが丸をつけてあげます。

哀しいと言えばそんなことになるのですが、あの墓の血が僕を責めきることができなかったのです。それは天に帰るという冒涜を決めたからでした。

未成年の殻はかぶったままで大人になれず、大人の粘液をひっつけたまま子供から大きくなりませんでした。

産まれたこの地で生きると決められず、蝙蝠のようにうつろいを楽しみました。柵の鋼鉄はなににもなれないから掴めないのです。麦わら帽子が風を切るんですよ、ゆりかごの中を覗いたことがありますか?

幸せの渋滞を眺めながら咳ばらいをする祖母が、祖父の遺影にキスを落とします。還りの命がまたここに届くとき誰かが居なくなる虚しさが、痛いほど分かるんですよ。

僕の小心者は貝殻の撫で方が上手くいかないように、猫の逆毛が面白おかしくとがりました。

洞窟の奥で僕は拷問されるのです。

中身の抉りの快楽を、気持ち悪いと裂きました。

「汚さの上辺が他人の善意を上回ります。」

「敬礼の地蔵にお菓子をあげました(ただ刻まれるだけの金魚陶)」

紅い涎掛けがひたひたと雫を垂らしました。描かれるのです、4本の手が偽りのない微笑みを。嫌いになりたくないと、老いた背を踏みつけました。ののしる相手を探した日本語が、脳みそを激しく叩くのです。

庭の先の花壇は手入れをされなくなりました。誰も悪くなかったのです、最後は取る手もありませんでしたが。

言い訳とは言葉になり切れなかった、奇形児と同類です。まるでなにも得られず、僕はあの頃と同じ映画に手を合わせるのでした。

ねぇ、苦しかったんですよ!ご存知でしょうか!!

(大好きなあなた?)

いまさらになって!くどいだろ、!返せよ、私たちの命より崇高な時間を!

(大好きなあなた!)

もう少しいびつを直せる時間があったなら、僕らは取り残されなかったのかもしれません。どうしてか死にきれず、そんなことも人のせいにできなかったのではいですか。

まるまると太った豚と犬と、鳥だって、僕と同じ部屋に最初から住んでいました。小屋の糞尿はバケツの色を不愉快にさせます。涙でいっぱいにしてすべて流したら、天の川より綺麗になると信じていました。


(人を許すことと赦せないこと、

今でも信じているのですよ、僕は大好きです。

好きなんですよ、恨みっこなしで、もう、いいと思いました。

どちらも正しくないし間違ってもない)


正義も本当も、真実だって、正解も、0だって100だって、なにを好きになろうが嫌いになろうが、僕が決めてよかったのです。そんな本当のことが、顕微鏡の奥にそっと書かれていました。

見過ごしていたのです、プレパラートの黒髪が僕の眼鏡を嫌うから。同族嫌悪だったのです、蛙の井戸は疑いもせず穏やかだと決めつけていました。

なんら変わりの無いことに痣をつけるより、強く生きてほしいとあなたの身体を見て思いました。

似ている中身の模様がどうしても眉毛を増やしましたから。届かない爪が延びるほどに爪痕が深くなるのです。もうたくさんでした、高温のお湯がかかるたびに絆創膏の臭いが鼻につくのも、血豆の引き剝がしも、無理やりろっ骨をとられる息苦しさも、体内へのホルマリン注射も。

僕の疲弊はかならず過激な愛情でした。

さらなる割れ目がほつれを無理やりの針が、開示しろと心を突き破るその音で、目を見開きます。屈辱の視線が、ずうと名を覚えているのです。

(その涙が、忘れられない過去を運んできました。)

憎しみの忘れ方をお教えくださいませよ、知っているだろ主人さま。

だっていろいろな戦場を渡り歩いてきたと伺っておりますわ。

「僕だって、僕だって、って。なんて惨たらしいのだ。」

怖い人造人間が追いかけてくるのです。校内放送で狐の音楽がかかり、よいもですかと説いてきました。その雑音に覆いかぶさるように、醜い怪物が僕に花束をよこすのです。

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研究室におりました。

きづくといつもきまって、白衣の男性に点滴を打たれているのです。

「悪い夢は受け入れられましたか?」

「大丈夫ですか。安心です。」

「幸せになるための、粗治療です。ごめんね、許して。」

(ぜんぶ君のためだ。僕らは悪い奴だから、これでいいんだ。)

そこで見たお医者さまは、綺麗な笑顔でぼくに心を作ってくれたのです。

綺麗で美しくて、目を覚ますといつも硝子の白鳥が咲いていました。

その曇りのない目でさえも、ぼくに許し方を伝えてくれないのです。おいしゃさまの最後のお薬の味が、まだなれませんでした。

とろけてしんみりしたら、分かるのでしょうか。

(なんだか疲れてしまったのです、先生。)

サポートありがとうございます。 これからも楽しく続けていきたいです(''ω'')