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【アーカイブ2020】吹奏楽のないスタンド~滋賀大会・夏跡の便り②近江

「目立ってナンボ」に「お客さん第一主義」。芸能界の鉄則のような、近江高校吹奏楽部・樋口心教諭の言葉。2018年のセンバツから野球の応援曲をオール洋楽にリニューアルしたのは野球ファンには有名だが、オリジナリティもルールもない「典型的な応援」を変えた背景には、海外公演にも取り組む革命的な部の方針があった。

今年の高校野球ではスタンドの応援を聞くことができない。打球音や捕球音も確かに重要だが、アマチュア取材が中心の立場からするとスタンド応援がないのは寂しい。吹奏楽もマーチングも大会が中止になる中で、取材ではFIRE BALLの演奏依頼に応えていただいた。

近江の場合は選曲の秀逸さ以上に、リニューアルを吹奏楽部側から提案したことに意義がある。中澤ことみ部長も1・2年での甲子園応援を通して「何万人と一体になった」と観客の期待を肌で感じたと言う。センバツ開催をめぐり大会開催の意義も議論されたが、甲子園を野球部以外も望んでいることの証だと信じたい。

無観客の今年、インターハイがなかった今年、甲子園がなかった今年、これほど「高校野球とは何か」を考えさせられたことはない。「新しい生活様式」の高校野球に、吹奏楽の応援が含まれていることをただ願う。【2020年7月29日掲載】

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