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*DAY6 心は晴れる / 1月19日(Sun) ---3

羽田までは12時間ほど。機内の席はほとんど埋まっていて、行きのようにゆったり快適にとは行かなかった。でもまぁ、行きよりも1時間くらい時間が短いし。帰るときは「あとは帰るだけ」なので、行きよりも気持ちが安定している。

しかしここで、イヤホン問題が……。
行きのときに機内でもらったイヤホンは、耳にフィットはしなかったけど大丈夫なレベルであった。帰りも同じ感じかなと思っていたところ、予想外の悲しみがきたのである。
まさかの、片耳からしか聞こえない仕様……!電撃が走るほどのショック。

イヤホン自体の差し込むところは2つあるのに、機械には差し込む穴が1つしかないから、片耳しか聞こえないのである。
私は普段Bluetoothのものを使っているので、差し込む式のイヤホンを持っていなかった。前回のヘルシンキ旅では、たまたま前に使っていた有線のイヤホンを持っていて、それを差したことをうっすら思い出した。
行く前に一瞬思い出したのに、「まぁ、機内でもらえるか」と楽観的に考えたあのときの自分を悔やむ。これだけショックを受けるのに、どうして私、持ってこなかったんだろうね。長い時間片耳からしか聞こえないのは、思った以上に違和感だった。
飛行機、どうしてこの交わらないイヤホンの仕様になってしまったの……。

mamiさんに「片耳しか聞こえない……」と話すと、「なんか前どっかの飛行機乗ったときも、そういう仕様だったよ」と言われた。ズガーン。そんなことって……。
ちなみにmamiさんは自分のイヤホンを持っていました。うらやましいーー‼︎

まぁもう仕方がないので、これで映画を見るしかない。この学びを次回の旅では絶対に生かすと誓った。

片耳しか聞こえないことを逆手に取り、ホラー映画の「クワイエット・プレイス」を見ることにした。この作品は私が好きな子役のノア・ジュプくんが出ていて、その子が見たいがために劇場公開時も見ようか考えた。だけど普段ホラーやスリラーは見ないので、映画館の大きいスクリーンでなんて絶対見られないし、家で一人でも絶対見られない。ホラーが得意な人が周りにいるわけでもなく、これはもう一生見れないな、と思っていた。

でも飛行機でなら、環境も明るく画面も小さくて、人が周りにたくさんいる。その上イヤホンは片耳からしか聞こえない。
これほど見やすい環境は他にないかも!と意を決して見ることにした。

ホラーに免疫のない人間には、序盤から「ああもう無理」というシーンの連続。でもせっかくのチャンスなのだからと見続けて、途中何ヶ所か見られないところはあったけど、そのシーンでは目を閉じてどうにか乗り切った。

お姉ちゃん役を演じていたミリセント・シモンズも、「ワンダーストラック」を見てから気になるなぁと思っていた女の子だったので、キャスト的には良かった。でも、やっぱり見終わると気分がげっそり、すごく疲れた。機内が暗くなる「おやすみタイム」にならないうちに見終わったことだけが救い。あの照明になっちゃったらホラーはきつい。


次からはハッピーな作品にしよう、と後の時間は「クレイジー・リッチ!」「SUNNY 強い気持ち・強い愛」を観賞。
クレイジー・リッチ!、期待通りの華やかさとテンポの良さで面白かった。ホラーを見てしまったあとの気持ちが晴れた。

機内食は乗ってすぐと、降りる少し前に朝食も出たが、これだけ食べるとさすがにちょっと限界。朝食は少しだけ食べ、あとは下げてもらった。残すのは自分的にはめずらしい。
正直朝食のサンドイッチはどんな味か知りたいがために食べたと思う。おいしいけど、なんかもっとさっぱりしたもの、出汁とかが飲みたい……と思った。もったりしたものを摂取しすぎた気がする。

胃がいっぱいだからか、なんだかぐったり。立ちたいし、早く外の空気が吸いたいなぁ。一度立ち上がってお手洗いまでの短い距離を歩いた。もう何回か往復したいとも思ったが、機内は限りある空間だし、一呼吸して一往復で席に戻った。
人より食べられるとはいえ、体はそんなに丈夫ではない。自制心をしっかり持っていかなければならない、と感じた。着陸するまで、ひたすら無になって過ごした。


帰りも定刻通り、安全なフライトで日本に到着。
日本時刻で昼間の11時、飛行機を降りると晴れた東京の空が見えた。
綺麗な空港、伝わる言語。はー、やっぱり母国、最高だ。胃の負担はまだ残っていたけれど、安心感で心なしか楽になった。

体が感じる気温や湿度に安心するのがわかる。預けた荷物をレーンの前で待つ間、自分が育ってきた環境ってこういうことだな、と思った。体が慣れているって実感する。最後の不安要素であるキャリーケースも、2人とも何事もなく無事に届いた。

荷物を待っている間の待ち時間が長く、あれだけ重かった胃の中も消化された。嘘のような本当の話。
出汁がきいたものが食べたい。

空港内のマップを見ると、つるとんたんのお店があるとわかってmamiさんと一緒に直行することにした。天ぷらと温かいつるとんたん。待ちわびた出汁の味。
日本の味って、やっぱりめちゃくちゃおいしい。天ぷらを塩で食べるのがおいしすぎて、今ここにつるとんたんのお店があってくれて良かった、と心から思った。温かいじんわりとしたおいしさが体に染み渡る。

そして温かいお茶。家に帰るまでの活力が湧いた。


バスに乗るmamiさんと別れ、私は電車で帰路についた。
何事もなかったみたいに、何かを調べることもなく電車に乗って帰ることができる。また日常に戻ってきたなぁ。東京の方がやっぱりちょっと寒いな。

晴れた空を見ながら、重たいキャリーケースを転がして家へと帰った。
最寄りの駅、いつも歩く道。
一週間では何も変わるはずのない景色に、ふっと心が軽くなるのを感じた。



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