本日の読書
「男の秘図」(上中下巻)池波正太郎(著)
このところ、実家で母の看病をする時間が増えており、
この長編も、自宅と実家とで半々くらいの割合で読んだ。
再読であるし、元来、こういう読み方になった場合、
途中断念する書物が多いが、この本は読み応え十分で
最後まで通読した。
「秘図」とあるから、何やから艶めいた作品かに見えるが、
そうではなく、とある2千数百石の旗本の一生を描いた
作品だ。謹厳実直、家来たちからも尊敬され
武術にも秀でた主人公だが、ひょっとしたことから
昔、睦みあった女人との行為を、絵に描きたくなる。
その趣味はだんだんと深みにハマってゆき、夜も寝ずに
描きすすめる。
完成した後は、「万が一」のことで自分が死んだ場合、
「秘図」が残されるのはあまりにもみっともないと思い、
焼却処分する。
がしかし、またまた描きたくなり…….
もちろん、この作品はその描写だけで終わるのではなく
旗本としての「仕事ぶり」なども、丁寧に描かれている。
海外ミステリーなど(国内もそうか)最後のどんでん返しや
犯人の意外性を描きたいが為に、途中の物語部分が
冗長になったり、説明的になったりしがちで、
「読んでる間」の楽しさに欠けているものが多い。
その点、時代小説は、前編を通して面白いものが多いし、
特に池波正太郎作品は、そうだと思う。
かなりのオススメ作です!
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