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エンパス気質の子供時代

私は子供のころから動植物と人間との区別が曖昧な、少し変わった子供だった。
植物や動物の言葉が分からない、というのは、自分には理解出来ない外国語を話す人間と全く同じであり、大人がそれらを区別するのがうまく理解できなかったし、大人がスプラッターホラーのような、人間の血が飛び散るものは見るなというのに、樹木が切り倒されるのは平然としているのもあまり理解できなかった。どちらも同じように痛そうに見えるな、と思っていた。ある意味サイコパスである。犯罪的な心理に向かわなくてラッキーであった。

だから、子供のころはいつも動植物に自分を当てはめて考えてみる遊びをよくしていた。HSP気質のせいか、自分と他者の境目が曖昧であり、相手の立場に立って考えるというのはあまり苦労することではなかった。とりあえず、その対象になりきって、そのものの観点から世界を眺めてみる、という空想の遊びである。

アリの行列を何時間も見て、働かなければならない生というものをぼんやり学んだし、庭に咲き誇る花の数々を見て、着飾るということと、それを失うことをぼんやりと学んだ。一日中一緒に遊んだニワトリが、次の日なぜか食卓に上がった日にはよく理解できなかったが、世界はこんなもんなんだ。存在は形を変えて消えゆくのだ、とぼんやり学んだ。何故かとても冷静にそれを受け止めていたのを覚えている。想像したとき、痛いのではないかと感じてしまう刺激に世界があまりに満ち溢れていたため、もうその体験をする頃にはいい意味でも悪い意味でも、痛みに対して麻痺し、達観していた。

今でも、その感覚に関しては同じだ。ゼロか百かでしか対象を扱うことが出来ない。完全に対象の立場に立って、その観点から世界を見て全てを共有するか、痛みに耐えれそうにないな、と思ったら、自分も相手も、とりあえず入ってくる情報を全て遮断して、麻痺状態を意識的に作り出してやり過ごす。時々、この状態は論理的に物を考えるのに役に立ってくれたりする。


Niのひらめきによって、子供ながらに世界というのは、卵のようなものだと思っていた。自己と他者との境目が曖昧であったためであろう。自分は世界中のどんなものにだってなれるし、自分が空想の中でなりきって遊んでいる対象は、たしかに自分であったので、世界全ては自分である、とも思えた。

あの頃思っていた世界の予想図をもう少し詳しく説明すると、卵の殻があり、中にはどろどろの黄身と白身がある。生きているときには人間も、動物も、植物も、卵の中で流動的に形を保ち、黄身であったり白身であったりしながら一つの卵の中の世界に住んでいて、死んだら卵の殻の外に行くのでもう会えなくなるのだ、と思っていた。
動植物と人間の差があまりついていなかったので、人間は白身だろうとか、動植物は黄身だろうとか考えていたわけではなく、もともとの要素はみな同じだが、役割に応じて流動的に存在の形が変わるのだ。と思っていた。

だから、大人になって量子力学の世界を知り、素粒子について学んだとき、割とスンと頭に入ってきた。頭の中にあった黄身と白身のイメージと割と大差なかったので、ああ、なるほど、そういうことだったのかと思った。

最近の量子力学の世界では、エヴェレットの多世界解釈が有力となってきている、ということで、大人となった今では、世界は卵、というよりかは無数のページのある、開かれた本のようなものだと頭に描いている。
子供の頭では、宇宙はあまりに未知数で考えが及ばないものだったので、地球、宇宙、またはこの世、あの世という境目のような感覚で卵の殻を想像したのだと思う。
しかし、実際には宇宙であろうが地球に存在している要素と大して変わらないようであるし、死者はおそらくまた素粒子に戻っていくので、あの世もこの世もないんじゃないかと思う。なんにせよ興味の尽きない話だ。


素粒子を学ぶことによって、全てのものは形成と崩壊を繰り返しながら、循環しているのだと学び、これは仏教の精神と大変相性がいいと気づくのまでにそう時間はかからなかった。
直感的に自分でそう感じてから、ネットでいろいろな方の意見を読んだが、同意見の方が多数いる。おそらくこの直感は信頼してもよい。
諸行無常、色即是空だけではなく、最近は縁の精神についても科学的に説明がつくようで、人類の進歩は知的好奇心を刺激するのに事欠かない。

エヴェレットの提唱する理論では、私たちは素粒子が集まって出来ている存在だが、その素粒子同士が反応を起こす度に量子はもつれて、新しい可能性を生み出し、しかもその可能性はどちらかに収束するのではなく、パラレルワールドとして無数に分岐して存在していく、というのである。(頭が文系のため、理解が及ばないところが多々あることは断っておく。興味のある方はどうぞ、他の方の解説をお読みくださいますように)



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