中小企業がバックアップを行う際の問題点と解決策
中小企業の皆様にとっても、データのバックアップは重要課題だと思います。しかし、大企業と違い、中小企業には大企業にはない困りごとがあるのも確かです。本稿では中小企業ならではの困難を列挙した上で解決策について考えていきたいと思います。
中小企業のバックアップが抱える問題点
コスト
以前お話ししましたが、バックアップを行うのに一番手軽なのはクラウドだと言えると思います。しかしいざ利用する段階になると、中小企業様にとってはなかなかポンと出せる金額ではないものを要求されることも、以前申し上げました。
以前お話ししたのは月額料金の話だけでしたが、イニシャルコストもなかなかかかってくるものです。バックアップシステムの導入、契約金…これらは、一般的には月額利用料金より高いものです。
人材
バックアップに関する専門知識を持つ人員が不足している場合が多いです。以前お話ししたことに則って申し上げますと、例えば従業員500人程度の「大企業」に向かってテイクオフ直前、のような会社様ですと担当者を置くことも可能かも知れません。ですが、従業員10名程度の少数精鋭ですと、直接利益を生み出すわけではないバックアップという作業に専任者を置くのはなかなか厳しいのではないでしょうか。大企業ですと、往々にして窓際で特に仕事もないのに年収2000万というような従業員がいらして、俗にWindows2000なんて呼ばれるそうです。まあ言い方は悪いかも知れませんがバックアップなんていう業務を担当させるにはうってつけですが、中小企業様にはそういう方はなかなかいらっしゃらないでしょう。
時間
中小企業様は往々にして業務をギリギリの時間で業務を回していらっしゃいます。そうなってくると、バックアップを行うために割ける時間がない、という事態は十分考えられるわけです。クラウドバックアップを使ってローカルのデータを同期していれば特にバックアップのためだけの時間を取る必要はありませんが、前々から申し上げておりますとおり、いくらかのインターバルを取りつつ一切の操作をしていない状態でのバックアップ=コールドバックアップまたはオフラインバックアップを取っておいた方が望ましいので、やはり時間を取る必要はあると弊社では考えております。
意識
実はこれは大企業でもなかなか解決しがたい問題なのですが、データの重要性やバックアップの必要性に対する認識が低い場合があります。もっと踏み込んで申し上げますとこれに関しては、従業員の皆様がお互いに何をしているか把握することが難しくない中小企業より、誰が何をしているかよく見えずあまり興味も持たない大企業でも深刻な問題、ということも往々にしてございます。
考慮すべき解決策
クラウドサービスの活用
これも以前にお話をしましたが、クラウドはバックアップを行うためにとても便利なサービスのひとつです。大々的に利用するとクラウドサービスの可用性が最大限発揮されることは確かですが、正直そういうサービスがサポートしている機能を全部余すところなく利用するというのは大企業でもなかなかできないことです。
特に中小企業様では、すべての資料やオフィス環境すべてをバックアップするところまでクラウドに頼る必要はないのではないかと思います。作業を終えて作られた最終生成物を保管しておければそれで十分でしょう。
そうなってくると、クラウドの無料サービス分でも十分な利用価値が出てくるかと思います。
自動バックアップ
タイムスケジュールを設定できる、どちらかと言うと個人や小規模事業者様向けのバックアップソフトが販売されています。値段は数千円から1万円程度です。夜間や週末などを利用してバックアップが可能でしょう。
災害対策
これも何度もお話ししておりますが、遠隔地バックアップを実現する簡易な方法のひとつがクラウドです。残念ながら無料プラン分では本当に重要な最終生成物だけを残すにとどまり、そこに至るまでの資料までは保存することはできないでしょうが、それでもすべて失われるよりははるかに望ましい状態でしょう。
オンプレミスとクラウドの併用
この言葉は始めて出すと思うのですが、クラウドとオンプレミスの両方を使うバックアップ方法がハイブリッドバックアップです。さらにオンプレミスとという言葉が出て来ましたが、プレミス(premises)というのが「建物」「施設」を意味する言葉で、オンプレミス(on the premises)は「建物内で」という意味になります。
つまり自社内でのバックアップを意味する言葉が「オンプレミスバックアップ」というもので、まあわかりやすく言ってしまえば昔ながらのバックアップ方法ということです。
海外では近年「オンプレミス回帰」ということが言われるようになりました。クラウド特有のコストの高さ、予想を下回るパフォーマンス、そうったことからクラウドからオンプレミスに帰ってくる企業・団体が多くなってきたということです。オンプレミスのメリット・デメリットはいずれ稿を改めてお話ししましょう。
バックアップの3-2-1ルール
もうこの言葉は何度出したかわからないレベルですが、要はデータを多重化して、ひとつは遠隔地に置いておくことにより安全性を確保しようということです。
従業員への意識啓発
正直、この意識啓発というのが一番難しいことなんですが、もう考えられる限り以下のふたつを飽かずに定期的に行っていくしかないと思います。
・定期的な研修
バックアップの重要性や手順に関する研修を実施し、従業員の意識を高める。
・マニュアル作成と定期的な見直し
簡単で分かりやすいバックアップマニュアルを作成し、いつでも参照できるようにします。そして、日々の運用や具体的なシチュエーションを想定したシミュレーションによってあぶり出されてくる弱点を埋めていきましょう。
中小企業がバックアップを成功裏に行うためのポイント
定期的な見直し
すぐ上にも書きましたが、データを巡る環境は日々刻々と変化しています。ですのでマニュアルを作成して終わり、ではほとんど意味がありません。担当者は常々業務している環境についてバックアップという観点から見て問題がないかどうかを意識しつつ業務を行い、マニュアルを見直し、改訂していくことが必要です。問題のあぶり出しにはインシデントのシミュレーションや、場合によっては訓練ができればより望ましいかと思われます。
テスト復元
文字どおり、バックアップからの復元テストを行ってみることです。バックアップから作成した模擬環境が、実際の業務に差し支えなく動くかどうか確認してみましょう。
バックアップの復元(リストア)にはそれなりの環境が必要かと思いますが、中小企業様ですと仮想マシンを作成してその上にOSなどのソフトウェアをインストールしてその上でリストアテストを行ってみるというのもひとつの手です。
最新のバックアップを取る
何度も申し上げるようですが、データを巡る環境は日々刻々と変化しています。無料プランで利用できるクラウドでも最終生成物は十分置いておけると思いますので、それらが最新であることを確認して下さい。
最終生成物以外に関してのバックアップはクラウドorオンプレミス両方あり得ると考えていますが、特にオンプレミスの場合には自動でバックアップということが行われないため最新状態を常に意識する必要があります。
定期的な、環境全体のバックアップの他に差分・増分バックアップをより短いインターバルで行うことがバックアップを成功裏に運営するキーとなるでしょう。
BCP策定
これは以前に長々とご説明申し上げたため詳述することはここでは避けますが、必ずしもデータバックアップという意味を持たなくてもBCPを策定しておくことは必ず御社の経営にとって良い方向に働くでしょう。BCPについては以下の記事をご覧いただければ幸いでございます。
事業継続計画の立て方 その1
事業継続計画の立て方 その2
事業継続計画の立て方 その2 の注釈
事業継続計画の立て方 その3
事業継続計画の立て方 その4
弊社がお手伝いできること
弊社は「遠隔地バックアップサービス」をご提供差し上げております。そんな弊社が特に中小企業のついてお手伝いできることは多数あると考えております。
弊社はお預かりしたバックアップをオフラインで保存し、トラブルがあったときに使用不可能となった御社のストレージの代替としてすぐに使用できるようにお預かりしたディスクを整えております。
クラウドバックアップのような可用性・利便性はございませんが、災害でオフィスが丸ごと使用不可能となった、というような最悪の事態に陥っても代替のPC本体他のハードウェアさえ用意できれば仮設環境で事業継続できるように迅速に対応させていただきます。御社の情報セキュリティの強化・向上にお役に立ていただけるかと思います。ディザスタリカバリは極めて短時間で行えます。
巨大企業でないとフル活用できないようなクラウドサービスよりコストも抑えさせていただいております。また、御社で「バックアップにとても詳しい専任者」を設けていただく必要はございません。必要が出てまいりましたら電話・メール・Webミーティングなど様々なご相談を承ります。
上記のとおり、バックアップを休日・夜間に行うバックアップソフトには手頃なものもございます。それを弊社内で厳重に保管しておりますので、オンプレミスバックアップに非常に近い感覚で遠隔地バックアップを実現していただけます。もちろん、災害対策としても十分なレベルだと自負しております。
定期的な研修につきましても、具体的な研修内容につきましては会社様により様々ですので丸ごと承ることはできかねますが、必要な内容、効果的な実施方法につきましては十分に効果を持つものになるまでご相談に乗らせていただきます。バックアップポリシーにつきましても相応しいものをご提案申し上げます。見直しにつきましてもご相談下さい。
基本的にはお預かり致しますデータの保存媒体につきましては静的に保存を行っておりますが、テスト復元が必要な際にはお申し出いただければすぐに媒体をお返し致します。また、弊社で代行することも可能でございます。ご希望どおりお申し付け下さい。
フルバックアップではなく差分バックアップも承っております(増分バックアップにつきましてはご相談下さい)。
BCPの策定につきましても御社のご担当者様と、ご納得いくまでご質問を承りますし、内容の如何については含ませるべきもの、必ずしも必要のないもの等ご相談に乗らせていただきます。
何事につけてもご相談には乗らせていただきますので、まずはご連絡をいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
小括
やはり中小企業の皆様には、主にリソースの不足によってバックアップに関して十分な対策を立てるのが難しいことなのだなあと、私もこの文章を書きながら改めて実感致しました。
やはり御社内という現場に直接伺うことはできかねますので完全に御社のバックアップ担当者を直接承ることができませんが、ご担当者様になるべくご負担がかからないよう、最大限努力させていただく所存でございます。
何卒よろしくお願いいたします。
目次
クラウドストレージが持つ特有のリスク
クラウドストレージが持つ特有の脆弱性
クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性
Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex
バックアップの方法 オフライン・オンラインバックアップとは?
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その1
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その2
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その3
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その4
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その5