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お客様の反応に敏感過ぎる営業マンの弱点

私たちは、社会で必要とされている仕事に対して、個人のパーソナリティがいかにマッチしているかどうかを判断しています。
一般的には、お医者さんには高いエンパシー(感応力)が必要で、弁護士には高い知性と教養に加えて、良好な対人関係能力が必要だと思われています。自動車の営業職には説得力が必要ですし、デザイナーには創造性が欠かせない、といった具合です。

次の三つのクラスターグラフで示したキャリパープロファイルは、それぞれ[弁護士][自動車の営業職]、それに[英国海軍の提督]のトップパフォーマーを示しています。いわば、それぞれの職業におけるベンチマーク(物差し)です。どのキャリパープロファイルがどの職業を指し示しているか、分かりますか?

提督・セールス・弁護士

正解はAが英国海軍の提督、Bは自動車の営業職、Cは弁護士です。

リスクにチャレンジしてはいけない仕事

優れた海軍提督には、強烈な使命感と鉄のような意志で乗組員を叱咤する派手なイメージを抱きがちですが、実際の優れた海軍提督は、慎重性と抽象概念理解志向が高い、物静かで知的なパーソナリティの持ち主であることが窺い知れます。エゴ・ドライブ(影響欲)や社交性、アイデア志向が低い点は、むしろ意外に思われるかも知れません。

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映画では、白い軍服に身を包んだ提督が、シャンパングラスを片手に船上のパーティで主役を務める姿が登場したりしますので、さぞかし社交性が高いのではないかと思われがちですが、社交性はむしろ低く、好印象欲や感謝欲も際立って高いわけではありません。切迫性なども、それほど高いレベルを必要としていないようです。海軍提督の仕事は、部下の気持ちをーつにまとめ、状況を正確に判断し、いつでも緊急事態に備えられるようにしておくことです。兵員の生命がかかっているのですから、 軽率に決断を下されては困ります。

優れた海軍提督には外的管理の高さが必要とされていますが、これは自分勝手に独断専行で判断するよりも、冷静沈着に規律に従った判断が最優先で求められていることを表しています。

成果のためには強引さも必要

Bの自動車の営業職のベンチマークは、都市部のセールスで高い営業成績を上げているトップパフォーマーのものですが、彼らに必要とされている「潜在行動力」 の傾向をよく表しています。

このトップセールスマンには強いエゴ・ドライブ(影響欲)と切迫性があり、主張欲や好印象欲、新奇・リスク志向なども高いレベルにあります。お客さまに断られても落ち込んだりしないエゴ・ストレングス(復元力)が強いことも重要な要素で、比較的高い水準にあると言えます。意外なのは、エンパシー(感応力)がかなり低いレベルにあることです。

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その理由は、この自動車の製品特性・ブランド特性と大きく関係しています。この自動車のディーラーを訪れるお客さまの多くは、ほとんどが既に何らかの選択肢を持っており、実際にその車を自分の目で確かめたら、すぐにでも値段や下取りの条件などを確認したいと考えるのです。だとすると、そうしたお客さまを素早く取り込んでいく切迫性と、大胆に購入への意思決定を迫るリスク志向の高い「潜在行動力」の持ち主のほうが間違いなく有利です。

エンパシー(感応力)が高すぎてお客さまの反応を気にしすぎる営業スタッフは、このような環境下では、どうしても競争に負けてしまいます。このあたりは、同じ営業でも、お客さまが予め商品のイメージを持てない保険や金融商品の営業とは大きく異なる点です。例えば同じ自動車でも、家族構成が変わって、車室の広い製品に興味があるが、自動車の知識に乏しく、いろいろ相談してみたい、と考えているようなお客様には、逆にエンパシーの高い営業スタッフの方が、適性は高いと考えられます。

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概して都市部のお客さまが自動車の営業スタッフに求めているのは、気配りよりも、要求に素早く応えてくれる 「腰の軽さ」、つまりスピーディな対応です。東京でも、高級輸入乗用車の営業で好成績を上げているのは、いつでもすぐにお客さまの元へ駆けつけられる機敏な営業マンです。

「相手に合わせない」という適性

Cの弁護士のベンチマークにも同じようなことが言えます。

ここにご紹介している弁護士は、顧客からマークオフ(弁護費用の減額要求)を迫られる恐れのない、確固とした地位を築いでいる一流弁護士のものですが、「潜在行動力」 では予想以上に対人志向が低く、説得意欲も低いことに驚かされます。

この弁護士のように大手弁護士事務所に属し、企業と継続契約(リテーナー)しているような環境下で、トップパフォーマーとして成功している人たちは、好印象欲や社交性は極めて低く、内的管理や外的管理志向も低い水準にあり、主張力や積極性、エゴ・ドライブ(影響欲)なども飛び抜けて高いわけではありません。これは、優秀な弁護士は事実を重視する 「客観性」に優れていることを示しており、 主観的な判断を強引に押し付けたりしない、ということなのです。エンパシー(感応力)が高いということは、いつでも相手に合わせられるということです。

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では、弁護士という職業で社交性が高いと一体、どうなるでしょうか。

それはある意味で、つい顧客の要求に応じて事実を隠蔽することに加担しやすいということになります。社交性が低いということは、顧客の要求に合わせようとしないということですから、付き合いにくくはなるかもしれませんが、結局は、事実だけに基づいて客観的に判断する弁護士こそが高く評価され、信頼されることになるのです。また、事実を軽視しない慎重さも、成功する弁護士としての大切な要素のーつになっています。

弁護士のトップパフォーマーが意外に自己管理が低いのは、自由業的な専門職であることと、問題を抱えた顧客が現れてから仕事が始まるので、あまり仕事上の目標を立てて、それに向かって邁進する必要がないということでしょう。むしろ、多様な案件を同時にこなす能力が必要とされていると考えられます。

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ただ、これが大手法律事務所の弁護士ではなく、刑事弁護士や個人弁護士事務所の先生となると話は変わって来ます。ドラマや映画でも、大企業に雇われた冷徹な大手法律事務所の弁護士と、町の名もなき小さな事務所の熱血弁護士が、同じ職業とは思えないほどに違ったモチベーションで行動し、対峙する様子が描かれることがありますが、同じ職業でもおかれた環境や条件によって、前項の自動車のセールスマンと同様、全く適性が異なることがあります。

私たちは、固定観念に基づいた職業イメージに惑わされることなく、その仕事で大きな成果を上げるためにはどのような「潜在行動力」が必要とされるのかを掴もうとしています。

そして、せっかく就いた仕事でもしもうまくいっていないような場合は 「その人の潜在行動力」と 「その仕事で必要とされる潜在行動力」のどこがミスマッチを起こしているのか、その原因を探ります。原因がわかれば、解決策を考えることができます。たとえその人の「潜在行動力」と仕事が合っていなくても、決してあきらめる必要はありません。足りない「潜在行動力」に気づけば、それを自分で補ってやることができ、それからの仕事を円滑に進めることができるようになる可能性があるのです。