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女性リーダーにあって、男性リーダーにはないもの

混同されやすい「同権」と「同質」

女性には参政権のなかった明治時代のことを思えば、女性の権利は随分と改善されたとも言えますが、現代においてもなお、人事領域においては見直すべきところは決して少なくありません。「男女」という言葉すら、慎重に使わなければならない昨今ではありますが、生物学的、統計学的に認められる明らかな男女間の差異については、冷静かつ客観的な視点が不可欠です。

スポーツの世界において、男子競技と女子競技を分けることについて、あまり感情的な議論が巻き起こることはありません。これは「男女間の体力差」という客観的事実を潜在的に多くの人が認識しているためと考えられます。

企業における採用や昇進のための評価基準も、本来は客観的な基準に依拠すべきところですが、感情的・慣性的な要因に支配されがちです。中でも企業の管理職に占める女性の割合は長期的には上昇傾向にありますが、国際的に見ると日本は依然として低く、 アジア諸国と比べても特に低い水準にあることが、公的調査からも繰り返し指摘されています。

「そもそも採用される母数からして女性の割合が低い」「総じて女性の方が勤続年数が短い」等の理由はあるのですが、そうした事情をも乗り越えて職場のリーダーとして活躍している女性にはどのような共通点があるのでしょうか?ここにキャリパーの興味深いリサーチ結果があるので、ご紹介しましょう。

より困難な状況に対峙する強さとしなやかさ

過去の記事でも何度かご紹介しているキャリパープロファイルで、男性リーダーと女性リーダーを比較してみると、以下のような特徴が見られました。

日本・中国・シンガポール・ブラジル・英国・米国の女性リーダー(CEOを含む事業部長クラス以上)177名を対象とした調査で、類似性のある会社規模、特性と同様の役職レベルで男性リーダーと女性リーダーを比較しています。

キャリパープロファイルに加え、いくつかの分析と調査を補完するためのインタビューを実施した結果、以下のような傾向が見受けられました。

  1. 他人を説得したいという意欲が強い
    一つ目のグラフに示されるエゴ・ドライブの高さは、他人を説得したいという内的欲求の強さを示しています。また感応力(エンパシー)や社交性の高さからも、他人の気持ちや良好な人間関係構築への関心の高さを窺い知ることができます。女性リーダーは相対的に男性リーダーよりもチームやグループをわだかまりなくまとめることにこだわりがあるようです。

  2. 拒絶されても素早く学び、積極的な姿勢へ切り替えられる
    二つ目のグラフの「復元力(エゴ・ストレングス)」のみ、男性を下回っています。この指標は、強い自己肯定に裏打ちされていることから、数値が高過ぎると自らを省みないという短所となって表れることがあります。男性リーダーに比べると女性リーダーの方が、より自らを反省する度合が強い、と見ることもできます。

  3. 規則にこだわらず、リスクを負うことを厭わない
    三つ目のグラフでは「柔軟性」の高さと、「徹底性」の低さが際立っており、また四つ目のグラフの「慎重性」、さらには手順や権威への関心度を示す「外的管理」も相対的に低いことから、女性リーダーの方が、前例や慣習に囚われることなく、リスクを取って、柔軟な対応ができることを示しています。

法令や風潮に振り回されないために

法令や行政が設定した数値に届かないからと言って、つじつま合わせのように女性の採用人数を増やしたり、女性の管理職比率を上げたりするのは、企業人事の大義に悖ります。

理解や計画があいまいなまま、現行の評価システムを無理やり「男女平等」の枠組みに押し込めようとすれば、必ず歪みが生じます。働く人の幸福度も、企業全体のパフォーマンスも吟味されていないのであれば、まずは一度そこに立ち返ってみてはどうでしょう。

信頼のおける数理的なエビデンスを収集・分析した上で「女性の良さ・強さ」を客観的かつ冷静に評価する視点が組織に根付けば、女性が活躍できる場やポストはおのずと増えてゆくはずです。