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武田百合子を読む 小説と暮らし 過去日記 2016


某日

西日本は寒波の影響で雪がすごいらしい
こちらはお日さまも出ていて
良いお天気
風が強いので外は寒いけど


ベッドで読みかけだった川上未映子のすべて真夜中の恋人たちを
読む
もうどの辺まで読んでいたか
忘れたので
繰り返し同じページを何度も
読んだ
今度は挫折しないうちに読み終えたい


彼は昼寝のし過ぎで
夜になると眠れなくてぐずるので
今度からはテキトーに起こそう



彼のお母さんの写真を
見た
よく似ていた
彼はてっきりお父さん似なのかと思っていた
そう言うと黙り込んでいた
イヤなのかも
ずっと前に話してくれた父親に対する気持ちを
忘れた訳ではない


純も父親や継母には立ちこめる
暗澹とした想いがあったけど
齢を重ねると
許せるようになる
その許しとは、もしかしたら
許せなかった自分への許しなのかもしれない


父親は自分が思ってるより早く
他界してしまった事もある
家族との縁が薄いことは
どこか、この世に生きているということが嘘っぽいような現実感に欠けるような気持ちになる

いや、もしかしたらそうじゃなくともそれを知らないので
純のことだから
どこかふわふわと地に足がつかないまま違う人生も生きていたのかも


これぞ現実と実感するような人生なんて
逆に無いのかも知れない


満たされ過ぎると
それはそれで、物足りないような
気持ちになる人間とは厄介な
生き物である


彼が買ってきてくれた
シュークリームのバニラビーンズの
甘さを思いだしながら
少しずつ長く
途切れずに長く
いつまてもこのしあわせが続きますようにと願っている


某日



今日も寒いけどお日さまは顔を出してくれた
セブンの近くのドラッグストアへ

行ってみると食料品も売っていて
白菜や豆腐を買った
もうお餅は高くて買えないかと
思っていたらドンキよりかなり
安かったので
ありがたくお餅も買わせて頂く


本屋さんでクウネルを立ち読みしたら
以前の面影がまるでない
アマゾンで調べてみたら
リニューアルしたらしく
酷評の嵐だった
少し前に安くバッグナンバーを
買ったのだけど
それも千円以上に高騰していた
どうやらリニューアル前のバッグナンバーを買う人が続出しているらしく
すべて千円以上に値上がりしていた
高いものは数千円になっていた


スマップの解散騒動じゃないけど
以前のクウネルを懐かしむ人たちがレビューの欄に書き込む運動の
ようなものができていて
あながち、そういった世間の人たちの声も纏まれば出版社にも
カタチとなって届くのかも


夜はハンバーグと彼に
頼んだ千切りキャベツ
ベーコンと玉葱のコンソメスープ
ソファで二人で並んで本を読んだ
彼はピンチョンを読みたがっている
パワーズは読み終えたよう


ドストエフスキーの文庫を出してもらった
白夜の表紙が素敵

地下室の手記は孤独の惑星で
綾野剛が読んでいた


渇きで小松菜奈ちゃんが読んでいた本のリストというサイトもあり
映画に出てくる本の意味を考えるのもおもしろい
純はまたまだ読む本もやりたい事も沢山あってしあわせ


某日


今日も部屋の中は暖かい
都立家政から持ってきたポトスが
電車の中で折れてからイマイチ
元気がないので
お風呂場に吊してみた


ビーフシチューを煮込んだりしながら
真夜中の恋人たちを読み終える
ラストは意外な結末
自分とは間逆な主人公だったので
でも、こういう人もいるな、とか
この主人公に共感する女の人も
結構いるだろうなとか
その人たちには、この小説は救いになったろうとか考えていた
純は聖ほどではないけど
何方かと言えば聖よりで
聖と同じように冬子は傷つくのが
怖いのだと思いながら読んでいた

ただ自己愛というのは表裏一体で
傷つきたくない自分が可愛いければ
そうじゃないわと自負する自分も
又、可愛いのだから
どちらかがいいとか悪い訳ではない
すべての人が自己愛にくるまれている


そうか三束さんは来なかったのか
でも嘘をついていた事が後ろめたいのもあったかもしれないけど
57歳だし冬子の抱いて欲しいという願いに応えられる自信がなかったのかも
つまりは勃たないかもしれない
みたいな


実際、57歳の男の人がどれぐらいの性的能力があるのかは知らんけど
少し川上弘美のセンセイの鞄を
思いだした
ドラマではキョンキョンの相手役が柄本明だった
む、もしかして意外とイケるのか
57歳


昼間はヒルナンデスで熊谷真実が
旦那さんと二人ともお酒が
飲めないので
喫茶店に一緒に行くんです
仲良しです、
と惚気ていた
なんか可愛いかった


そんな風に人は自由に自分たちの
楽しいことをどんどんすれば
いいのだ
そういえば、真夜中でレストランで土のスープを飲んでる場面が
あって
彼と少し前に
土は食べれるとか話したなと思った



それにしても、1日が長いけど
彼も早起きだし
そう感じてるのかな
夕方は少しだけ日が沈むのが
遅くなった
前は5時で暗くなったけど
今は5時20分くらい
都立家政の時は、遠き山に日は落ちて だったけど
こちらは、夕焼けこやけで日が暮れての音楽が鳴る


天気予報だと土日は曇りや雨で
残念
あのポカポカのソファの感じを
彼に味わって欲しいのに


某日


ポカポカ日和
ソファに座りながら、ポカポカというのとほかほかの違いについて
考えていた
ほかほかのしゅうまいとかは言うけど
ポカポカのしゅうまいとは
あまり言わない
ほかほかは生ものっぽいイメージ
しばらく、そういったオノマトペについて想いを巡らせる


武田百合子の富士日記を読み始めた
旦那さんはどうやら作家のよう
新潮社とか中央公論とか
出版社の名前が出てくる


これといって、今のところは
そんなに上手い文章とは思わないけど
なんでもない日常の記録というのがいいのかも知れない

そこには、昭和40年頃の暮らしが書かれている
飼い犬のポコと娘の花
花は中学生くらいなのだけど
瞼を閉じると淡いくりぃむ色の光の中に小さな女の子の姿が浮かんで
今は亡き家族が確かに
その頃仲睦まじく暮らしを営んでいた


そんな、なんでもない事に
泣きたいような気持ちになる


普段は忘れているけれど
武田百合子だけでなく、かつて
そうやって沢山の人が沢山の家族たちが
この世界に生きていて
ご飯を食べ眠り笑い泣いていた
という事

純と彼の毎日も
いつかはそんな風にこの世界の
記憶の中に存在していくのか
そんな事を考えると、胸の奥が
ふわーっとした


彼も作家で
こんな風に純の側で原稿を書いたりする暮らしならいいのに
純は傍らにいて熱いお茶を煎れてあげる
時々はせっかちなのでお湯が
ぬるい
彼は時々?
と、
こころで呟く




純はパパが死んだと知った時も
泣かなかった
実感がないというのもあるけれど
純はいつ泣くのだろうと
再び考えて
親が死んでも泣けなかった自分にと
ふと思い、それは自分はやはり
人として何か欠如しているのでは
とも思い


もっともっと愛された記憶が欲しかったと自分を慰めるような気持ちになり
彼はこれを読んだら
呆れるだろう

でも、自分で自分をいい子だと思って泣いている純を呆れてもいいけど
何故、そうなってしまったかを
理解し
よしよしと可愛がって欲しいと
思っていた
それくらいに、うちには親からの
愛情とか
そういうものは欠如していた


こういう事はでも
当の本人にしか中々分からないかもしれない
どれだけうちの家族が変わっていたかを慰めあえるのは
弟のしげちゃんだけかも

だが、幾つもの恋愛をし家族以外の沢山の人から愛されてきたので
それは肉親の愛情より有り余るくらいで
有り余るという言葉では足りない程で


そういう家族に対する呪縛のようなものはいつしか解き放たれてしまった

それでも
もっともっと親孝行もしたかったな
この愚行だらけの人生の反省を
する為に
もしかしたら来世で修行をするのかもしれない

とりあえず
今は精一杯、この暮らしを楽しもう


某日

雪は所々残っている
明日からお天気が崩れるので
今日のうちに買い物を済ませる
一畳用のカーペットを980円で買う100均でアイボリーというグリーン
彼が買ってきたオリヅルランにカタチが似ている


富士日記
当時の物価は大体、今の5分の1くらいかと思う
もやしが20円とか安いものは
今と然程変わらない
作家の奥さまなので、金銭的には
かなり余裕がある感じ


富士日記は富士山にある別荘での
日記が主で
普段は赤坂で暮らしているよう
江戸川乱歩が死んだとか
谷崎潤一郎が死んだ等という
有名人についての記述が所々出てきて
そんな時代背景らしい
物価は5分の1でも、お金持ちなので
5倍に考えてみてもうちとは
比べ物にならない金銭感覚
作家とはそんなに裕福だったのだろうか

でも、お金がなくてもここにいると
光がたっぷり部屋に入るので
惨めな感じがしない
それほど太陽の力は大きい
もし、お金がなくて日当たりの悪い部屋で暮らしていたら
全然違うと思う
純は洗濯機が嬉しくて毎日
洗濯している


某日


昼過ぎから雨
シトシトではなくぽたりぽたりと
雪が解けるような音の雨


今日もベッドで富士日記
時々片手をお腹にもう一方は文庫本を持ったまま寝ている
目がさめると身体のあちこちが
福笑いのように
そっぽをむいていて
まるでピカソの絵のよう
これじゃあ、どこかしら痛めても
仕方ないと自分でも思う

彼は早く帰ってきた
土曜は休みなら良かったのに
一緒に草津の湯に入る

いつもありがとう
遠くまでお仕事お疲れ様です


某日



富士日記の上巻を読み終える
天衣無縫というのは、武田百合子の人柄のよう
百合子について調べてみると
夫はニヒリストで、どちらかというと夫の方が百合子に影響を
受けたとある


純と彼を思い浮かべる
読みながら、人間関係とフラワーアレンジの類似点について考えた
主張の強いものばかりでは
ぶつかり合って双方の魅力が
引き立たない


百合子は口が悪い
夫でなくても、ちょっと顔をしかめたくなるような言動もある
よく言えばお茶目だし
そういう所に惹かれる男性も多いかも


とりあえず上巻を読んだら
結構読み疲れしたので、中巻を読む前に違う小説で息抜きしたい
川上弘美のざらざらが寝床にあるけど
そのうち読みたいと思っているのはジュリアンブラック
森のバルコニーとか


彼は花とシュークリームを買ってきてくれた
紫色のスイトピーとチューリップ
シックな色合いでとても素敵


気温次第では雪になる予報だったけど
雨は上がり曇り空だった



テラスでそのうちハーブを育てたいなぁと考えているけれど
考えている時間も含めて
ゆっくり楽しもうと思う


部屋の中の観葉植物は今のところ
元気で
グリーンネックレスは緑をプリプリ
させている
プミラもアジアンタムも
可愛い


明日は晴れるみたいで嬉しい
彼は自分の分のシュークリームも純にくれた
ありがとう



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