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フィルモア通信 New York

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#小説

Dallas Texas 九月の熱い日々

Dallas Texas 九月の熱い日々

 これは下書きで、本来人に見てもらえるような構成とか物語になってないと思います。しかしnoteさんの呼びかけに恥を承知で応じてここに出させてもらうのは、やっぱりこのご時世、いつ自分も明日がなくなるやもしれないと、いつまでたっても子供騙しのような小さな物語の断片を、空中に塵と消えるに任せるよりはせめてこの電気の流れのなかに留めたいと願うからです。物語のなかの人たちは確かにそこに生きてぼくらに語りかけ

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フィルモア通信 New York Seiji&Huberts going going gone.

フィルモア通信 New York Seiji&Huberts going going gone.

セイジ、ニューヨークタイムス、ぼくらの手

 セイジさんは日本の大企業から在米駐在としてニューヨークにやってきた。そして何年か後アメリカ永住権を取得して会社を辞め、四十歳を前にして料理の道に入った。当時アメリカでは最高峰の料理学校、ニューヨークアップステートにあるCULINALY INSTITUTE OF AMERICA 通称CIAは授業料も高く基本的に全寮制なので除隊補助でもないと自力でやるしか

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フィルモア通信 New York 80`s No2 旅は続く。

フィルモア通信 New York 80`s No2 旅は続く。

 ニューヨークに着いた。ソウルとアンカレッジ経由のコリアンエアラインは混み合っていてタバコの煙とおそらく韓国製のカップ麺と赤ん坊のおしめの匂いとがむせ返るように機内に立ち込めていて、妙に安心な感じがした。

 もっとずっと後にクリスマスシーズンにシアトルからポートランドへとグレイハウンドバスで旅した時に車内には数人の若い学生と黒人ファミリーがほとんどでバスのなかにたちこめるオムツとホットドッグ、フ

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フィルモア通信 New York  80's 雲の上は初めて見た。

フィルモア通信 New York 80's 雲の上は初めて見た。

 今日も陽はたかく、乾いた風が吹く。誰もいなくなったレストランの窓を開け、ぼくはテラスに出る。 

 鉢に植わった咲き零れるペチュニアの萎れた数輪を指先で摘む。こうすると残った花たちはまた息を吹き返して元気になる。風が匂うようだ。さっきまで昼食で満員だったレストランのダイニングルームを窓越しに見る。人影も無いテーブルや椅子に陽光が射して静かだ。

 あと二時間もすると夜の開店だ。オーブンにはロース

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