マガジンのカバー画像

フィルモア通信 New York

30
運営しているクリエイター

#ニューヨーク

フィルモア通信 No19 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署 その続き

フィルモア通信 No19 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署 その続き

 前稿の続き。

 その事件があった週末の一番込み合う時間の金曜日のディナーに二人の刑事がヒューバーツレストランにやって来て、マサミという男がいたら今から署に連行すると告げられたカレンがキッチンに入ってきてそれをレンに告げると、レンはぼくを見て「ドン、ウォーリー」と言い刑事たちと話をしにダイニングルームへ行った。

 刑事たちは帰り、ぼくは明日土曜日にひとりで二十三分署に出頭することになったことを

もっとみる
フィルモア通信 No18 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署

フィルモア通信 No18 バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署

バルベドス、アリア、ニューヨーク市警二十三分署

 ヒューバーツレストランには異なる多数の人種、言語そして文化を持つ人々がそれぞれの仕事についていた。なかには複数の言語を話しその父母からそれぞれの国の文化や習慣を持つ人もいて、出身国がちがうカップルなども独自の価値観を見出していたりと、ニューヨークの様々な分野の多様性は簡単には理解出来ないものがあり、何も知らないぼくは毎日驚いたり、不安になったり、

もっとみる
フィルモア通信 New York No22 on the corner

フィルモア通信 New York No22 on the corner

路上にて 

 毎夜ヒューバーツの仕事が終わると帰る方向が同じペイストリーシェフのジョン・デューダックとグラマシーパークから南へイーストヴィレッジのほうへ歩いた。

 サードアヴェニュー東14丁目で別れるとセントマークスプレイスを左に曲がりファーストアヴェニューまで突き抜けると東4丁目にある自分のアパートまではすぐだった。

 そのファーストアヴェニューと東4丁目の西南のコーナーにコリアングロサリ

もっとみる
フィルモア通信 New York No21    アダム

フィルモア通信 New York No21    アダム

アダム ヤウク

 レンが自分の息子のマシューと一緒に若い男を連れてきて、ぼくらに紹介した。アダムはマシューの通う高校の同級生でふたりとも卒業目前とのことだった。ぼくにはよくわからなかったがアダムは卒業するには何かが足りないらしく社会参加かなんかのクレジットが必要とのことでヒューバーツレストランで見習いの仕事をすることになったらしかった。
 17歳か18歳だかのアダムはしっかりした体つきに繊細な表

もっとみる
フィルモア通信 New York No15 Peter goes Tokyo. Calling Susan. I

フィルモア通信 New York No15 Peter goes Tokyo. Calling Susan. I

 ある日ピーターはぼくに日本の料理本を見せて興奮した様子で、「マサミ、この料理はビューティフルだぼくはこの人に会いたい」と言った。その本は東京のフレンチレストランのシェフが美しい料理の写真とレサピを乗せた、彼の最新刊だった。ピーターはぼくがこの夏に一度日本へ行く計画を知っていて、そのシェフ宛に手紙を書くから翻訳して渡してくれないかな、と言った。
 ぼくはピーターのために役に立ちたいと思い、引き受け

もっとみる
フィルモア通信 New York No14           My Friend Peter Hoffman

フィルモア通信 New York No14 My Friend Peter Hoffman

マイフレンド、ピーター・ホフマン

 ニューヨークに着いた初めての冬、ぼくはソーホーで見つけた日本レストランでキッチンヘルパーのアルバイトをしていた。
レストランの閉店後、従業員のぼくらが食事をとっているころ、固く錠のかかったドアから呼び鈴を鳴らして、スポーツ自転車を担ぎながらピーターはぼくらにコンバンワ、と言った。ここのオーナー、ミキオさんの友人で、すぐそばのアパートメントに住むピーターは日本料

もっとみる
フィルモア通信 New York No12    空手のフレディ

フィルモア通信 New York No12    空手のフレディ

 フレディはぼくのあとからディナーのラインクックとしてヒューバーツに入って来た。
 
 イタリア系で空手の師範で全米空手トーナメントでどこかの州チャンプになったことがあるという、ぼくより年下の大男だった。イタリアンやアメリカンのレストランで働いていたがヒューバーツの評判を聞き是非入りたいとその時の職場を辞めてやって来た。

 空手の道場はブルックリンのどこかにあるらしかった。日本語がすこし出来た。

もっとみる
フィルモア通信 New York No11 マーサとジョージワシントンの亀のスープ

フィルモア通信 New York No11 マーサとジョージワシントンの亀のスープ

 ヴァレンタインデーのメニューはアメリカの歴史上の有名人の恋人たちが愛した食べ物をとレンがアイデアを出してきた。ジョージ・ワシントンは妻マーサのために彼女の好物であった亀のスープを作ったとレンは話し、これをメニューに載せようということになった。
 
 ぼくはその亀というのはウミガメじゃないの、と訊いてみたがウミガメは保護しなければいけない動物で食材じゃないと、みんなは言った。
 
「普通のタートル

もっとみる