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優しい音が聴こえる丘で
すっかり寒くなった。家を出たときに思い切り白い息を吐くのは、大人になっても楽しい。
住んでいる街にはまだ紅葉した樹木が立ち並んでいる。毎年いつのまにかなくなっているイチョウの葉っぱは、落ちた後どこにいくんだろうと考えながら踏み歩いている。
去年よりほんの少し、ゆったりと優しい気持ちで冬を越せそうだと思う。
こうやって穏やかに居られるのは、ひとえに絵や、私自身を好きでいてくれる人のおかげだ
さよならのかわりに。
今週、母方の祖母が亡くなった。
ピンクのガーベラと種類の様々な白い花の供花に囲まれ、棺桶も薄ピンク色と、可愛らしい斎場で見送った。
最後に、ひとつひとつ、花を棺桶に入れていく瞬間は、不謹慎かも知れないけれど、なんて美しい儀式なんだと思った。
焼き場に向かう途中の、夕陽に照らされた木々の紅葉がとてもきれいで、冬枯れの景色じゃなくてよかったねと母と話した。
ようやくぼうっと考える時間ができ
あの日投げた銀の首飾
誰かの1番になりたいと思った事は何度かある。
ひとつ、うら若き少年少女に言っておきたい事は、大人になってもそれをときどき、強く望む日があると言う事だ。
酒もろくに飲めないで大人になった。「飲めたらどんなに良いだろう」と、誰にどれくらい言ったか分からないほど方々で愚痴っている。
頭の中は考え事でいっぱいなのに、話せる場所がなくて、こんな場所で、出鱈目であてのない文章を書いている。どうしよ
走り書きのおるもすと
なんだか「おるもすと」を読まなければならないという衝動に駆られている。吉田篤弘さん著の隠れた名作である。
冒頭はこうである。
2年前、この一節が頭の中から離れず、数時間あれば読み終える程の短い物語を、1週間かけて丁寧に読んだ。
終わりのない「終わり」の物語である。
最後には見事なまでに、ささやかで美しいエンドロールが流れる。曰く、曲はキース・ジャレットの「My Wild Irish