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あの日投げた銀の首飾

 誰かの1番になりたいと思った事は何度かある。

 ひとつ、うら若き少年少女に言っておきたい事は、大人になってもそれをときどき、強く望む日があると言う事だ。


 酒もろくに飲めないで大人になった。「飲めたらどんなに良いだろう」と、誰にどれくらい言ったか分からないほど方々で愚痴っている。
 頭の中は考え事でいっぱいなのに、話せる場所がなくて、こんな場所で、出鱈目であてのない文章を書いている。どうしようもない大人になってしまった。

 十二分に幸せなのだろうが、ふと、唯一無二を探す自分がいる。
 人生について、考えについて、屈託なく語らえる存在しない誰かを求めている。
 適当な約束で、深夜にラーメンを一緒に食べられる誰かを求めている。
 真面目に生きていた自分を否定はしたくないので「酒が飲めたら」と酒のせいにしている。
 飲めない私を寛容に受け入れ、ジンジャーエールでやり過ごす私の前で酔ってくれる数少ない友人達を、今は大切にしている。

*

 「情」という不確かなもので、私は正気を保っている。端的に言えば「自分が好きだから、この人は大切です」という一方的な好意だ。そこに相手の気持ちは一切無い。

 距離感を間違えないように生きている。
 たまに間違えて後悔をする。
 いつも不安になりながら、どこかに誘う。
 予定が立てられた時、安堵する。
 外ではとてもドジをする。
 寝て忘れる。
 次も笑えるように。

 せめてちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、一緒にいて心地いい人になりたかったと思う。
 例をあげると名探偵コナンに出てくる「蘭ちゃん」なのだけど、これはあまり伝わらない例えらしい。

 もう随分前、親友だと思っていた人の結婚式に尋ねられなかったことを悔いていた。
 数年会っていなければ、呼ばれないのは当然だった。情けなくも少し落ち込みながら、恐る恐る祝福のメッセージを送った。
 幸せに、と願った。

 すると返信が来て、これもまた随分前に2人のために描いた絵をウェルカムボードにしている様子と共に、「今も昔も支えてくれてありがとう」とメッセージを送ってくれた。

 ぼろぼろと泣いた。

*

 人と接すること以上に怖い事はないと今でも思うのに、最近はほんのちょっとだけ、臆病さが和らいだような気がしている。

 少しだけ楽に呼吸をできている。
 誰かの1番でなくてもいいなんて、綺麗事は言えないけれども。

Claude Heath
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241125

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