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2024年7月の記事一覧

夏の日

濃くて重たい影を
俯きながら引きずれば
夏を泳ぐ蝉や蜂に
命に近づかれて
ひどく怯える

数字として

今日も呼ばれる
存在としてではなく
数字として

明日も笑いかけられる
心身としてではなく
数の一つとして

滅びの色

あぜ道を行けば揺れている草が
流れている雲が
響き渡る水音が目に留まって
それらがどれも
滅びの色に見えてしまう

吊るす

長方形に願いを閉じ込めようとしましたが
願望もまた呪いだと思い
代わりに空っぽを
こっそり奥に吊るしました

映っていない夏

夏だ夏だと言葉にしながら
夏に人格を与えている
そんな自分に気付いたとき
 
私は夏を言葉にしているのではなく
夏という名の理想を言葉にしている
そのことを改めて痛感しました
 
結局私の目に
夏は映ってなどいなかったのです

乱れた夏

畳の上に並べていく
うちわにラムネ
蚊取り線香に風鈴
線香花火
 
夏っていう文字の刻まれた
いろんなものを
ぺたりと座り込んで見つめてみる
 
でも辺りは乱れ狂ったまま
夏は整然としない
 
外では蝉が鳴いている
赤い空気がねばねば糸引いて
 
ぽたぽた汗が垂れていく
私はますます乱れていく

汚れた水に

月の影に染まっている言葉の海
その渚でしゃがみ込めば
死という白んだ冷たさが押し寄せてきて
すねにお尻にまとわりついてきます
 
その波を飲み切るなんてできるはずもありませんから
砂浜に足跡を残して
山のほうの小さなため池まで引き返し
 
けれどそこでもまた同じように
月光の溶け込んだ水の
痛苦という冷たさを
掬うことはできなくて
 
両手でつくったお椀と共に
家の近くまで戻ってきたら
空き地の隅

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HBもしくはF

中学生の頃に買った
少しヒビの入っている
百円の透明なシャーペンで
 
いつからあるのか分からない
空白だらけの大学ノートに
やせた汚い文字を書く

芯は何度も折れて
カチカチカチカチ
空っぽが鳴る

内側がすっかり真っ黒な
クリーム色のやわらかいふで箱にあったのは
HBとFだけ

もっと大きなBかHがよかったと
ペンをミシミシいわせながら
消しゴムを使わずに書いていく

産み落とされることのなか

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