汚れた水に

月の影に染まっている言葉の海
その渚でしゃがみ込めば
死という白んだ冷たさが押し寄せてきて
すねにお尻にまとわりついてきます
 
その波を飲み切るなんてできるはずもありませんから
砂浜に足跡を残して
山のほうの小さなため池まで引き返し
 
けれどそこでもまた同じように
月光の溶け込んだ水の
痛苦という冷たさを
掬うことはできなくて
 
両手でつくったお椀と共に
家の近くまで戻ってきたら
空き地の隅にある銀のバケツ
それを月が澄んだ手で撫でつけていて
 
その
汚れていると知っている水に
そのまま手を浸し
ぬるさにそっと
顔を寄せたのでした

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?