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2021年5月の記事一覧

偽の声

偽の魚の
声聴いた

偽の小鳥の
声聴いた

偽の子犬の
声聴いた

偽の葉っぱの
声聴いた

偽の街路の
声聴いた

偽の人らの
声聴いた

それらを嘘にしてるのは
全部自分の耳だった

人の海へと
どぶんと入れば
音はこもって聞こえない

自然のなかに
ぽつりと入れば
音はうるさく聞こえない

音は聞けない聞こえない

音を聞きたきゃ壊れるか
血を流すほかありません

地獄の証明

自分の知ってる範囲で
理解できる距離でだけ他人を読んで

そんなやつはいないとか
狂ってるとか
こんなやつはクズだとかって
全部嗤ってんだね

可能性は開かれてる
地獄は瞬間瞬間現前してる

嘲笑だって結局は
地獄の使いのお一方

地獄の証明は
存在それ自体がやってんじゃん

それで嗤い声の主は存在なんだからさ

甲高い響き撒き散らしながら
その金づちで建てようとしてんのは
楽園でも未来でもなんで

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一枚のよう

 上下にするする流れてく、無数のうちの一枚のよう。消えてたとしても気づかれず、あったところでまじまじと見られることもない、そんな写真の一枚のよう。そのときはあれこれ想われるけれど、ほんの少しすれば回顧されることもない、そんな画像の一枚のよう。目に留まったら無言のままで、削除って字に触れられるような、そんな四角の一枚のよう。

乗りもの

雨のにおいは特急で
雨の落ちてく音はチャリ
雨の冷たさ自動車で
雨の透明フェリーだと
言う子の声が
ふっと聞こえた

ぼんやり

校庭ぼんやり見下ろしながら、あの子らみんな、死ぬのが見えた。
黒板ぼんやり書きとりながら、前の子の髪、真白に見えた。
制服ぼんやり穿きかえながら、浮かぶ筋肉、紙幣に見えた。
鉄道ぼんやり乗りかえながら、映った目元、値札に見えた。
携帯ぼんやりいじくりながら、あふれる言葉、呪いに見えた。
白米ぼんやり飲みこみながら、並んだ料理、汚物に見えた。
報道ぼんやり追いかけながら、流れる数字、自分に見えた。

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恥かくたんび

恥かくたんびに死にたぁなって
恥をかくんが人生やって
そんな慰めつぶやいたって
やっぱり死にたぁなるもんで

かかんようにて気ぃつけたって
人生やっぱり恥でできてて
生きてるだけで恥恥恥や

恥かくたんびに思うんは
なんでみんなは死にたぁならんの?

自分の背中が首が頭が
かっか燃えてるときの熱
この濃い熱に耐えられんくて

死にたぁなるんは
自分だけ?

すぐ冷ませんの
みんなだけ?

自分らしく

自分らしくなんて言うけどさ
それって自分に
らしさを貼りつけてるだけじゃないの
勝手に決めた
らしさってもんをさ

他人にらしさを押しつけられることと
自分でらしさを貼りつけることと
底のほうでは何が違うの

自分で選んだから?
自分で自分をこうだって
存在しない輪郭描いて
最も曖昧なもの明確にしようと
言葉で概念で塗りたくって

男らしくとか女らしくとか
子どもらしくとか大人らしくとか
母らしく

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