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  • 食べものと記憶

    食べものと、食べものに紐づいた記憶について書いています。

最近の記事

牛肉と大みそか

今日はすごい告白をしちゃおうと思う。 だって、今年ももうあと数時間で終わる。 今日、私は消費期限切れの牛肉を食べました。 12月27日が消費期限の牛肉を 消費期限から4日も過ぎた牛肉を 食べちゃいました。 どうだ、驚いたか。 1日、2日じゃない。 4日だぞ。 どうだ、驚いただろう。 ついでにもう一つ すごい告白をしちゃおうと思う。 だって、今年ももうあと数時間で終わる。 今日、私は誰とも会っていません。 12月31日 大みそか 私は生まれて初めて、大みそか

    • ピザの正体

      「ピザじゃない、ピッザだ。」 こういうことを言う人を、バカにしていた中学時代。 わざとらしく「ピッッッザァ!」とか言ってバカにしていた、どうしようもない中学時代。 ピザでもピッザでも構わないのだが、とにかくこいつには名前が2つある。 ピザをみんなで食べると、ピザパというパーティーが生成される。 なぜ、私たちはピザを目の前にすると、浮き足立ってしまうのだろうか。 なぜ、具が乗ったデカくて丸いパンを切り分けて食べるだけで、パーティー気分になってしまうのだろうか。 パー

      • 牛乳よ、私を連れてどこまでも

        牛乳は、昔の私を連れてくる。 小学生の頃、私は給食を食べるのがめちゃくちゃに遅かった。 みんなが食べ終わって、給食当番が空の銀トレイを片付け、教室の掃除が始まっても、私は給食を食べ終えられなかった。 冷めた料理と、ぬるくなった牛乳を前に、いつも泣きそうな思いだった。 食べるのも遅い、算数のプリントも遅い、作文も遅い、走るのも遅い。 自分が遅れていると気づくのも遅い。 周りの大人はいつも「遅い」と私を指差した。 ぬるくなった牛乳からも「遅い」という声が聞こえるようだった

        • 涙味の野菜バー

          むかしから、コープの野菜バーが好きだった。 ほどよい塩と野菜の風味。 こんがり香ばしいビスケット。 棒状なので、食べこぼしを気にするストレスもない。 しかも驚異の、1袋100円。 机の上に置いておくと、読書しながら、Zoomしながら、YouTube見ながら、ぱくぱく食べてしまう。 こないだもちょうどZoomをしていて、知らない人ばかりのZoomで、私はカメラもマイクもオフにして野菜バーを食べていた。 野菜バーを食べながら泣いていた。 知らない人ばかりで、でも私以外

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          10本

        記事

          脅して、追い込んで、焦らせて、鶏肉

          鶏肉を食べて、美味しいなあって思う。 美味しいから、もう一口、もう一口って食べる。 気づいたらいっぱい食べてる。 こんなふうに生きられたらいいなあ、とか思う。 よくわからないけど、最近、いろんな情報が私を脅してきている気がする。 脅して、追い込んで、焦らせてくる。 お急ぎください! まだ〇〇してるの? 絶対失敗できないあなたに! 知らないと損! うるさいなあ、と思う。 でも、鶏肉を食べると、美味しいなあって思う。 美味しいから、もう一口、もう一口って食べる。

          脅して、追い込んで、焦らせて、鶏肉

          しけしけのじゃがりこ

          じゃがりこは時計である。 じゃがじゃが、りこりこ。 ガリゴリ、ゴリガリ。 ボリボリ、ジャクジャク。 チクタク、チクタク。 埼玉県、浦和、夜9時。 タワーマンションの下に、公園と呼べないような、小さな公園がある。 ベンチに座って、缶チューハイのプルタブを引っ張る。 プシュッと音が鳴って、缶の中で小さくシュワワ〜。 隣の友だちも、プシュッ、シュワワ〜。 ゴキブリがベンチの横を通過する。 コンビニで買った安いチューハイが、舌を経由して喉を通過する。 次にじゃがりこ。 口

          しけしけのじゃがりこ

          チーズinハンバーグ

          箸を入れた瞬間、肉汁がジュワッ。 「あーっ、もったいない!その肉汁、もったいない〜っ!」 心の中で叫びながら、しかし容赦なく、箸をずいずいとハンバーグに押し付ける。 端っこを切り取って、鼻息荒く、一口目。 口の中にひろがる甘み。甘み。天海祐希。 子どもの頃、ハンバーグは単純にひき肉の塊を焼いたものだと思っていた。 玉ねぎが入っていると知った時、甘みの正体を知って感動した。 二口目にむけて、また、箸をずいずい。 すると…… なんということでしょう(C.V.サザエさん

          チーズinハンバーグ

          金太郎飴になりたいブロッコリー

          私は長年、ブロッコリーは金太郎飴に憧れているのではないか、と疑っている。 ブロッコリーを切ると、縮小版のブロッコリーが誕生する。いくら切っても、ブロッコリーはブロッコリーの形を崩さない。 まるで金太郎飴を切っているかのようだ。 それだけではない。 ブロッコリーというのは、よく味わってみると、甘い。 蒸したり茹でたりしたやつは、特に甘さが際立っている。 ブロッコリーは金太郎飴に憧れて、野菜のくせになんとか甘くなろうとしている可能性がある。 母がつくるお弁当には、高確率でマヨ

          金太郎飴になりたいブロッコリー

          消える10万円とスパゲティ

          深夜0時。 夕飯を食べ損ねた私は、ダイニングテーブルの大皿に残っていたあさりのスパゲティを食べ始めた。 父はテレビを、母はスマホを見ている。 一口食べて、硬い、冷たい。 電子レンジで30秒。 スパゲティから湯気が立つ。 フォークでくるくる巻いて、口の中にいれる。 唇を閉じて、フォークをゆっくり引き抜く。 電子レンジを発明した人に、私は今日こそお礼を言わなければならない。 ホクホク、つるつる。 眠たそうにテレビを見ている父に、起きてる?と声をかける。 父は、なんで?と

          消える10万円とスパゲティ

          綾瀬はるかになった私

          口に入れた瞬間、少し甘い。 そのあとすぐ、舌の上で小さくパチパチパチッ。 耳をすますと、口の中からしゅわしゅわしゅわ〜と音がする。 後味は、これでもかというほど甘ったるい。 グビグビ飲んで、プハーッとやる。 片手は腰に。 この瞬間、わたしは綾瀬はるかになっている。 コーラじゃない、コークだ、って感じ。 綾瀬はるかになった私は思い出す。 「コーラを飲むと歯が溶ける」という嘘を信じ込んでいた、小学校時代の友だちを思い出す。 コーラのカロリーについて力説していた高校時代の友だち

          綾瀬はるかになった私