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牛乳よ、私を連れてどこまでも

牛乳は、昔の私を連れてくる。


小学生の頃、私は給食を食べるのがめちゃくちゃに遅かった。
みんなが食べ終わって、給食当番が空の銀トレイを片付け、教室の掃除が始まっても、私は給食を食べ終えられなかった。

冷めた料理と、ぬるくなった牛乳を前に、いつも泣きそうな思いだった。


食べるのも遅い、算数のプリントも遅い、作文も遅い、走るのも遅い。
自分が遅れていると気づくのも遅い。

周りの大人はいつも「遅い」と私を指差した。
ぬるくなった牛乳からも「遅い」という声が聞こえるようだった。


大人になった今でも、私はけっこう牛乳を飲む。

冷蔵庫から冷えた牛乳を取り出して、飲む。
飲んでいると、ぬるい牛乳のことを思い出す。

ぬるい牛乳瓶を握った小学生の私が、現れる。
大人になった私を睨みつける。
「忘れてないだろうな」

冷えた牛乳を飲むと、胃の辺りがひんやりする。
「大丈夫、忘れてないよ」


牛乳は、昔の私を連れてくる。

私は問う。
今の私は、あの日の私に誇れる大人か。

私は問う。
本当に私は、あの日の私に誇れる私か。

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