消える10万円とスパゲティ
深夜0時。
夕飯を食べ損ねた私は、ダイニングテーブルの大皿に残っていたあさりのスパゲティを食べ始めた。
父はテレビを、母はスマホを見ている。
一口食べて、硬い、冷たい。
電子レンジで30秒。
スパゲティから湯気が立つ。
フォークでくるくる巻いて、口の中にいれる。
唇を閉じて、フォークをゆっくり引き抜く。
電子レンジを発明した人に、私は今日こそお礼を言わなければならない。
ホクホク、つるつる。
眠たそうにテレビを見ている父に、起きてる?と声をかける。
父は、なんで?と答える。
「どこかに寄付しないと消えちゃう10万円があったら、どこに寄付する?」と私。
「なんやそれ急に」と父。
私はスパゲティを
ホクホク、つるつる。
もぐもぐ、もぐもぐ。
「その時々によって変わりそやなぁ」と父。
私はスパゲティを
ホクホク、つるつる。
もぐもぐ、もぐもぐ。
「難民系かなぁ」と父。
「なんで?」と私。
「え〜、理由まで聞かれんの〜?」と父。
私はスパゲティを
ホクホク、つるつる。
もぐもぐ、もぐもぐ。
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