タイムスリップコップ/毎週ショートショートnote
「そこに好きなものを入れておくといいよ、
自分のすきなものがわかるから、コップを
ひとつ用意すればいいんだよ」
郷田は古い雑貨店を営んでいた。
彼が小さくなる前の話だ。
昔そこで薄青いコップを買った。
「コップには行き止まりがあるからいいんだよ」
郷田の口癖だった。
時折、縦も横も高さも手に触れられるぐらい、ちゃんと
限りのあることを、まっすぐに求めてしまいたくなる
ことが、栞にもある。
栞は、郷田蜃気楼が好きだったから望みを叶えてあげ
たいと思った。
あの日買った、薄青いコップには刻印があった。
「タイムスリップコップ」って書いてあった。
「そこに、好きなものを入れておくといいよ。ほんとうに
好きなものがわかるから」
あの言葉を思い出していた。
細編み、長編み、フラワーモチーフをそのコップに
入れた。
そのレースは曲がりくねった時間を旅している線路の
ようにみえた。
栞は、タイムスリップコップにちいさくなった
郷田蜃気楼も、そっと入れた。
(404文字)
土曜日、わたくし的に恒例になっております
ショートショート挑戦してみました😊
いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊