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じぶんの痛い心を知ってくれた人のことを好きになるように。#いちばんすきな花。

子供時代って、過去というよりはほとんど
未来に属しているのかもしれないけれど。

もうこんな年齢になっても、わたしはたえず
子供だった時のじぶんと今のじぶんを
行ったり来たりしているような気がする。

今すきなドラマ、『いちばんすきな花』。

でもどういいのかを伝えるのは難しくて。
なんども紙のノートに台詞を書いて眺めて
いるのだけれど。


●二人組を求める人生で出会った、4人のひとりたち。

これがこのドラマのキャッチフレーズ。

もともと学校の中でもふたりぐみになれなかった
ひとりとひとりが、はからずも出会ってしまった
物語。

ひととのつきあいに不器用で。
不器用なままおとなになった4人。

でも人づきあいが不器用ってなんだろうって
思う。
不器用じゃないひと、長けているひとだって
裏側から照射してみたら、ほんとうがいえない
不器用なひとたちになる。

登場人物の四人はそれぞれに、痛手を抱えていて。
その痛みを今もたいせつに忘れないように生きている。

ふたりぐみというキーワードで言うなら
第一話で彼らはこんな感じだった。

春木椿(松下洸平)
ふたりになりたいと思うのに、二人組にさせて
もらえなくて。みんなのお人よしのようなキャラを
生きてきた。

潮ゆくえ(多部未華子)
むかしから、二人組を創るのが苦手で教室に
ぽつんとひとりでいるようなそんな子。

深雪夜々(今田美桜)
一対一で人と向き合うのがこわくて。
小さい時も一人将棋しながら時間を持て余して
ふたりになれなかった子。

佐藤紅葉(神尾楓珠)
やさしくて人気者にみえたけど。ほんとうは一対一で
向き合ってくれる人がいなかった。

そんな彼らが、一度っきりだと思っていた
出会いを、再会に変えてゆく。

毎回ドラマでは冒頭で子供の頃を振り返る
シーンから始まる。

ゆくえちゃんは全部頑張る子供。
それはみんなと同じ感情になれないのが
こわいせい。

でも同じ感情になれてないじぶんのことを
彼女は「誰と一緒にいてもわたしの感情は
いつもひとりだった」とつぶやく。

どうしてゆくえちゃんはそんなに同じ感情に
ならないといけないと思ってるんだろうって
わたしの中にはあまりゆくえちゃん要素は
ないから、そこに思いを馳せる。

わたしの感情はいつもひとり。

これで、いいんだよって言いたくもあるし。
でもいいんだよって、肯定することが
ゆくえちゃんには必要だとも思えない
そんな気持ちになっていた。

そして椿さんは思ったことをぜんぶ口に
するような、ちょっと落ち着きのない子供
だった。

先生が上手に椿君を掬えないから。
それはだめなことのように思えて、いつしか
椿君は無個性をめざして。返事と相槌しか
打たない子供になって大人になってゆく。

夜々ちゃんは、女の子であることがどうし
ようもなくつらい。
夜々ちゃんの悩みの台詞にわたしは
なやんだ。

台詞の真意がはじめちゃんとわかっていなかった。

他人からみたら恵まれているという夜々ちゃんは
じぶんが望んでそうなったわけじゃないのに
いつも恋愛の対象としてしかみてもらえない。

これはマイノリティとマジョリティの問題だけど。

マイノリティは丁重に扱ってもらえるのに。

そうじゃない悩みは、贅沢だと言われてしまう
ことに夜々ちゃんが悩んでいることに
数日経って気づいた。

多数派のつらいはわがままなんですかね

わたしを悩ませたこの台詞。

脚本家の生方美久さんの試みはわたしたち
視聴者にいまを、突き付けていると思った
のだ。

このドラマはただやさしい友情以上恋愛未満
とかちゃらちゃらしたもんじゃないんだなって

この夜々ちゃんの回で、そこを確信した。

そしてこの間見たばかりの、紅葉君が主役の
エピソードもかなりきつかった。

きつかったけど、すごくわかるなって
頷いて、なんども泣いた。

誰からも好かれて明るくて優しいと思われて
みんなから必要とされたようにみえた紅葉君。

でもほんとうは、

ひとりで可愛そうなやつ余っているやつがいると
ありがたかった

いちばんすきな花#05より。

そうかつてひとりぼっちだったしのみや君に
再会した時に告げる。

そういうやつ裏切らないから、一緒にいると嬉しそうに
してくれて。ひとりのやつみつけて近づいてやさしい
ふりして。

いちばんすきな花#05より。

紅葉君は友達なんか誰もいなかった。

大人になって感じた罪悪感を思いがけず
再会を贈られたしのみやくんに打ち明ける。

でもそれは彼との別れを意味していた。

しのみやくんはこう言う。

そっちの勝手な罪悪感でこっちのいい思い出
塗りつぶさないでよ。やさしいふりしてりゃ
いいじゃん。こっちはやさしさだって
とらえてるんだから。

いちばんすきな花#05より。

そういうことだ。

紅葉君もわるくない。
しのみやくんもただしい。

わたしはどちらかというとしのみやくん
サイドにいた人間だからほんとうに
そうだよねって思っていた。

でもそう告げた紅葉君も傷ついていて。
紅葉君は椿さんに電話する。
耳貸してもらえますかっていうセリフが
よかった。

誰もが耳を貸してくれる人がいたら
最悪な時間もちょっとましな瞬間を
得られるのだ。

紅葉君椿さんがいてよかったって
心から思った。

このドラマなんだろう。
すごいじぶんのなかの子供時代と今と
行ったり来たり対話するのでめちゃくちゃ
時間がかかる。

そしていたいところを掘られてしまう。

あなたの傷ついた心ここにあります、みたいに。

痛い所を知ってもらえた人のことはどこか
好きになってしまうように、このドラマは
わたしのそんな傷ついた過去を知り当てられた
みたいで、とても好きなドラマになった。

きっと忘れないとそんな予感がしている。

おわり。











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