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最後の記憶、最後のマスカラ。

長いとか短いとかどっちでもいい。

まつげの長さで人を好きになるんじゃない。

そんなに長くなりたきゃラクダにもなれって
栞はうそぶいていた。

マスカラがやけに流行った年だった。

口説いてきたのは妹尾だった。

すっぴんすか?

シカトしていたら、これぼくの作ったマスカラ
なんすよね、もしよかったらモニターに
なってくれないかな?

マスカラって言った時に思わず妹尾の横顔を
見た。

まつげが長くてびっくりした。

、クダみたい。

って最初の声をぼやかしたつもりなのに、妹尾は
ラクダとちゃうわって乗ってきた。

ツッコミは栞の中で合格だったからいいよって
応じた。

すっぴんまつ毛にそのマスカラを乗っけられた時、
栞の世界が揺れた。

マスカラを付けた時に目の前は、はじめてみる
やさしい世界だった。

ずっとマスカラをつけて暮らしていたら世界が
ひずんでみえてきた。

妹尾がつくったのは「最後のマスカラ」。

それは人生のおしまいにつけるマスカラだった。

臨終を迎える前に栞は最後のマスカラを妹尾に
つけてあげた。

妹尾と同じ景色を栞も目撃していた。

ふたりともマスカラが滲む。
まるで世界が滲んでいるように。

🎇       🎇      🎇

久々に【毎週ショートショートnote】チャレンジしてみました。お題は「最後のマスカラ」です。
いつも難題のお題のまえに屈してしまい、へたれのわたしは、
なくなく撤退していたのですが。今日はなんとか書けそうな
気分でしたので、提出することにしました。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます💄



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