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【深沢の推薦図書】なぜ理系に女性が少ないのか(幻冬舎新書)

かつて大学・大学院で数学を専攻していたとき。
(もう30年近く前になってしまいます・・・)
次のような会話が当然のように私の周囲で飛び交っていました。

数学科に進学したら就職先は先生以外にない

もちろん現実はそんなことはありません。
しかしながら当時、このイメージはさも「当然のこと」のように存在しました。
目には見えない風土やイメージ、空気みたいなもの。
そんなものの力は私たちが想像する以上に大きなものかも知れません。

今回は1冊の書籍を紹介します。

『なぜ理系に女性が少ないのか』(横山広美・幻冬舎新書)

著者の横山さんは物理を専攻された大学教授とのことで、データに基づきこのテーマを論じてくださっています。いくつかキーワードを拾います。

論理思考や計算=男性というイメージ

数学力の差は男女の差ではなく、個人(特に幼少期の環境)の差で決まる

親のジェンダーステレオタイプ


要約すると、「なぜ理系に女性が少ないのか」の答えは、「目に見えないものが原因になっている」ということになりそうです。その目に見えないものというのが、冒頭で述べた風土やイメージ、空気みたいなものです。


一般論として、何か問題を解決したいとしたとき最も重要なのは「それが何の問題なのか」を定義することです。例えばビジネスで起こる様々な問題も、それが人の問題なのかお金の問題なのかマーケティングの問題なのかを明らかにしなければ解決しようがありません。(実際はほとんどが人の問題ですが)

それと同じように、「理系に女性が少ない」を仮に問題とするならば、これが何の問題なのかを明らかにすることが極めて重要です。私は本書を拝読し、イメージの問題と結論づけました。(もしかしたらあなたは違う受け止めをするかも知れませんがそれはそれで良いことなのでぜひ読んでみてください)

便宜上、ここからは数学を主語にします。

イメージの問題ならば、次は「数学のイメージ」とは何たるかを明らかにすることが必要です。

論理思考や計算=男性というイメージ

そうです。
数学とは男性のイメージなのです。よく考えればおかしな話です。
ここからは私見も含まれます。表現には慎重さが求められると思いますが、決してどなたかを攻撃したり、決めつけたりするものではないことを前提とします。少しだけ難しさがある論述ですが、このような記事をお読みになる皆様であればきっと正しく意図を掴んでくださると思います。

数学とは、知的なイメージがあります。
カジュアルにいえば、「数学ができる人はキレもの(頭のいい人)である」というイメージです。難問が解ける。推理できる。論破できる。これらはみんな頭のいい人ができることの代表格です。数学ができる人は頭のいい人なのです。

ではこれまでの(少なくとも我が国の)女性たちは、頭のいい人と思われたかったのでしょうか。周囲から知的な人だと尊敬されたかったでしょうか。もしかしたらそうではないかもしれません。ひょっとしたらこんなインサイトがあるのではないでしょうか。

女性は知的でない方がうまく生きていける

つまり女性は「数学ができない」と思われる方がトク

「数学ができる女」なんて可愛げがなくて男性から好かれない

可愛げがない女性は選ばれないしどこに行っても歓迎されない

いろんな意味で人生をうまく生きていくために邪魔になりそう

女性は「ワタシ数学とか苦手なんです。数学とかできる人ってスゴイなと尊敬しちゃいます」と言ってる方がこの世の中を生きていくためには好都合だ。

表現が難しいですね。ニュアンスは伝わるでしょうか。
適切な例かはわかりませんが、かつて「東京大学の女子学生はモテない(恋人ができない)」という言説を何度も聞いたことがあります。それがファクトかどうかはここで突っ込みませんが、少なくともそのような言葉を耳にしたことは何度もあり、それは私だけではないでしょう。いま私が述べていることはそのようなニュアンスに近いものです。

つまり、数学ができる人に女性が少ないという事象は見えない何かによって生じた「装われたもの」「なんとなくみんながそう仕向けたもの」「そういうものとした方がいろんな人にとって好都合なもの」なのです。
本当は女性だって数学はできるし、結果として理系にも女性がたくさんいるはずです。しかしそうなっていない。その理由はおそらくこのあたりにあるのでしょう。そのことを証明するキーワードがこの2つです。この記事で主題にした問題の主たる原因がどこにあるのか、なんとなく見えてくる気がしませんか。

数学力の差は男女の差ではなく、個人(特に幼少期の環境)の差で決まる

親のジェンダーステレオタイプ

私見はここまでにしましょう。このようなテーマに興味のある方はぜひ読んでみてください。繰り返しですが、著者の横山さんは物理を専攻された大学教授とのことで、データに基づきこのテーマを論じてくださっています。この記事よりもずっと丁寧に、説得力ある内容で読ませてくれます。何よりご本人が女性であること。そのあたりも本書を推薦する理由です。

余談。
イメージの問題はイメージでしか解決できません。
もしかしたら多くの女性、あるいはその親御さんにとって、理系に進む女子は(便利な言葉を使うなら)かわいく映っていないのかもしれません。

あんなかわいい女性になれるなら、ワタシも数学を勉強しよう

そう思われるような女性のロールモデルがやはり必要なんだろうなと個人的には。
もちろん理系に女性が増えることが、もっと言えば男女の比較論を持ち込むことがこの時代にFITしているのかというのはまた別の議論だと思っています。

今回は1冊の書籍をご紹介しました。

『なぜ理系に女性が少ないのか』(横山広美・幻冬舎新書)


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