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「17歳のパブコメ」から考える東京都の未来

7月7日に東京都知事選挙がありますが、都民の皆さんはどれくらい関心を持っているのでしょうか。テレビでは、国が進めようとしていることに都合のよい政策ばかり紹介して、これから都民が直面するであろう重大な問題については報じません。都知事選は、誰を選ぶかを考える前に、都民以外の国民も含めて、都の問題について考える機会にしなければならないと思います。

誰が都知事になっても、すぐに状況は変わらないでしょう。すべてを解決してくれるヒーローなんて、テレビや映画だけの話です。もし、今の状況とは逆の方向に進めようとする人が都知事になれたとしても、一人で闘うことはできません。圧倒的な世論の力がなければ、進めることは難しいでしょう。あるいは、その人が当選した途端に考えを変えることもあるかもしれません。ですから、投票したら終わりではないと思うのです。変えることは簡単ではないですし、多くの人が関心を持ち続けなければ何年経っても変えることはできないでしょう。関心を持ち続けるためには、誰に投票するかを考える前に、今、東京で何が起きているか知ることから始めなければならないと思います。

太陽光パネル義務化について

書きたいことはたくさんあるのですが、まだ完全には繁忙期を脱出していないので、以前掘り起こしだけしておいたものから書いていきます。

東京都は2025年4月から、新築住宅等への太陽光発電設備設置を義務づける新たな制度を導入します。

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/leaflet_new


これに関して、都の環境審議会の答申に先立つパブリックコメントが2022年5月~6月に行われたことを、都民の皆さんはご存じでしたか?


東京都内一戸建ての太陽光パネル義務化を答申 住宅メーカーなどが設置 賛否に世代間ギャップも
2022年8月9日 06時00分

一戸建て住宅を含む新築建築物に太陽光発電パネルの設置を義務付ける条例改正について、東京都環境審議会が8日、制度のたたき台となる基本方針を答申した。一戸建てへの義務化が実現すれば全国初。都議会での審議を経て、都は2022年度中の改正を目指す。
(中略)
東京都内の一般の新築住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける、都の環境審議会の答申に先立つパブリックコメント(意見募集)では費用負担への心配などから中高年世代の賛否が拮抗する一方で、30代以下は賛成が多数を占めた。気候変動への危機感についての世代間ギャップが浮き彫りになった。
(中略)

◆「建築コスト住民に跳ね返る」などの反対も
 太陽光義務化について、都が今年5月下旬から1カ月間募集したパブリックコメントでは、約3700件の意見が寄せられた。賛成56%、反対41%で、都民の意識は二分。反対が多かったのは50代、60代だ。
「新築住宅建設コスト高で住宅の新陳代謝が抑制される」「建築コストとして住民に跳ね返る」。こうした懸念に対し、都は初期費用の約100万円は、自家消費の電気代と売電によって10年間で回収できると説明。「メンテナンスの負担を強いられるのは不当」という不満には「パネル表面のほこりやごみは、雨風で洗い流される」と説いた。
◆「今しかみていない判断はだめ」とつづった17歳
 パブリックコメントで審議会が注目したのは若い世代の意見だった。20代未満は86%、20代は77%が賛成。「私は17歳です」と書かれた意見には、「今しか見ていない判断ではなく、地球環境が手遅れになった後、後世が受けなければいけない被害を忘れないで」とつづられていた。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/194659

私は都民ではないので知りませんでしたが、どのように告知され、どれくらいの方が結果を確認したのでしょうか。意見の概要は、下記のサイトで公開されています。

この中から前述の記事にあった、17歳のコメントに注目してみました。

第10回 カーボンハーフ実現に向けた条例改正のあり方検討会

参考資料3 ご意見の概要と都の考え方(詳細)(PDF:1,758KB)

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3

東京都の方、太陽光パネルを義務化するという案を出してくださって本当にありがとうございます。私は17歳です。地球温暖化のことを学ぶたびに、「こんなに深刻で、後始末が私達の世代に丸投げにされているのに、なぜ世界中で対策がこんなに不十分なの?」と疑問でいっぱいでした。今もです。政治参加のできない私にはどうすることもできませんが、どうか本当によろしくおねがいします。今の世代の一部の我慢
や不満があるから太陽光パネルの設置を見送るといった今しか見ていない判断ではなく、今後数世紀以上に渡る、地球環境が手遅れになったあとの、後世が受けなければいけない被害を忘れないでください。

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3

17歳で関心を持ち、パブコメを出すのは素晴らしいことだと思います。けれども、本当に考えなければならないのは、下記の部分ではないかと思いました。

「今後数世紀以上に渡る、地球環境が手遅れになったあとの、後世が受けなければいけない被害を忘れないでください」

太陽光パネルを設置することが、むしろ後世が受ける被害につながる可能性があると思います。

太陽光パネルには寿命があります。寿命を迎えた膨大な量のパネルの処分について、都はどこまで考えているのでしょうか。有害物質を含んだパネルの山を残すことになったら、それこそ後世への被害になるのではないでしょうか。

リサイクルをすると言っても、分離するのは簡単ではありません。リサイクルするためのエネルギーも必要になります。災害などで、予想より早く寿命を迎えるパネルが激増したら、処分は追いつくのでしょうか。リサイクルできないものの埋め立て処分の土地は、どうやって確保するのでしょうか。

令和3年度使用済太陽電池モジュールのリサイクル等の推進に係る調査業務 報告書 より

https://www.env.go.jp/content/900535815.pdf


太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版) 平成 28 年 3 月 環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部
より

https://www.env.go.jp/press/files/jp/102441.pdf


経済産業省 第3回 再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会
資料5 公益社団法人全国産業資源循環連合会 説明資料(PDF形式:2,522KB) より

https://www.env.go.jp/content/000041704.pdf


https://www.env.go.jp/content/000041704.pdf


https://www.env.go.jp/content/000041704.pdf


https://www.env.go.jp/content/000041704.pdf



【新築・中小規模制度】太陽光パネル設置に関するQ&A
令和6(2024)年4月30日

Q&Aでの東京都の回答

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/qa-2

下記は大雪による破損なので、東京都にはあまり関係ないかもしれませんが、雪国で被害にあったパネルの処分が増えれば、東京都の設置義務とも無関係ではないと思います。

https://www.nite.go.jp/data/000152469.pdf


原発のときも、高レベル放射性廃棄物の処理についてきちんと考えないまま使い始めてしまいました。

2023年10月、「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない」とする声明が地質学や鉱物学、地下水学などを専門とする27名の有志の呼びかけで、300名を超す専門家や教育者などの連名のもと発表されました。

今になって「適地はない」と言っていますが、太陽光パネルの処分でも同じようなことになる可能性があると思います。

そのほかにもパブコメには様々な意見が出ていますが、それについて都はきちんと向き合っているとは思えません。

以下、意見の一例です。

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3


https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3


https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3

意見に対する都の回答は、こんな感じです。

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/council-joureikentoukai-files-kentoukai0805_sankou3

「取り組んでまいります」という段階では、先のことまで考えているとは思えません。

アメリカ・カリフォルニア州では、「新築住宅への太陽光発電設置の義務付け」を2020年の1月から実施しましたが、すでに廃棄物の処理に関する問題が浮上しているという記事(2022年)もあります。

“This trash is probably going to arrive sooner than we expected and it is going to be a huge amount of waste,” said Serasu Duran, an assistant professor at the University of Calgary’s Haskayne School of Business in Canada. “But while all the focus has been on building this renewable capacity, not much consideration has been put on the end of life of these technologies.”
Duran co-wrote a recent article in the Harvard Business Review that noted the industry’s “capacity is woefully unprepared for the deluge of waste that is likely to come.”

https://www.latimes.com/business/story/2022-07-14/california-rooftop-solar-pv-panels-recycling-danger

「予想よりも早く膨大な量の廃棄物となるだろう」「今後発生するであろう廃棄物の大量発生に対する対応能力は悲惨なほど不足している」とカナダのカルガリー大学 ハスケーン・スクール・オブ・ビジネス の助教授セラス・デュラン氏は語っています。

そしてこれは、カリフォルニア州だけの問題ではなく、全国的にも問題となっているとも書かれています。

日本では、各地にメガソーラーもどんどん設置されています。東京都の義務化で設置されたパネルやこれらのパネルが寿命を迎えたとき、本当にきちんと処分できるのでしょうか。

私には、有害物質を含んだゴミの山が残された土地を前に「こんなものを残して!」と私たちを恨む人たちの姿が浮かんでしまいます。

ソーラーパネルを義務化してまで設置することは、本当に地球に優しいのでしょうか。

<参考>

東京都のリーフレットなどには、メリットしか書かれていません。だから17歳の方も、賛成意見を出したのではないでしょうか。

このやり方は、まるでコロナワクチンのリーフレットのようです。デメリットもあるものについてメリットしか伝えないのは、本当に都民のために行おうとしていることとは思えません。

パンフレットのダウンロードはこちら(PDF:3.6MB)

本来なら、テレビなどのメディアがこのような情報を提供するべきですが、全く機能していません。他の問題についてもたくさん書きたいことがありますが、まだ時間があまりとれません。皆さんが考える東京都の問題について、ハッシュタグで共有していただけたら嬉しいです。候補者の誰がいいとか悪いとかではなく、まずは「何が問題」かを一緒に考えましょう! 

#みんなで都知事選 #脱・無関心

誰に投票するかは自分で決めることが大切だと思いますが、いろいろな人が考える都の問題について知ることが、誰を選ぶかの参考になるはずです。

私は都民ではないので、前回の都知事選までは本当に無関心でした。ですが、東京都で進められることは、いずれ他県でも進められるでしょう。様々な法律が知らないうちに決められているのは、私たちが無関心だったからできたことだと思います。国民が無関心でなくなれば、今までのようにはいかなくなるでしょう。そのためには、「数の力」が必要です。都民で選挙権がある方は、どうか選挙に行ってください! 

ハッシュタグが反映されません! なぜだろう・・・
→文字数が多かったみたいです(汗)。
「みんなで(考える)都知事選」にしました!

下記のサイトで、各候補者の考えや活動が発信されています!