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従来の風邪まで5類にして、医療現場は対応できるのか?

厚生労働省は、今年度中にも新たな区分「急性呼吸器感染症(ARI)」を設けてインフルエンザなどと同じ「5類」として扱い、全国の定点医療機関に患者数を報告させる方針を決めたという記事を見て驚きました。それに関するパブリックコメントも募集中です。この件について考えるためには、本来は分類外になったはずの新型コロナを政府が強引に5類にしたことを知っておく必要があると思います。


「法の適用対象でなくなった」=「5類」ではないはず

以前の記事で、政府は5類移行について必要な説明をしなかったことを取り上げました(下記参照)。

重要な点だけ振り返ります。

厚労省のサイトで公開されている事務連絡(令和3年2月10日付)には、下記のように書かれています。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の改正について(新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律関係)」に関するQ&Aについて
事務連絡 令和3年2月10日

【1 新型コロナウイルス感染症の法的位置付け】
(略)
〇 こうした中で、指定感染症の指定期限(令和4年1月 31 日)以降も現在実施している措置を継続できるようにする等の観点から、新型インフルエンザ等感染症に位置づけることとしたものです。なお、厚生労働大臣が新型インフルエンザ等感染症と認められなくなった旨を公表すれば、法の適用対象でなくなります。

https://www.mhlw.go.jp/content/000737653.pdf

厚生労働大臣が「新型インフルエンザ等感染症と認められなくなった」と公表すれば、「法の適用対象でなくなる」と説明しています。

そして2023年1月27日に開催された厚生科学審議会では、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」について「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある状態とは考えられないことから、新型インフルエンザ等感染症には該当しないものとする」ということで話がまとまったはずです。

議事録より

○江浪結核感染症課長 
3ページの頭にございますが、新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく私権制限に見合った「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」がある状態とは考えられないことから、新型インフルエンザ等感染症には該当しないものとし、5類感染症に位置づけるべきであるとしてございます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31238.html

5類移行とセットで話が進んでいる点がおかしいのですが、たしかに「感染症法に基づく私権制限に見合った状態ではない」と言っているのです。この時点で、法の適用対象外となっているはずでした。厚労大臣が法に則って「新型インフルエンザ等感染症と認められなくなった」と公表しなければならないはずなのに、厚労大臣は公表しなかったのです。

そして、2023年4月27日の感染症対策本部では、下記のように決まりました。

令和5年4月27日

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針の廃止について

第 44 条の2第3項の規定に基づき、厚生労働大臣から、令和5年5月
7日をもって同法の新型インフルエンザ等感染症と認められなくなる
旨が公表され、
これに伴い、同月8日に同法の5類感染症に位置付けら
れる
こととなった。

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/kihon_r_050427.pdf

「分類外にあるものが、法の適用対象でなくなった」とは言わず、なぜか「5類になった」と言っています。「法の適用対象でなくなった」=「5類」ではないはずです。

厚労省の資料では、下記のように説明しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001070844.pdf

「新型インフルエンザ等感染症と認められなくなった」なら、本来は「新型インフルエンザ等感染症」の箱から出すだけなので、下記のようになるはずです。

「5類に下げる」という言い方で国民を騙すようなやり方は、国民に正しい情報を伝えているとはいえません。

もしこのときに、本来の手順どおりに厚労大臣が「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある状態とは考えられないので、分類外となりました」と大々的に発表していたら、今のように必要以上にコロナを恐れる人はもっともっと少なくなっていたのではないでしょうか。

風邪で亡くなる高齢者もいますし、基礎疾患のある方にとっては命に関わることもあるので、風邪を軽視しているわけではありません。ですが、コロナ前はアクリル板などなかったですし、マスクが今ほど重要だとは言われていなかったと思います。この差は、厚労大臣がきちんと公表せず、5類に分類してしまったことが大きく影響しているのではないでしょうか。

厚生科学審議会ではっきりと、「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある状態とは考えられない」と言っているにも関わらず、テレビではまだ怖いものだという印象操作を行っています。ワクチン接種後の健康被害については取り上げないのに、定期的に「コロナの陽性者が増えた」といっておなじみの医師が登場して、同じことを繰り返すだけです。この偏向報道は、どう考えてもおかしいと思いませんか? 

2021年に発売された『ゼロコロナという病』(藤井聡、木村盛世著)には、テレビ朝日の「モーニングショー」という番組から木村氏に出演依頼があったとき、「この新型コロナ、ガンガン煽って、ガンガン行きましょう」という趣旨のことを言われたと書かれています。煽って連日取り上げれば視聴率が上がるから、儲かるという意味です。このような方針に納得している医師や専門家と呼ばれる人だけが、テレビに出て偏った情報を流し続けています。

アメリカでは、感染対策を主導していたファウチ氏が下院委員会公聴会で、ロックダウンやソーシャルディスタンスなどの対策に科学的根拠がなかったと激しく非難されたことが大ニュースとなりましたが、それも日本のテレビはほとんど報じません(下記参照)。

ファウチ氏は、ロックダウン中に隣の人と距離も取らずに野球観戦を楽しんでいました。本当に怖い感染症だったら、国民にステイホームするように指示しているのに、自分は野球観戦を楽しもうという気持ちになるでしょうか? 

https://www.youtube.com/watch?v=W8AU5NFTDfg

テレビで取り上げないということは、知られると都合が悪いということです。ファウチ氏はオーディオブックではっきりと、「生活を制限することで、義務という言葉を使わなくても人々はワクチン接種をするようになる」という趣旨のことを言っています(下記参照)。つまり、怖いと思わせて、不自由な生活をさせたことは、ワクチン接種のためだったのです。

「コロナは風邪とは違う、後遺症があるから」という意見も見かけます。けれども、テレビで取り上げないことは、自分が経験したり、自分で調べようとしなければ知る機会がありません。例えば、コロナ前にも、風邪による味覚障害などの後遺症はあったのです。

下記は、2018年の記事です。

大手メディアは、必要以上にコロナを怖がらせるための煽り報道をするのではなく、厚労大臣が「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある状態とは考えられない」と認めたことを、広く伝えるべきだったと思います。

それをしなかったメディアが今も報じ続けていることを、信じることができるでしょうか。

熱もないのに検体提出!?

そして今度は、新たに「急性呼吸器感染症」という区分を作り、従来の風邪まで含めて5類に分類されてしまうことになりそうです。これは国民のためなのでしょうか。医療従事者の皆さんは、こんなことを望んでいるのでしょうか。「せきや頭痛・鼻水などの急性症状」の患者数を定点把握したいのは、誰なのでしょうか。

せきや頭痛・鼻水などの急性症状想定「急性呼吸器感染症」の患者数を定点把握…今年度中にも  読売新聞  2024/07/09 18:09

国や自治体が行う感染症発生動向調査について、厚生労働省は、今年度中にも新たな区分「急性呼吸器感染症(ARI)」を設け、全国の定点医療機関に患者数を報告させる方針を決めた。国際基準に合わせ、せきや頭痛、鼻水などの急性症状を伴う患者を想定している。ウイルスや細菌など病原体を問わずに幅広く報告を求めることで、呼吸器感染症全体の広がりを早期に把握することを目指す。

ARIは、のどや肺の炎症などを招く感染症の総称で、インフルエンザや新型コロナウイルス、RSウイルスなど、従来から個別に調査している感染症も含まれる。ARIの患者数と、継続して調査するインフルエンザや新型コロナの患者数との比較や、病原体のゲノム解析を行い、未知の感染症の流行把握も狙う。

感染症法は、感染症を危険度の高い順に1~5類に分類している。ARIはインフルエンザなどと同じ「5類」として扱う。

 8日の専門家部会に案を示し、了承された。委員からは「定点観測を行う医療機関や自治体の負担にならないよう、ARIの定義をしっかり定め、周知して始める必要がある」などの意見が出た。

https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240709-OYT1T50149/

もう「了承された」と書かれています。いつのまにか決められていたのです。

下記は、第86回 厚生科学審議会(2024年7月8日開催)の資料です。

【資料1】急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスに係る具体的な方針について

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001272561.pdf

「急性呼吸器感染症は、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)あるいは下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称」と書いてありますが、「急性上気道炎とは、いわゆる“かぜ症候群”のことです」と日医ニュース(企画:日本医師会)に書かれています。


https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/203.pdf

38℃以下というのが自宅療法の目安です。

それなのに、厚労審議会では「発熱の有無を問わない」定義 としてはどうかと話し合われているのです。

こんな定義で、医療現場は対応できるのでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001272561.pdf

従来の風邪まで5類に入れることを、医療現場で働く方たちは知っているのでしょうか。学校や介護施設はどのような対応をすることになるのでしょうか。子どもを保育園に預けている保護者の方たちは、どのような対応が必要になるのでしょうか。

2024年8月17日までパブコメ募集中

すでに了承されてしまっていますが、無関心でないことを示すためにも意見を出す意味はあると思います。特に、医療従事者や学校、保育、介護などの現場で働く方たちは意見を出しておく必要があるのではないでしょうか。

第1条に急性呼吸器感染症を追加し、指定届出機関(法第 14条の2第1項の指定届出機関をいう。以下同じ。)の管理者による発生の届出及び指定届出機関の管理者による検体等の提出の対象とすることとする。

省令案の概要より

省令案の概要を見て、ワクチン100日ミッションについて書いた下記の記事を思い出しました。5類に分類することにより、検体を提出させることが目的なのではないかと思えてきます。

※CEPIとは、将来起こり得る感染症に対するワクチンを開発するため、2017 年のダボス会議で発足した、公的機関、民間企業、慈善団体、市民団体などが連携する革新的なパートナーシップ。日本は、CEPI 創設時の資金提供国でもある。

CEPI の 5 か年計画は、35 億ドルのロードマップとして、ワクチン開発期間を 100 日に短縮し、新型コロナウイルス感染症と他のベータコロナウイルス属感染症に広範に対応できるワクチンを開発し、既知と未知の病原体に対応するワクチン候補の「 ライブラリー 」を作るとい うものです 。

https://cepi.net/japan-pledges-us300-million-cepis-pandemic-preparedness-plan-0

ワクチン候補の「ライブラリー」を作るために、たくさんの検体を集めたいのではないでしょうか。


従来の風邪まで5類に入れたら、医療現場や人々の生活はどうなるか考えなければならないと思います。無関心でいては、どんどん不自由な生活を強いられるようになってしまうのです。実際に、自由や権利が失われる法律などがどんどん勝手に決められています。

パブコメ(氏名などは任意)が初めての方などは、何を書いたらいいかわからないと思ってしまうかもしれませんが、どんな書き方でも大丈夫です。新型コロナが5類へ移行する際のパブコメ結果を見てみると、参考になると思います。

意見公募結果概要