PMDAのサイトで、レプリコンワクチン(Meiji Seika ファルマ)の審査報告書が公開されていました。報告書を見ると「特例承認に係る報告書」とは書いていないので、特例承認ではないようです。けれども通常より短期間で承認されており、特記事項に「優先審査」と書かれています。緊急事態ではないのに、なぜ「優先審査」をする必要があるのでしょうか。
「コスタイベ筋注用」審査報告書
前回の記事では、ベトナムでの臨床試験やそれを受けてのベトナム保健省の反応などについて書きました。
SNSではまだ勘違いしている人がいるようですが、レプリコンワクチンの接種が開始されるのは2024年秋冬の予定です(下記参照)。
審査報告書は下記のページで公開されています。右端にあるので、見つけにくかったです。
コスタイベ筋注用審査報告書
3ページ目に特記事項として、下記のように書かれています。
以下、令和 2 年 4 月 13 日付けの事務連絡を確認しました。
新型コロナウイルス感染症の発生に伴う
当面の医薬品、医療機器、体外診断用医薬品及び再生医療等製品の
承認審査に関する取扱いについて
2023年1月27日開催の厚生科学審議会感染症部会で、江浪結核感染症課長が「新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく私権制限に見合った『国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ』がある状態とは考えられないことから、新型インフルエンザ等感染症には該当しないものとし、・・・」と言っています(下記参照)。
すでに「当該感染症が生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあり、承認された医薬品等がない」状況ではないと厚労省も言っているのに、なぜ優先審査の必要があったのでしょうか。
技術的なことはわかりませんが、以下、審査報告書から気になった部分を引用します。
やはり2023年10月現在、ベトナムでは承認されていないということです。2021年8月2日付の記事には、「臨床試験が中間評価で成功したと評価されれば、年末までにベトナム保健省により緊急使用許可(EUA)が出る予定」と書かれていたのに(下記参照)、まだ承認されていないのです。なぜ承認されていないか、考える必要があると思います。
一般的な添加剤の使用前例としては取り扱わないことが適切であると判断したのに、感染症予防ワクチンでは使用されることが許容されています。
黒塗り具合は、ファイザー社やモデルナ社よりは少ない印象ですが、いろいろ気になります。
独立した安全性薬理試験は実施されていないのに、「本剤の安全性について特に懸念事項はないものと考える」と言っています。
ARCT-021は、変異を含んでいないものです。
レプリコンは世界初の技術なのに、いろいろ実施していない試験があります。「懸念」がなくても、万が一ということを考えて試験を行うように指摘するのが審査だと思っていましたが、そうではないようです。
以下の説明を読んで、前回の記事で気になっていた、プラセボ群についてわかりました。
※プラセボは生理食塩液と書かれています。
プラセボ群も2回目接種の2ヶ月後には、「本剤」を接種されているのです。理由は下記に書かれていました。
多くの国民が接種できる状況になったのに、コロナ感染のリスクが高い高齢者などにワクチンを接種しないことは「倫理的に問題がある」と判断したようです。
ベトナムでの臨床試験はボランティアだったようなので、それも関係しているかもしれません。
当初の予定より人数も少ないので、条件等は変わったかもしれませんが、レプリコンワクチンについてどこまで説明がされたのか気になります。
「本剤-プラセボ群」(92日までワクチン群)と「プラセボ-本剤群」(92日までプラセボ群) と、ややこしい書き方をしていますが、このように書いていても、Day92~Day210はもう「プラセボ群」とはいえないと思います。
また、因果関係の否定というのは、どのような判断なのでしょうか。「他の特定できない死亡」とは何なのか気になりますし、急性心筋梗塞はファイザー製などの接種後に多数起きてます。
販売開始後に接種して健康被害が起きたら「因果関係の評価不能」となるのに、こんなに簡単に「否定」できるものなのでしょうか。
Day1~92のプラセボ群でCOVID-19による死亡が9例もあることが気になっていたのですが、それについても詳細は書かれていません。
これで納得してしまうなら、審査の意味などないのではないでしょうか。
ファイザー社のワクチン(コミナティ)に関する安全性の検証もきちんとされていないのに、それと同様といわれても説得力がありません。
基礎疾患については、臨床試験参加者募集の除外基準も確認しておく必要があると思います。
以下、機械翻訳による一部引用です。詳細は上記サイトでご確認ください。
ベトナムでの臨床試験参加者の除外基準(一部)
妊娠中または授乳中。
免疫抑制または免疫不全状態、無脾症、再発する重度の感染症、または HIV 陽性であることがわかっている。
臨床的に重要な急性または慢性の基礎疾患または身体検査所見で、治験責任医師の意見では、参加が参加者の最善の利益にならない(例:健康を損なう)、または予防、制限する可能性がある、またはプロトコルで指定された評価を混乱させる可能性がある。
スクリーニング前の6か月以内に、細胞傷害剤または全身性コルチコステロイドを含む免疫抑制療法(例えば、癌または自己免疫疾患)による治療を受けている、または研究全体を通じて予定されている治療を受けている。
最初の研究ワクチン投与前の3か月以内に全身免疫グロブリンまたは血液製剤を投与されたか、または研究中にそのような製品を投与する予定がある。
除外されているということは、これらの人が接種したデータはないということです。
前述しましたが、このワクチンが承認されているのは今のところ「日本だけ」です。それが何を意味するのか、考える必要があると思います。
コスタイベ筋注用審査報告書