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梅雨、宇治、紫式部。

書店で『源氏物語』の特集コーナーがあった。

と、ここは宇治の書店であり、今日は市内から足を伸ばしてきた先に、この本屋があったのだ。
宇治、といえば、源氏物語の宇治十帖。まぁ、私はそこまでは読んだことがないので偉そうなことは言えないのだが。

で、軽く周囲を睥睨、然し、無論、誰も私など気にしていない。
いい書店である。何より、こう、特集コーナーなどが充実していたり、POPや装飾に工夫があり、好感が持てる。
私は、こういう好感が持てる書店が大好きだ。紫色のお花の装飾が飾られていて、世界観が構築されている!
ふと見ると、このPOP関連での表彰状がそこに飾られていた。素晴らしい仕事は誰をも感動させるわけか。

で、私は、いつもならばスルーする『源氏物語』関連の本を物色した。
『源氏』といえば、谷崎潤一郎であり、川端康成である。この二人、どこか自分を光源氏に重ねてはいまいか。特に前者。
谷崎は『源氏』を翻訳したし、川端もそれを企てていたわけで、二人は『源氏物語』大好きっ子、『夢の浮橋』(谷崎の)は私も大好きな作品だが、二人共、糺の森のその裏手、ほぼほぼ同じ町内くらいに、巨大な邸宅にて暮らしていたわけで、京都代表の二人である。
谷崎は『今様源氏』を企てていたわけで、まぁ、御自身も私生活光源氏だったので、架空の人物と自分を混同していたのではあるまいか…。

谷崎、といえば、40代から古典回帰して、『少将滋幹の母』など、これも平安時代、重要なのはうんこの話であり、うんこ、そして、不浄観、この2つで構成された物語である。

谷崎、といえば、S&Mで語られがちだが、まぁ、スカトロジストでもあるので、人間の文字通りの汚い部分が大好きなのだ。『過酸化マンガン水の夢』でもうんこの話をぶっ込んでくるし、初期の『悪魔』も風邪を引いた女性がかんだ塵紙をー的な話なので、まぁ、変態である。
何と言ってもうんこ、と、いえば、『武州公秘話』の厠談義であろう。ここで、中国の厠で、蛾の翅を敷き詰めた高貴な人のためのお便所話は大変勉強になる。谷崎は、うんこ、において、常に一家言ある。これは重要なことである。スカトロジーこそ真理なのであるから。ちなみに、『武州公秘話』は傑作である。これは、『春琴抄』や『細雪』なんぞよりもよっぽど良い。あ、そういえば、『細雪』も、最後は美しいヒロインの下痢で終わるのであった。

まぁ、そんな源氏、やはり、識らない人間には、こういう、入門本的な、しかも、イラストがふんだんに載っているものから筆下ろし、というのがいいのかもしれない。だって、谷崎源氏ですら読むのが億劫なんだから。『光る君へ』、を観て、勇んで購入した人の9割が積読になること請け合いである。

そういう意味では、新装版の『あさきゆめみし』が並んでいて、これもまた、入門としては手っ取り早い。
やっぱり、漫画、というのものは、小説と比べて読者側の省エネ感が半端ない。私は、漫画、というものはほとんどの小説を圧倒していると思っている者だが(一部の究極の文章芸術には及ばないものの)、やはり、読み手としても、カロリー低めの漫画の方が、その世界に入っていきやすい。

そして、この表紙もヤバいと思われるが、そのようなヤバい源氏をテーマに現代的視点で見つめるこの本も並んでいる。

まぁ、現代、というのも、この1秒先には過去に変質するものであるから、この本も100年後に読めばまた一つの時代の資料となるのであろう。
時の流れは無情なのだ。何よりも1000年という長きに渡る時、つまりは千年パズルなのである。

で、まぁ、こういう本も並んでいる。

平安貴族。確かに、なんとなく平安貴族というイメージは私の脳内に固定されているが、然し、それはあまりにもステレオタイプの勘違い貴族なのだろう。まぁ私は精神的貴族ではあるが、このようなモノホンの貴族共のことはよくは識らない。なんとなく、男は蹴鞠を、女は扇で口元を隠している、そんなイメージである。和歌を送り合ったり……しょうもないイメージしか持っていないのである。

そういう勉強、という意味でも、この本を買おうかと一瞬逡巡したが、止めた。そういえば、押井守は、僕ほど飛鳥時代に詳しい人間はいない、と言っていた。古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、というのは、情報が少なすぎるため、時代考証などが死ぬほど大変であり、また、観る側も知識に乏しいため、需要がない。よって、大河ドラマの候補になることはなく、衣装なども少ないため、制作したとて金がかかるのだという。だが、アニメーションでは描けるのだという。

まぁ、そんな感じで、平安時代は、あまりにも多くの人間が識っているため、最早、私が識る意味はない(どーいう理屈だ)。

さて、私は、わずか5分の書店散策(家族連れだから、一瞬なのだ)において、ある書物を発見する。

まぁ、漫画である。
私はこの表紙、つまりは、紫式部だから髪の毛が紫なのだろうか、というその点のみが気になり、結果購入に至った。
そして一読し、まぁ、アホな漫画だなぁと思いながらも、楽しませて頂いた。紫式部を同人誌を書く神として描いているのだが、彼女と友達になる小少将の君が腐女子として登場し、神=紫式部を崇め奉りながら、私は頭中将と源氏のカプ推しとしてその腐女子っぷりを遺憾なく発揮する。
まぁ、文学好き&オタク(漫画大好き、同人誌などに興味がある)人には刺さる漫画だろう。

ちなみに既刊は4巻まで出ているのかな?これはまた読む漫画が増えて困ったなぁ。ちなみに、なんとなく、読んでいて『刷ったもんだ』を思い出す。これも途中で止めてるから読まないとなぁ……。


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