伊鞠

ショートコラムと小説。 読むのも書くのも好き。

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  • 【連載小説】ダメな子

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最近の記事

ダメな子③~溺れる~

「店長ーーー!店長ぉーーーー!」 「おお、ユキちゃんどうした?テンション高いな」 「店長!良介と付き合ってる!」 「なにっ…マジか!なんっだお前ら、早すぎやっし!」  もう、世界中の人に言って歩きたい。幸せすぎて、死ねる。 ***  あたりが暗くなると、私の心は騒ぎだす。  寮で適当に夕飯を済ませ、彼のアパートへ走る。夜を一緒に過ごし、朝別れる。裸で抱き合う感覚が猛烈に好きで、こんなこと初めてで、夜が楽しみで仕方なかった。毎日繰り返しのこのルーティーンが

    • 過去の自分をまるごと愛すなんてまだできません

      ------------------------------------ この記事は 2022年1月に書いたものです ------------------------------------- 朝からとんでもないモノを発見してしまいまして… なんというか、イタイを通り越して、絶句、でしょうか。 「見たくない!ギャー!!(でも見ちゃう)」 そんなんじゃないです。 ま じ で 見 た く な い ! でも、見ちゃったんですよね…。 見た後、50mぐらい穴掘って籠ろうかと思

      • ため逝き

        いやになる。 心底いやになる。 私はいつも地味な女子で でもそんなに地味とは思ってなくて、 グループに属したことはないけれど ぼっちでもない。 だから ギャル、みたいな ヤンキー、みたいな、 髪を染めちゃうような 校則をやぶっちゃうような人が 羨ましかった。 いいな、と陰から見てた。 自由になれた大人時代は ちょっとでもカッコよく見られようと バンドマンのライブやフェスに行くようになった。 奇抜なファッションをして 目立つ格好をしていた。 当然目立った。

        • 中ライスくん(3)

          彼が店に来なくなり、5ヵ月が経った。 就職を控えたあたしは、バイトを辞めることにした。 裏であーだこーだ世間話をし 客をからかうのが好きなオバちゃんたちのことは そんなに嫌いではなかった。 明るくふるまうあのひとたちを バイトをはじめてすぐよりも、好きになっていた。 ひとをバカにしてるんじゃなく 毎日毎日おんなじことの繰り返しのパートの仕事に ちょっとでも楽しさを見出せるようにと オバちゃんたちなりの工夫なんだって気づいたのは 辞めることを申し出た後だった。 半年

        ダメな子③~溺れる~

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        • 【連載小説】ダメな子
          3本
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        • 【連載エッセイ】ブスと呼ばれて
          2本

        記事

          中ライスくん(2)

          50代と10代とじゃあ 考えることもまるで違うんだねぇ。 じぶんの欲ばかりを押し通すひとより 目の前のひとに幸せになってほしい。 そう思うのはキレイごとなんだろうか? ブォォォォオ… 雨でも中ライスの彼は来る。 今日は砂埃じゃなく、水たまりのしぶきが飛んでいた。 「唐揚げと中ライス、お願いしまーす!」 いつも通り、注文をもらう前にオーダーを厨房に投げる。 「大ライスもあるからねー」 懲りないオバちゃんたちは ケタケタ笑いながら手を動かしている。 「ちーす、」

          中ライスくん(2)

          中ライスくん

          ひとを観察するのは面白い。 見てて飽きることがない。 暇になることもない。 だから自然と、 ひとに目がいく。 空っ風がふく9月。 木枯らしにはまだ早いでしょうよ、 外の天気をモロに受けるこの店のバイトは、 ナマアシなんかぁ、出せるワケない。 「鎌田さーん、この海苔弁、追加で並べといてー」 「あ、カマちゃん、これも一緒に」 奥から威勢のいいオバちゃんたちの声が響く。 「はぁーい、」 この店で若いのはあたしだけ。 だからチョコチョコと小間使いにつかわれる。 暇が大嫌

          中ライスくん

          恋の記憶

          pe'zという名前が目に入った。 15年ほど前に聞いた音楽だろうか。 久しぶりに聞いてみると ジャズの音楽。 ああ、これは 昔付き合っていた彼と聞いた曲。 そんな気がした。 音楽は 五感の中でとかく 思い出を彷彿させる。 当時のそのままを ありありと。 情景や、においまで。 あれ、 待てよ。 これは本当に 彼と聞いた曲か? もう少し 曲と記憶をシンクロさせる。 ああ、 違った。 どこかの飲み屋で聞いた音楽だ。 だけどそのお店にもまた

          恋の記憶

          共感の強要という、偽善者

          「共感の強要」 リップスラ〇ムの歌詞にでもでてきそうな言葉。 何を隠そう、私が今まで投稿でやってきたことだ、 悲しいかな、無意識に。 そう、せっかく読んでくれる人に対して 「うわぁ…反応しづらい」 そう思わせていたらしい。 するとコメントもつかず 「あぁ、また私は孤独だ」 そんな思いに陥って自己嫌悪、負のループ。 事の発端はコレ。 ”佐藤有斐は繊細さんだ”ということ。 いやいや、ガサツでズボラで汚いところでも平気な私が まさか、 まーさーかー、 あの繊細さん?

          共感の強要という、偽善者

          シンプル、という罠

          今、家事代行を月1でお願いしている。 ただの家事代行ではなく 片付けや整理収納アドバイス インテリアのアドバイス そちらの教えがハンパなく良くって 掃除よりもアドバイスをお願いする時間が増えてきた。 Aさんという、可愛らしい女性。 おそらく同世代だろうか。 「ちょっと失礼かもしれませんが、お話しておきたくて」 申し訳なさそうに彼女が切り出してきた。 「私、昔から、その人のお宅や部屋に入ると  その人らしさをすごく感じるんです。  でも、アイさんからはそれが感じられな

          シンプル、という罠

          たのしみにまつ、ということ

          いつも朝8時20分は 車の中でEテレをつける。 子どもたちを、幼稚園に送る時の6分ルーティーン。 そこでたまたま流れたのは 元SMAP3名が出ていた 「わるいこいるかな」こんなタイトルのやつ あ、タイトル全然違った。 すごくシュールで 私こういうの好き。 あの、すべってるような、すべってないような ギリギリのラインを攻めてるとこが。 乾いた笑いを誘うとこが。 で、 後から調べたら これね、 事前告知が一切なかったそう。 驚いたよね。 告知告知の世の中で

          たのしみにまつ、ということ

          世界はわたしひとりなんだ。

          【世界は私ひとりなんだ】 それは孤独という意味ではない。 目の前に起こる出来事は、全部私が引き起こしてる。 そう言うと、なんだかネガティブな感じに聞こえるけど。 ** きっかけは、1冊の本。 よくさ、 ”相手は鏡だ” ”自分の感情が動いた時がチャンス” ”自分が怒ってるから嫌な現実が引き寄せられる” こんな言葉があるじゃない。 そんなの、もう10年近く聞いてるわけで。 ”神様とのおしゃべり”だっけか、 それで、”自分の観念を手放す” 嫌な出来事があったら、自分

          世界はわたしひとりなんだ。

          変態

          ”世界はわたしひとりだ” この記事を、どこかに書きたい! そう思った時 Facebookを選んだ。 一番好きだから。 書きやすいし、反応がすぐ来るのが嬉しい。 苦手な画像も貼らなくていいし あの小さい文字も好き。 本来 自分の核に触れるような濃い話は メルマガとか ”超クローズの場で” ”ファンのために” そうするのが ビジネスのセオリーかもしれない。 でも、 私にとっての発信って ”たまたま見かけた” ”通りすがりですが” そんな人にも届いてほしいと思ってい

          「悩みを聞いてほしいんだけど」

          ここ数日、悩んでいたことがあった。 それを解決しないと わたしは前に進めないきがして。 どうしよう、 誰に相談しよう 誰に頼もう、 誰に、お金を払おう そんなことを ぐるぐると考えていた。 幼少期のトラウマを解決しないと わたしは前に進めないらしい。 うまくいかない原因は 過去の自分に、ある、と。 思い当たる節はあった。 愛されていない 自己否定 どうせ・・・ 厳しい先生 怒られるのがこわい そうだよな、 なおさないとな さぐらないとな もぐらないとな 自

          「悩みを聞いてほしいんだけど」

          おしゃれでいたいのにボロが出る

          なるべくnoteでは 着飾った自分でいたかった。 気づいたらあけすけに自分のことをおっぴろげて 上品さのかけらもなく もともと上品なんてものは持っていないけど 品行の悪くなる自分に嫌気がさしていた。 もともと奇抜なファッションが好きで 原色モノや 民族モノが大好きだった。 ある日とつぜん、 かわいいフワフワの服が着たいと思い立ち 慣れない”かわいい”お店に行って 服を数点買ったものの 家に帰って鏡で見たら その服に見事に”着られていた”自分が なんだかひどいありさ

          おしゃれでいたいのにボロが出る

          人と会うことの新たな目的

          オンラインばかりの世の中で 人と会うことは貴重だ。 リアルで会うことの良さを絶賛する人が多い中 リアルで会うことのめんどうさも、たびたび感じる。 会うことが、すべてなのか? 会うことを、否定してもいいのではないだろうか? リアルが絶賛される世の中に 少しだけ首をかしげる。 会うことが、楽しい。 それが、会うことのメリット。 いや。 それだけじゃない。 オンラインよりも、 そんな仮想で生ぬるい世界よりも リアルはハッキリと現実を見せつけてくる。 つまり、

          人と会うことの新たな目的

          記憶の棚卸し▶▶母と祖母

          母と、母方の祖母の話。 家に一緒に住んでいた、父方の祖母のことは おばあちゃんと呼んでいた。 母方の祖母のことは 「ババ」と呼んでいた。 今でこそ、”ババ”というネーミングはメジャーになったが 30数年前、祖母のことをババと呼ぶなんてことは 誰一人していなかった。 友達の前で”ババ”と呼ぶのは恥ずかしかったので 唯一来てくれた祖父母参観では その場しのぎに「おばあちゃん」と呼んでいた気がする。 ババの晩年は ガンだった。 高校生だった私は 自分の高校と、ババが入院

          記憶の棚卸し▶▶母と祖母