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グラフィック・デザイナー(50代)の苦悩 テーマ#03 見た目について思うこと

みなさん、こんにちは。フリーランス・グラフィックデザイナー(50代)のブブチチと申します。デザインを生業にして30数年。気がつけばシニアと呼ばれるにふさわしい年齢になっていました。noteでは、デザイナー人生においての出来事や学んだ事を自身の体験を交えながらつらつらと自由に書き連ねています。お時間ございます時にゆるくご一読いただければとても嬉しく思います。


いかがお過ごしですか。滋賀は久しぶりの雨空模様。ここしばらくの猛暑で目に見えて減ってきていた琵琶湖にも再び水位が戻りつつあります。水鳥も魚もひと安心。

さて、今回のテーマは「見た目について」です。

服装ひとつで損をするのは勿体無いよ。

先日、知り合いのデザイナーが「服装のことでクライアントから嫌味を言われた」とたいそう不満そうに僕に話し始めました。その日は少し大きめの競合プレゼンだったそうです。彼曰く、クライアントの担当者とは以前から取引がある関係で、いつもはお互いがラフな格好で打ち合わせ等をおこなう気心知れた仲だったということ。

が、当日のクライアント担当者は珍しくきちんとネクタイをしたビジネススタイル。その他の方々もスーツを基本としたビジネススタイルで彼のプレゼンテーションを待っていました。ところが肝心の彼はと言うと、いつものお気楽ファッション(Tシャツ、サンダル)でプレゼンに登壇。意気揚々と一通りのプレゼンが終わった彼に対してのクライアントからの第一声が「個性的なファッションですね・・」だったそうです。

「俺の格好のことよりも提案しているデザインの方に集中してほしいよ。それにだいたい服装も俺の個性のひとつなんだから文句言われる筋合いはないよな」と僕に同意を求める彼。

・・・困った(苦笑)。

彼の考え方についての是非をここで語るつもりはありません。それは極めて主観的な価値観の問題でもあるから。でも、こんな時必ず思うことがひとつあるんです。

「なんて勿体無い」って。

彼もフリーランスのデザイナーで、僕がクライアントとの関係性維持を大切にするように(グラフィック・デザイナー(50代)の苦悩 テーマ#01  存在が薄まっていく怖さ)、彼もまたクライアントとの関係性維持のために彼なりの方法で労力を注いでいました。ゴルフや釣り、時には夜のお店に接待したり。もちろん肝心のデザインワークだって、こだわりをもって一生懸命やっていたと思います。そんな彼を知っていたから、なおさら勿体無いと思えて仕方ありませんでした。

徹夜明けの髪にさっと櫛を通し、熱めの湯で髭をそり、パリッとしたシャツに着替えてジャケットの袖に手を通す。そしてペタペタと間抜けな音がしないちゃんと底のある靴をはく。たったそれだけです。この先、一生その格好でいろというわけではありません。ほんの少し、ほんの数時間、そうであればいいだけの話なのです。たったそれだけのことで印象は決して悪くはならないはず。それに、そうすることがデザイナーとしての彼の個性やポリシーといったものを阻害するかといえば、全くそんなことはないと僕は思います。ゴルフ場を予約して休日の早朝から迎えに行ったり、夜のお店で強くもないお酒を無理して付き合うよりずっと簡単で楽チンな事。

礼に対して礼で応えることの大切さ

ここで自分の事を話すのは恐縮ですが少しだけ。僕は会社という組織に属していた期間が長く、そしてそこにはそれなりのドレスコードに対する教育と管理がしっかりとあったおかげで、TPOに応じて自分の服装をあわせるということにさほど抵抗がありません。これは本当にありがたい教育を受けたのだと今も思います。

実は僕も若かりし頃(僕にだって若い頃はあったんですよ)、件の彼と同じような経験がありました。プレゼンに臨む際に上司から「スーツ着用」を命じられ、デザイナーが営業みたいにスーツ?ってひどく抵抗を感じたものです。

今思えば、不満が顔に出ていたのかな・・・その時にこう言われました。

「きっとこれから行く先のクライアントは全員スーツ。だから、こちらもスーツじゃなくてはいけないっていうルールがあるわけじゃない。でも、なぜ相手が正装なのかその意味を知っておきなさい。プレゼンを受ける側としての「礼」を我々に尽くしてくれているからだよ。あなたの大切なアイディアとデザインをありがとうございますという意味がそこに含まれているんだ。それなら、こちらもきちんと「礼」で応えるべきじゃないかな。もしも、ラフな格好や奇をてらった格好が、君にとっての「礼」を体現する格好なら文句はない。好きにすればいい。でも、そうじゃないならスーツにしておきなさい」

いろんな場所やさまざまな機会を経験させてもらったおかげで、50代の今はしたたかな器用さも身につき、どんな場合も何がなんでもスーツというわけでは決してありませんが、礼には礼で応えるために自分なりの見た目をうまく調整できるようになったのではないかな思います。

できることならこの先もずっと、そういう大切な感覚をきちんと持ち合わせたデザイナーでありたいものです。

最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。
この感謝感激がどうか届きますように・・・。

                                 ブブチチ


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