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訪朝記

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2019年9月、訪朝の記録。(完結)
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訪朝記 終(出国)

訪朝記 終(出国)



2019年9月17日、残す行程は列車での北朝鮮出国のみとなった。
3泊お世話になった羊角島ホテルを出て、もはや乗り慣れた我々の観光バスに乗り込む。全部で20人ほどのツアーであったが、平壌駅へと向かうバスに乗ったのはその半数ほどであった。残りの10人は朝早くに平壌空港へと向かい、8時発の飛行機に乗っているはずである。飛行機が北京に着くのは10時ごろとのことだから、我々の列車が平壌駅を出る時刻(1

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訪朝記 6(軍事境界線訪問)

訪朝記 6(軍事境界線訪問)



2019年9月16日、訪朝3日目の今日は初めて平壌を出て開城へと向かう。
目的は韓国との間に敷かれた軍事境界線の見物である。朝食を済ませた我々はバスに乗り、平壌から3時間ほどかかるという開城に向けて南下を開始する。

10分ほど走り、さっそく平壌市の出入り口を示すであろう像の前で降ろされる。祖国統一三大憲章記念塔といって、南北統一を願う像なのだという。 このアーチの下を通っているのが平壌と開城

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訪朝記 5(社会主義の神髄を見る)

訪朝記 5(社会主義の神髄を見る)



公園での奇妙な昼食後、我々がやって来たのは主体思想塔である。金日成の70歳の誕生日を記念して作られ、それにちなんだ数の石が使われているという旨を、チョゴリを着た女性案内員が解説してくれる。

スケールのわかりやすい写真を添えておく。アーチ状の開口部が入り口であり、内部にはエレベーターのほかに売店などが設えられている。

ちなみに入り口付近に使われている石の中には、日本にゆかりのあるものも散見

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訪朝記 4(平壌市内観光)

訪朝記 4(平壌市内観光)



やってきたのは平壌地下鉄千里馬線の起点である復興駅。地上駅と見紛うような立派な作りである。

改札口には自動改札機が並ぶ。市民はICカード乗車券で乗ることが可能なようだ。

我々外国人はそのまま改札を通過して、鬼のように長いエスカレーターを下る。これほど駅が地中深くにあるのは、地下鉄駅が核シェルターを兼ねているからだとされている。一人として歩く者はいないため、体感で3分から5分ほど黙って運ばれ

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訪朝記 3(金父子との対面)

訪朝記 3(金父子との対面)



2019年9月15日、平壌2日目の朝は慌ただしかった。
本日は朝一で錦繍山太陽宮殿に行くことになっている。この施設は金日成・金正日親子の遺体が保存されている霊廟だけあって、単なる観光名所とは少々訳が違う。外国人であれど割り当てられた時間を死守することが求められ、服装も男性の場合はボタンシャツにネクタイ、ダークカラーのボトムと靴の着用が要求される。

7時40分の集合に間に合わせるべく朝食会場へ

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訪朝記 2(平壌の夜)

訪朝記 2(平壌の夜)

訪朝1日目の夜、観光を終えたツアー一行はホテルへと向かう。

この壮麗な建物が羊角島国際ホテルである。北朝鮮国内では「特級」とされる宿であり、外国人のみが泊まることができる。

足を踏み入れると、なかなかの作り込み具合に驚かされる。正面に見えるガラスの筒はエレベーターで、最上階である48階まで通じている。

あてがわれた20階の部屋に入ってみると、通常のビジネスホテルとそう変わらない広さの部屋があ

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訪朝記 1(北京から平壌へ)

訪朝記 1(北京から平壌へ)

2019年9月12日、春秋航空便にて新千歳から上海浦東空港へ。上海駅に移動し、夜行列車D706次に乗り明朝北京に到着した。

出発前日に北京へとやってきたのは、Koryo Toursのオフィスにて催される前日ブリーフィングに出るためである。北京市内にある隠れ家のような事務所へとたどり着くと、中国ではそう見ることのない欧米系の人々が行き交っていた。
ツアー代の支払いを済ませ、GMである英国人・サイモ

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訪朝記 序(渡航以前)

訪朝記 序(渡航以前)

 北朝鮮という国については、幼少の頃から断片的な情報が耳に入るだけであった。時おりテレビで放映される軍事パレードの様子、ミサイル発射の一場面、平壌市内にもタクシーが走り始めたといったニュースがその国のすべてであった。謎めいており、危険な香りのする、不思議の国であった。

 ところがある友人が物好きであったおかげで、自分はその不思議の国が意外にも渡航はおろか、観光が可能である国であることを知ってしま

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