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訪朝記 2(平壌の夜)

訪朝1日目の夜、観光を終えたツアー一行はホテルへと向かう。

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この壮麗な建物が羊角島国際ホテルである。北朝鮮国内では「特級」とされる宿であり、外国人のみが泊まることができる。

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足を踏み入れると、なかなかの作り込み具合に驚かされる。正面に見えるガラスの筒はエレベーターで、最上階である48階まで通じている。

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あてがわれた20階の部屋に入ってみると、通常のビジネスホテルとそう変わらない広さの部屋があった。見劣りもしなければ感激するほどのものでもない。

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別角度からの撮影。この鏡がマジックミラーなのか否かは不明である。机の上には中国でよく見られるマルチタイプの電源タップがあり、日本で用いられているAタイプのプラグはそのまま使用することができる。
テレビをつけてみたが、どのチャンネルを選択しても青い画面が映されるのみであった。

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バスルームの様子。洗面台の上には各種アメニティグッズが揃っている。

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トイレ周辺。

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入室からまもなく、ホテルの1階にあるレストランにて夕食となる。ナムルとキムチから始まるコース料理が提供された。

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ニンニクのきいたスープ、白身魚のフライの後、欧米人への配慮であろうか、ローストチキン・ミートソーススパゲティが出てきて終了となった。質はともかくとしてなかなかのボリュームであり、不足は感じられない。

これにて本日の行程は終了かと思いきや、ガイドのマーカスから「funfairには行かないのか?」と尋ねられる。これについてはホテルへのバスの中でも告知があったのだが、funfairの意を解さなかった我々はなんとなく見送る方針でいた。改めて訊いてみるにこれは遊園地の意だったらしく、遊具に乗らずとも別に構わないとのことだったので行ってみることにした。

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すでに20時半を過ぎていたと思うが、希望者15名ほどでバスに乗りやってきた遊園地。

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椰子の木型電飾が謎の南国情緒を醸し出している。

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振り返ればライトアップされた凱旋門(と、奥に見えるのは柳京ホテル)。移動中はよくわからなかったが、市内の一等地に位置しているようである。

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園内に入ってみると、混み合うほどではないにせよ家族連れなどが多く訪れていた。夜更けにもかかわらず子どもも多いとみえ、アトラクションからは黄色い悲鳴が聞こえてくる。

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その悲鳴が伊達ではないことは、最初のジェットコースターに乗って明らかとなった。ガイドが「乗りたい人ー?」と言うから軽率に挙手してみたら、大事なメガネを外された上、飛行中のウルトラマンのようなうつぶせの姿勢でライドに乗せられる。

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一番右に乗せられているのが自分、左の3人はツアーメイトであるカナダ人のご家族である。(同行の秋君撮影)
出発と同時に「この乗り方で本当に合っているのか」という疑念が発生したのが運の尽きで、この後の数分間は挙動の激しさに加え、身の安全への確証がないことから生じる恐怖とも戦うというまたとない経験をすることになった。

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ほかにも楽しそうな(?)アトラクションがいくつかあったが、冒頭のジェットコースターで身をすり減らした自分は傍観に徹することにした。

我々外国人を除いても、乗り物は毎回平壌市民で満員のようであった。中には中学生くらいの子ども数人で来ているとおぼしきグループも見受けられた。

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金日成バッジをつけた女性陣(秋君撮影)。職場の同僚なのか否か、どういう間柄であるかは推し量るほかない。

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各々乗り物を楽しんでいると、主任の女性ガイド(以下K氏と表記)がアイスをごちそうしてくれるというので喜んでいただく。

ちなみにこの写真中でアイスを持ってくれているのもガイドで、2人いる男性ガイドのうちの1人(以下Y氏と表記)である。
Y氏は到着直後からフレンドリーに話しかけてくれ、ここに至るバスの中でもそこそこ会話を交わしていた。(「ガールフレンドはいるのか」などという、かなり私的かつ耳の痛い質問までされていた)
Y氏は乗り物に乗る子どもたちを眺めながら、「自分が学生の時も、学校が終わると親にお金をせがんで友達とここで遊んでいた」という昔話を披露した。

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とうもろこし味のアイスは望外においしかった。幼少の頃、自分の母親は日本に生まれた自分がいかに恵まれているかということを諭すため、「北朝鮮の子どもはアイスなんか食べられないんだよ」と自分に説教していた記憶があるが、平壌市内の子どもであればアイスくらいは食べられそうだ。
もっとも、未だに電力不足が続いているとされる北朝鮮において、流通経路において常に温度管理が求められるアイスクリームを国土の隅々まで行き渡らせることは困難であろう。結局のところ、いくらガイドが充実した青年時代の思い出を語ろうが、アイスクリームをごちそうしてくれようが、それらはモデル都市である平壌に限った話、平壌に住むことのできる特権階級に限った話である過ぎない。平壌を知ったところで、北朝鮮を知ったことにはならないのである。

ガイドが各アトラクション乗車代(1種類につき3ユーロ前後)を徴収し、遊園地を後にする。長い一日がようやく終了し、羊角島ホテルに戻った我々は落ちるかのように就寝した。

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